ジンバル考

携帯電話用となるジンバルを二つ購入した。
驚くべきことに 両社ともUS$100ちょっとという驚くべき価格となっていたのだ。
 
では、ジンバルとは何だろう?
簡単に言うと振動防止装置ですが 最近話題になったのは実はドローンのおかげ。
ドローンの撮影で 高くに飛び上がってだんだん小さくなっていく映像や谷の中をまるで鳥のように飛び回る映像などをよく見ると思いますがこれらの映像では驚くほどに滑らかな映像となっていると思います。
これが、複数のプロペラで安定した飛行を可能とした 現在のドローンの技術の進歩と 前述のジンバルの技術の進歩によってもたらされたものなのです。
 
ジンバルのルーツということはないですが 実は昔から存在します。
物体は軽ければ軽いほどに 細かい振動が発生しやすくなります。
カメラが大型で重い間は 肩に乗っけて全身の筋肉で支えているわけですから ブレが逆に少なかったわけです。ところが 軽量コンパクトになるとその悪癖は姿を現します。
特に暗いところのデジタルカメラの撮影などは、シャッターを押してから実際の撮影(オートフォーカスが迷う時間が長いので 記録までの時間がかかる)のタイムラグや、シャッター速度の低下により実際の記録に時間がかかることから 携帯のカメラなどでは詳しく見るとブレブレの写真などがたくさん撮影されてしまいます。
じゃあ重くすればすべて解決といいたいのですが、重くしたらそれだけで売れなくなるので困ってしまうわけです。
で、手振れ補正という機能が付いているのですが これの高機能版をジンバルと呼んでいるわけです。
 
ブレには、上下左右にカメラが被写体に向かって平行に動くものがあります。
そして、上下左右の角度に被写体に向かって回転する動きもあります。
この二つが手ぶれの原因となります。
携帯電話の中の、デジタルカメラの中の手振れ補正機能はこれを軽減するものですが それでも発生してしまうのが手ぶれなのです。
手ぶれの中でも絶対消せないものはあります。
例えば新幹線に乗って最高速で走っている時に 夜景を撮影したくて外に向けてカメラで写真を撮るというパターン。
もちろん、明るいレンズと感度の高いCMOSなんてあるとシャッター速度が上がって低減はされますが 特に近い被写体例えば通過する電柱などはカメラの画角のなかから1秒に満たない時間で通り過ぎるわけですから きれいにとらえることができないわけです。
これが前者となる手ぶれですが これほどの極端な例でなければ対応策がデジタルの世界では提供され始めています。
 
例えば動画撮影の場合
ブレというと 各コマのブレもあるのですが 動画としてのブレもあります。
肩にカメラを載せて 芸能人を追いかける芸能レポーターの映像などは臨場感を出すために走った時には上下に画面が揺れます。
こういった動画としてのブレがあります。
昔、子供が走るのをお父さんが追いかけながら撮影したビデオなどを見せてもらうと 画像酔いしてしまうというのも体が動いていないのに映像が細かく上下するので その違和感に脳が付いていけずに酔ってしまうわけです。
でも、これに関して 最近ではかなりの軽減をする方法がデジタル技術で出てきています。
簡単に言うと、1mx1mのサイズの写真を撮影しておいて80cmx80cmの画像を作るという方法で 画像を認識して前の画像と次の画像のキーとなる場所を判断して(例えば山の形など)その位置を揃えて切り出すことでブレを押さえる方法です。
これにより手ぶれが大幅に低減されることになるのですが これでもカバーできない手ぶれもたくさんあったのです。

それが先ほどの手ぶれの原因の後者 回転によるブレです。
これがけっこう厄介で、振動による回転で1度傾くと1000m先では17m動いてしまいます。
望遠レンズで鳥を追いかけていたらあっという間にいなくなってしまう角度のずれです。
上下左右の平行のブレに対してどうしても大きなずれとなってしまうことがあります。
特にドローンなどは、前に進むときに当然前傾して進むので進行に合わせて下を向いたり上を向いたりすると見てられないわけです。
で、それを補正する補器として 電子ジンバルが登場します。
レンズ内で細かく調整するものもありますが、ドローンの角度ずれはそれでカバーできる範囲を超えているのでこういう大掛かりな装置となったわけです。

仕組みは比較的簡単で、角度センサーと加速度センサーより情報を得てつねにカメラが固定された角度を保つようにできています。
つまり被写体が真正面にあると仮定したとき ドローンが前に5度傾いたら傾きを感知して5度モーターで角度を戻す仕組みになっています。
上下と左右を調整するものを 二軸ジンバル、それに傾きを補正する機能を加えたものが3軸ジンバルと呼ばれています。
常時センサーで監視して モーターで角度を維持し続けるわけですので比較的大きな電力を消費しますが 力の強い小柄ブラシレスモーターの登場や(これはドローンの発展にも寄与したので 同時に進むのは実は必然だったのですね)SmartPhoneに利用される安価なCPUの登場がそれらを加速させたわけです。
3~5万円だったこれらの機器が 現在では1万円台半ばで入手可能になったわけです。
 
実際の効果はどうかなのですが
これは驚くばかりの効果です。
現在のSmartPhoneにはちゃんと上記の電子的補正や カメラのレンズ内にレンズを動かすことで手ぶれが起きにくくなる仕組みが内蔵されていて 私のSmartPhoneでもその効果は驚くばかりなのですが 残念ながらそのレベルではないのです。
SmartPhoneの補正機能も相まってだとは思いますが、漁船に乗って 立つと何かにつかまってないと危ない状態で まるで無風の水面をボートで流されているかのように綺麗な動画が撮影できるのです。
それこそ、テレビのドローンで離れていく(まあ、水平にしかできませんが)映像であるかのような軍艦島の映像を撮ることができました。
それも、ただのSmartPhoneで
 
一応、補足しておきますが万能ではありません。
ドローンのカメラにカバーが付いている理由を思い知ったのが 近づくときは前からの風がすごくて ジンバルが風に負けて動かないという状況となってしまいました。
ただ、帰りは前述のように体が風よけになって驚くような映像が撮影できたわけです。
あとは 平行に上下左右する画像を補正しているのはあくまでもSmartPhone側だったので両方が効果を表しての事でした。
 
実際に、テレビのカメラの映像などもドラマなどを見てもらうとわかると思いますが 同じような技術で素晴らしくスムーズな映像になっています。
芸人が絶叫マシーンに乗っての撮影も驚くほどにスムーズに見えていると思います。
逆に、前述のレポーターなどはそういう機能をわざと使わずに 臨場感を出すという演出というかやらせというかわざと見にくい映像を作っていたりするわけです。
これらの技術は 安定期に入ってきました。
今までは、モーターの出力や補正のレベルをトライアンドエラーでやってきていましたが、安価なジンバルではモーターの力も弱く 省電力に補正しているので 小型化だったり価格を抑えることができるようになってきたわけです。
いまは、好きモノやそれを仕事とする方の装備なのですが まもなくみんなが持っているようなものになってくるかもしれません。
というか、内蔵されてくるかもですね!!