女の戦い

伊藤探偵事務所の混乱 3

erieriさん:「あっ、やあねぇ 壊れていたみたい・・・・」
白々しく言った。
勿論、周りからもそう映っている。
arieさんは、横を向いて声を殺して笑っていた。
arieさん:「くっくっくっ・・・」
erieriさん:「それとも、どこかにキングコング並みの力持ちさんがいるのかしら?」
erieriさんは周りをわざときょろきょろ見回した。
arieさん:「なぁんですって?」
erieriさん:「あら、砂漠の英雄さんみたいって言ったのよ、だれも貴方のこととは・・・」
両腕を広げて、肩をすくめて言った。
arieさん:「と、言うことは あなたやっぱり脱出したの知ってたんじゃない!!」
erieriさん:「さあ、何のことかしら?」
arieさんの足が、高く上がった。
そこにあった筈の机も目の前から消えていた。
“がしゃーん”
オープンカフェの窓ガラスに大きな穴が開いていた。
足が下りてくるのはスローモーションのようにゆっくり見えた。
どうやって取ったのかは解らなかったがerieriさんだけは向きを変えてミルクティを両手に持って座りなおしていた。
男の顔には、コーヒー色の甘いしずくが垂れていた。
数秒の沈黙の後、椅子ごと後ろに倒れた。
そしてそのままゴキブリが這うように逃げていった。
どっかりと座りなおしたarieさん。
何故かarieさんも、コーヒーカップを手に持っていた。
erieriさん:「せっかくいい男だったのに」
ミルクティーをすすりながら言った。
arieさん:「お宝を逃すのには慣れてるんじゃないの?」
erieriさん:「やっぱり、あの宝石のお金使っちゃったのは嫌がらせ?」
arieさん:「あら、何のことかしら? そういえば地中海に良い別荘を買ったの いつでも貸したげるわよ」
erieriさん:「やっぱり、嫌がらせだけは世界一ね」
arieさん:「どなたかの悪巧みほどじゃないわ」
しばらくの沈黙が続いた・・・
arieさん:「久しぶり」
erieriさん:「おひさしぶり」
コーヒーカップを目の高さまでお互いに持ち上げて言った。
今までの作り笑顔ではない、本当の笑顔が見えた。
恐らく、周りの人たちには何が起こったかを認識する時間も無かったと思う。ましてや笑顔を確認する時間も無かった。
ただ、二人の間では全て分かり合っていた。
erieriさん:「で、最近何してるの?」
arieさん:「あなたは、相変わらずみたいね、私は、探偵事務所の看板娘」
erieriさん:「看板娘ねぇ・・・・」
あきれた顔で言った。
arieさん:「なんか文句ある?」
erieriさん:「いいえ・・・でも、なんでそんな地味な仕事を? で、あいつはどうしたの私設応援団
arieさん:「意外と面白いのよ!! kilikoの事ならまだいるわよ」
erieriさん:「あら残念、狙っていたのに」
arieさん:「それは残念 面白いのなら紹介するけどね」
erieriさん:「是非 紹介してもらいたいわね」

何も知らず、僕は歩いていた。
実際、幾つかの店を見て歩いたにも関わらず 何もプレゼントを見つけられずに 完全に気分は落胆していた。
店員:「兄ちゃん、2枚1000円でいいよ 彼女に買って行きなよ!」
道端に出店を出している外人が、片言の日本語で声をかけてきた。
彼女という言葉に 何か引っかかって屋台の中を見た。
ブランド品を模したスカーフが 道路のベンチの上にいく枚も積み重ねられていた。
なんとなくというより100%胡散臭い屋台だが、一枚のスカーフが目にとまった。
隅っこからはみ出している大きなスカーフ。
恐らく全てのスカーフを包んで逃げるための包みであろうが 枯れた柄と奇抜な文字が目に焼きついた。
「これを、下さい」
何故か、店主は売る事を渋ったが、どうにかこうにか手に入れた。
気に入ってもらえなければ買いなおそう というあきらめの境地だった。

arieさん:「あれよ、家の面白いのは」
椅子から見てたarieさんは コーヒーカップで指差していた。