伊藤探偵事務所の混乱 13

卵の白身とメイプルシロップに漬け込まれたワッフル。
オーブンか何かで、固まらないように暖めてある。
少し、ほろ苦い甘みと 白身が栄養のありそうな様子を実感させる。
肉類のような噛み応えはないが 朝食としては良いものだった。
それに、皮もむかずにぶっきらぼうに置かれたバナナとみかん。
バナナはそうでもないが、みかんは季節を感じさせる。
KAWAさんには、3倍ぐらいの量が積まれているが 特別違ったものではない朝食が運ばれてくる。
KAWAさん:「いっただきま〜す」
もしゃもしゃと朝食を食べ始めた。
やはり少し苦い、マーマレードと濃厚なバターを時々つけながら食べている。
KAWAさん:「おいしいね」
ワッフルをフォークで突き刺し、一口でパクパク食べていく。
朝食に集中しているようだった。
昨日のことは気にしていないのか?
僕の中では鬱々と一晩中気になることだった。
「KAWAさん昨日はすいませんでした」
KAWAさん「ん?」
KAWAさんは食べる手を止めた。
KAWAさん:「あれはもばちゃんのせいじゃないよ 気にしないで」
「そういってくれると助かります」
KAWAさん:「でも、がっかりしたのは私よりもばちゃんだったりして・・」
僕は、返事に困って何も言えなかった。
そして顔が一気に赤くなるのを止めようも無く とりあえず慌ててワッフルを食べ始めた。
KAWAさんは、嬉しそうに微笑んでいる。
KAWAさん:「でも、本当は あのスカーフのことがずっと気になってて arieさん達が現れたときに やっぱりって思っちゃった自分に腹が立っちゃって・・・」
KAWAさんは下を向いて すこし首を振った
KAWAさん:「ごめん あたしも悪かったの」
「それじゃあ、おあいこ と言うことで」
少しKAWAさんの表情が曇っていたので、出来るだけ明るく言ってみた。
「そういえば、昨日 所長に正式採用って言われました 今までは仮雇いだったみたい」
KAWAさん:「あたしはきっとそうなると思っていたわ この前 あたしが止めても駄目だったんだから」
「今なら KAWAさんの言うことだったら何でも聞くのに」
KAWAさん:「じゃあ、願い事 考えとくね」
また、KAWAさんは食べ始めた。
「ところで、スカーフどうでした? 調べたんですよね」
KAWAさん:「スカーフは本物、数10億ドルっていうのも。でも、書いてある字のほうは解らない。後から、それもかなり昔に書き足されたものだと言うことぐらいは解るんだけど・・・」
「へー、KAWAさんも大金持ちになったね」
KAWAさん:「うんん、実は返しに来たの」
「どうしてですか? 僕は気にしてないですよ」
KAWAさん:「私が、国宝級のものを隠しとく訳にはいかないの・・・公務員だから。それに、なにより これを預かったと言ってあるから また一緒にお仕事が出来そうなの だから・・・」
「一緒に? そういえばarieさんも 今日、仕事の依頼主が来るって」
KAWAさん:「そう、あたしが依頼人
依頼人てことは、一緒にですか?」
KAWAさん:「そう、向かえ黄砂の国へ・・」
「中国・・・ですか?」
KAWAさん:「期待してるわよ、私の孫悟空さん」
「キー」
おどけて返事をした。

西下さん:「砂漠の用意がいるらしいよ」
arieさん:「砂漠は鬼門なんだけど」
西下さん:「タクラマカンの英雄が何をおっしゃる」
所長:「と、言うことは私が三蔵法師かな?」
ぬりかべさん:「・・・」
黙々と荷物を作っている。
西下さん:「こちらで解ったことは、真ん中の模様が古代の地図らしいこと そして、周りの字は暗号化されたものであることぐらいだったからね」
arieさん:「お父さんとの答えあわせと行きますか?」
所長:「その前に、ロシアからのお客さんがヒントをくれそうだね」
arieさん:「同じ来るなら、KAWAちゃんが来てから来れば良いのに」
西下さん:「こちらから仕掛けますか?」
arieさん:「被害は出るけど、引き込みましょう 情報が欲しいから」
所長:「経費削減を忘れないでくれよ」