伊藤探偵事務所の混乱 14

erieriさん:「350万?? 何頼んだらそんな額になるのよ?」
リビングの一部屋を埋め尽くす料理の数々・・・
無言で返事をしない。冷たい視線で見る コンジェルノ。
erieriさん:「おほん、そうねそんなものかしら?」
体制を立て直して 平静さを装う。
コンジェルノ:「お支払いはいかがいたしましょうか?」
あいつらー、支払ってなかったのね・・・・
erieriさん:「カードでお願い」
後で、絶対取り返してやる・・・
昨日まで付き合っていた男に貰っているカードで払った。
昨日のも含めて、これで彼との関係も終わりだろうな・・・・
料金明細を待たずに部屋を出た。
もともと、荷物の一つも持たずに部屋を出た。
コンジェルノ:「お客様 お待ちください カードをお忘れです」
erieriさん:「あげるわ、その支払いを終えたら使えなくなるから」
恐らく、350万ものお金を使えば彼の元に(恐らく親の元に)支払い確認が入って 手切れ金代わりに見捨てられるだろう事は予想が付いた。
ふつふつと沸きあがる arieさんへの怒りを露にホテルを出た。
arieさんから貰った名刺を頼りに、探偵事務所へ向かった。
本当に寂れたところにある事務所である。
周りには、廃墟としか思えないような建物しかない。
erieriさん:「東京にこんなところがあったんだ」
つまらない事に感心して、首を振る
erieriさん:「こんなことを気にしてる場合じゃないんだ」
歩幅を大きく取って、つかつかと入り口に向かって歩き出した。
 
arieさん:「あちゃ〜 来ちゃった また、間の悪いときに」
西下さん:「誰ですか? 彼女は」
arieさん:「悪友、きのうホテルにお金も払わずに置き去りにしてきた」
西下さん:「よく払えましたね 結構な額でしょ」
arieさん:「西下君も知っていると思ったんだけど」
西下さん:「そうですか?」
入り口にロシア人と思しき男たちが6人 距離をとって入ってくる。
西下さん:「ほー、教科書どおりの侵入方法ですね」
arieさん:「もっと 離れて 一人いるわ。結構なプロみたいね」
西下さん:「このままだと鉢合わせですけど、彼女は大丈夫ですか?」
arieさん:「気の毒に・・」
 
erieriさんが事務所に入ろうとしようとした時に 男たちが声をかけた。
erieriさんは間髪を入れずに体を振って手を振り解いた。
その仕草から、男たちは一斉に取り囲んだ。
erieriさん:「触らないでよ、汚い手で」
不気味な沈黙が流れた。
少し離れたところに立っていた男が指示を出した。
4人が同時に手を出した。
手を払い上げ、足を払って囲いを抜けた。
残りの二人が手を出して捕まえようとしたが、大きく飛び上がってそれをよけた。
そして、男たちの手のひらの上に着地した。
押し殺した男たちのうめきが聞こえる。
erieriさん:「何するの! 今日は目一杯虫の居所が悪いわよ」
胸から抜いた拳銃を他の男たちが制している間に、2〜3歩飛んで下がった。
拳銃を制した男が、それに合わせて飛び掛った。
ゆらゆらと蜃気楼のように左右に数十センチゆれた後に 2mぐらい離れた場所に移動した。どうやったのかは解らないが、物理的にありえない動きであった。
もちろん、予想出来てない男はそのまま地面を滑った。
そのまま両手を交差させ、大きく振りかぶるように伸ばした手の先から 何かが飛び出した。
“きゅ〜ん”
男たちを狙った、手裏剣のようなものだったが 避けられたか拳銃の腹に当てて弾き飛ばした。
 
arieさん:「へー なかなかやるわね あの男たち」
西下さん:「スパイダーズ・・・・」
arieさん:「さすが、西下君」
西下さん:「彼女がスパイダーズの一員だったんですか?」
arieさん:「正確には違うわね、彼女がスパイダーズなの」
 
erieriさんが尚も手裏剣のようなものを投げてゆく。
避ける男たちの行動範囲が狭まってゆき 分断されてゆく。
男たちの行動を見えない糸が阻んでいった。