伊藤探偵事務所の混乱 27

「覚えてたんですか」
KAWAさん:「せっかく乙女が、ロマンチックに迫ったのに 虫だらけじゃね」
「ここには虫はいないんですか」
KAWAさん:「虫はいないけど、獣はいるみたいよ」
このときのKAWAさんの表情は、暗くて見えなかったが きっと、真剣な表情だったのだろう。
“ぼん!!”
一番大きなテントの傍から、火柱が上がった。
オレンジ色の炎が大きな火の玉に瞬間的になり 爆発音と共に空に向けて塔の様にそびえ立った。
KAWAさん:「車をやられたわ」
erieriさん:「自信満々!! 普通なら先に殺しに来るのにね」
シェンさん:「どうやら目的は、命じゃ無さそうね」
いつの間にか、二人が傍に来ていた。
KAWAさん:「でも、退路は絶たれたわ、なぶり殺しって事も」
erieriさん:「ないない、西欧人ならともかく殺しに美学なんていってる連中じゃないわ。で? どうするの マスター?」
KAWAさん:「とりあえず、相手の乗り物を奪って・・・」
erieriさん:「あたしは、雇い主(マスター)の言葉しか聞かないわよ」
シェンさん:「相手は、この侵入からすると馬ですね、乗馬ではとても逃げ切れません」
erieriさん:「で、どうする? My マスター」
「どうするって、どうしたらいいの?」
この状況を自分の中で収めるのが精一杯、みんなのように口を開く余裕すらない。
とりあえず、自分の中で今起きたことを整理した
絶対絶命のピンチであることは間違いない。
相手がいきなり殺さなかったことから、命が目的では無さそうだ。
車は爆破されて、車はつかえない。
相手の乗り物は、馬らしいのでそれに載って逃げても少なくとも勝ち目は無い。
相手は、車を破壊できるだけの武器を持っている。
そして、僕にはこの暗闇の中相手を確認することすら出来ない。
頭脳が、10年分ぐらい一瞬にして働いて 結論が出た。
「どうしたらいいんですか?」
正直な台詞でした。
erieriさん:「素直な男の子は好きよ」
意味深な台詞。
erieriさん:「選択肢は 3つ、抵抗して捕まる、抵抗せずに捕まる、それ以外だけどどうする?」
「それ以外って何ですか?」
KAWAさん:「皆殺しよ」
「捕まって生きている可能性は?」
シェンさん:「相手は、指揮系統をもって来ている。女性は 70%、男は50%かな?」
「erieriさんの武器は、捕まったら見つかりますか?」
erieriさん:「相手が、正体を知らなければ皆無・・・・」
「じゃあ、みんなで両手を挙げて捕まりましょう!!」
KAWAさん:「どうして? 逃げましょう」
「相手が敵かどうかも判らないのに、皆殺しの選択は出来ない。そして、捕まるなら抵抗しないほうが生き残る可能性が上がるでしょ。」
KAWAさん:「でも、相手がそうだとは限らないわ」
erieriさん:「マスターの言うことは正しいわ、私ひとりいれば 駄目だったと気がついてから皆殺しにしろって事でしょ」
「そうならないことを祈っています。追加料金が恐ろしそうだから」
シェンさん:「お客さんが 来ましたよ」
「じゃあ、両手を上げましょう・・・」
予定通り、彼らに捕まった。
流石に、こういった事態には慣れているらしく 手を上げていても力いっぱい殴られた。
恐らく、手を上げて逆襲するやからがいたのであろう。
気がついたら、馬の上に両手足を縛られ乗せられていた。
馬は、思ったより背が高く、縛られているから下を向いているので 数十センチ先には地面が流れる。
馬は歩いているわけではないので、地面は遠ざかったり近づいたりする。
その度に、落ちないかと心配しながら、地面が流れているのを見守った。
他のメンバーも 同じように運ばれているんだろう。
一つ心配になったのは、あのテントの人達はどうなったんだろうか?という事だった。
しばらく走った後、崖のような所で馬は走るのをやめ、そのまま、がけに開いている洞窟に入っていった。
そればでは、真っ暗なところを走ってきたので、ランプの明かりすらまぶしく見えた。
そして、洞窟の中 格子の入った窪みに入れられた。
見回すと、ちゃんと4人揃っていた。
二人の女性は、殴られたようでなかったので少し安心した。
そして、これからどうなるかが 気になった。