伊藤探偵事務所の混乱 54

arieさん:「ちっ!」
erieriさん:「あれは卑怯よ」
風を巻き上げて止まる車体。
車体の周りからは、止まっていても砂煙を吹き上げる。
KAWAさん:「ホバーだったのね」
シェンさん:「砂の海を渡ったわけね」
“がちゃ”
ぬりかべさんが対戦車無反動砲を構えた。
所長:「無駄なようだ、あれは戦闘用だ!」
ぬりかべさんは大人しく銃口を下げた。
arieさん:「腕は鈍ってない」
erieriさん:「さー? 誰かみたいにおばさんにはなってないけどね」
arieさん:「減らず口だけは変わってないわね」
erieriさん:「派手に行きましょう!!」
arieさん:「所長!! 自分達の身は自分で守ってね!」
砂塵が収まり、サーチライトが僕たちのシルエットだけでなく姿を詳細に写し始めた。
光がまぶしくて無意識に手で目の前を隠した。
他の人達は、サーチライト越しに相手の機体を睨みつけている。
arieさん:「Ready ・・・・」
西下さん:「Stop!!!!! 止めて やめて 押さえて!!」
西下さんの大声がインカムを通して頭まで突き抜けた。
erieriさん:「あんたの叫び声は、相手の秘密兵器かなんか?」
arieさん:「少なくとも寝た子を起こすぐらいの威力はありそうね」
所長:「車酔いの頭には堪える・・」
西下さん:「やさしく言ったら止まらないでしょう」
erieriさん:「止めて欲しければ、相手に降伏でもして貰ったら?」
西下さん:「良く見てください。機上に白旗が上がってるでしょ」
arieさん:「いつ上げたの?」
西下さん:「最初から付いていました」
所長:「日本政府にしては大げさだね」
“お嬢様〜、大丈夫ですか?”
スピーカーから割れた声が聞こえた。
arieさん:「あった〜」
erieriさん:「誰よ?」
arieさん:「あんたも良く知っている人」
erieriさん:「あんたにけんか売るようなまねをする奴って心当たりは無いけど・・・・・あ〜っ Kiliko!!」
KAWAさん:「あっkilikoさんだ〜」
kilikoさん:「これはこれは、お嬢様方お着替えもご用意いたしておりますどうぞお乗りください」
返事もせずに、arieさんはつかつかと乗り込んでゆく。
その後を僕たちが続いた。
さっきまで乗っていた車に比べればサイズが4倍ぐらいはある大型の乗り物だった。
erieriさんのみがkilikoさんに擦り寄って言った。
表現どおり、扇情的な態度で擦り寄るerieriさん。
erieriさん:「ひさしぶりっ どう、女を見る目が少しは上がった?」
kilikoさん:「相変わらず、人並みです」
にこっと笑みを返して言う。
今日は、中年ぐらいの老紳士 ホテルのコンジェルノか執事のような様相である。
erieriさん:「あたしが教えたげようか?」
両手を肩に回して絡みつくようにして言った。
背筋の伸びた姿勢を崩さず
kilikoさん:「失礼、お嬢様をお待たせするわけには行きませんので」
肩に回された手を振り解くでもなく、そのままの体制で腰から深くお辞儀をして伸び上がった時には既に腕は解かれていた。
その場で、回れ右をしてつかつかと船の中に消えていった。
erieriさん:「つれない男ね?!」
kilikoさん:「些少ではございますがお食事も用意させていただきましたのでどうぞ・・・」
勿論、本来が軍用品なので豪華とはいえない船内ではあるが、絨毯が敷かれ壁についている照明を変えただけで随分雰囲気が変わった。
kilikoさん:「急いでおりましたので、十分な内装が間に合いませんで」
arieさん:「内装はいいわ、それよりも直ぐ発信して」
kilikoさん:「十分に、この船なら間に合いますよ」
arieさん:「同じならヘリでも良かったんじゃない?」
kilikoさん:「ヘリでしたら、お嬢様の髪型が乱れてしまいますから」
arieさん:「あたしたちが車で走ってたから、嫌がらせでしょう?」
kilikoさん:「とんでもない、お嬢様。そんなこと考えたこともございません」
にこやかに笑いながら会釈するkilikoさん。
手にはシャンパンとグラスが握られていた・・