伊藤探偵事務所の爆発18

ドアが乱暴に開けられて、二人の男とさっき食事を運んできた女性が入ってきた。
3人か・・・・
暴れる俺を後ろから二人がかりで押さえ込んだ。
一人残った女性はおろおろするばかりだった。
スポーツは苦手ではないが、二人のプロを跳ね除けられるほど特筆するほどではない。
ましてや、相手は武器を持っている。下手な抵抗は命がけになる。
おれは、命は惜しい 一つしか持っていないから。
暴れるのを止めた。
男:「何があった!」
大きな声で怒鳴っている。
王子:「この男が余を愚弄する」
すぐに飛び込んでくる男が二人。
恐らく部屋の外は残り一人というところか・・
上下の部屋にいるかどうかは判らないが、全部で女性も含めて5人。
思ったより、人数が少ない。
落ち着いたと判断したのか、押さえつけている男たちが手を離した。
お互いに肩で息をして座り込む。
男:「なにか、お気に障るようなことでも?」
王子:「余を、愚弄した」
今話した男と、部屋にいた男が小声で話をした。
男:「申し訳ございません、この男耳が少し悪い物で」
したたかな物だ、どう考えても耳が遠ければ小声で打ち合わせなんかできるはずが無い。
王子:「では、退屈じゃ なにかよこせ。言葉のわからないテレビでは暇つぶしにもならん」
男:「そうですか、何がお好みですか? 今すぐと言うわけでは有りませんが ご用意させていただきます。」
王子:「では、何か本でも」
男:「では、後ほど買いに行かせます」
食事を運んできた女性が買いに行くようで、本のジャンルや種類を聞きに来た。
何冊か適当な物を頼んだ。
その女性は、ニコニコと走ってどこかへ行ってしまった。
床をパタパタ走る音、十数秒後にドアが閉まり階段を下りるらしいパタパタと言う足音が聞こえた。
女の子らしい、軽やかな音だった。
男:「では、あまり御暴れになりますと、別な拘束方法を取らなければいけなくなりますので ご自重をお願いいたします。」
他の男はともかく、この男は頭が切れるようだ。
王子:「暇つぶしを早く頼むよ。ここに留まるひにち分な」
ベットに仰向けに寝て答えた
男:「ご安心ください、何度でも買いに行かせますから。」
こちらの言葉に反応したのはこの男のみ。
他の二人は、やはり言葉が通じてないようだ。あの女性が通訳としているようだ。
それにしても、なかなか状況をつかませない。
他の二人からは、何も聞き出すことが出来そうに無い。
あの女性からだが、それは、注意深く監視しているだろうから難しいだろう。
王子:「他に用は無い、下がれ」
とにかく、今後のことをゆっくり考えよう。
手分けして、われた花瓶や倒れた椅子なんかを直して いる。
男:「では、失礼します」
王子:「勝手にしてくれ」
ベットでは、壁に向かって寝て手を振った。
一人が表に出たところで、男が話した
男:「そうだ、王子 花瓶の破片を返していただけませんか? 王子様の手に怪我でもさせたら申し訳ない」
王子:「何のことだ?」
ちっ、目ざとい
男:「ポケットに紛れ込んだみたいなので、掃除させていただこうかと」
王子:「ああ、勝手にやってくれ」
ポケットから、つぼの破片を取り出された。
男:「このまま寝返りでもうたれてたら危ないところでした」
王子:「気遣い感謝する」
いつまでも嫌味な奴だ
男:「このような事が次回起きないように、王子様も十分お気をつけください」
王子:「ん、十分注意する」
最後に釘まで刺された。
そして、うやうやしく頭を下げて出て行った。
さあ、考えろ
相手の規模は小さいが、なかなか訓練された部隊だ。
5人として、一人は頭も良い。
残り二人は、押し倒された時の動きから見て 明らかに軍隊のそれである。倒すまでの見事さに比べ 押さえつけることは少しぎこちない。
上半身より明らかに発達している下半身は、憲法家やスポーツ選手のそれではない。
言葉の通じないことが、向こうにとってマイナス要因になるとは思えない。
それどころか、一言も口を開いていない。
もし、知らない言葉で話されたら何を打ち合わせされているか解らない。
一応、武器は取り上げられたが そのことすらも問題にしないところから かなり彼らの力に自信を持っていることは確かだろう。
僅か数十歩でドアがあること、その先には階段があること。
そこまでは解った。
しかし、どういう仕組みの鍵が付いているのか解らないので期待薄だろう。
やはり、相手からのイベントが無い限り 手が打てない。
とりあえず、出来る限り分厚い本を頼んだので、それが武器になりえるかどうかだ。
 
未来さんは、絨毯に座ってお酒を飲みだした。
未来さん:「やはり、日本人は座ってると落ち着きます。」
ぼくも、一人だけ椅子に座っていると 変なので靴を脱いで絨毯に座った。
未来さん:「あっ、汚れます」
自分のことは気にならないようだ。
「大丈夫です。僕のジーンズはビンテージでもなんでもないですから」
未来さんは、地面に座りワインを飲みながら、先ほど買った靴の箱を開け始めた。
三足の靴を並べて、一つずつ、裏から表から眺めながら思い出したかのようにワインを飲んでいる。
そして、少しよったパラっているようで何度も、ありがとうとお礼を言ってくれる。
それを見ているのもうれしかった。