伊藤探偵事務所の爆発22

頭を取り替えれるものならやってみたい。と思うのが二日酔の辛さ。
胃もむかついて、何も食べたくない。
何とか、流し込むように薬を飲んでバナナを食べた。
一人がけのソファーの高級さが今日は一番ありがたい。
タオルを冷たい水で絞ってきて僕の額に乗せてくれた。
「ありがとうございます」
未来さん:「いえ、ゆっくりしてらして下さいね。」
ゆっくりしたいのだが、この後のことが判らないのでゆっくりもできない。
それに、人が困っていると必ず・・・
“こんこん”
未来さん:「は〜ぁい」
入り口のドアに未来さんが向かった。
チェーンが掛かっていたので少しだけ開けてそしてドアを開けたようで開閉音が二度した。
未来さん:「どうぞ!」
中に案内されたのは、やっぱりarieさん・・・
arieさん:「いいご身分だ事」
やっぱり、こういうタイミングで来るのは何時も決まっている。
shengさん:「体は、大丈夫ですか」
この声は・・・目の前にはタオルが乗せられているので目が見えない。
手で、タオルをよけて見たらそこには 見覚えのある顔。
「shengさん、お久しぶり いつ日本に?」
shengさん:「体は大丈夫なようだね」
未来さん:「すいません、調子に乗って二人で飲みすぎました」
arieさん:「見れば判るわよ!」
部屋の中は、改めて書くまでもないが
部屋中に散らかる、チーズの塊
飛び散るゴミ箱
真ん中で二つに折れたベッド
そして、所々の足が折れた 椅子やテーブル
「昨日はゴジラが遊びに来たんでね」
いやみたっぷりのarieさんにそう切り替えした。
そして、そのまま後悔した。
言い返せばどういう事になるか知らないはずじゃないのに。
arieさん:「へ〜、ゴジラね〜 で、首の骨でも折れた? それとも腕の骨」
「折れていません、ただの二日酔です」
arieさん:「ほらね!」
shengさん:「おっしゃるとおりです」
arieさん:「殺しても死なないのよ」
「何なんですかそれは」
 
テストは順調に終わった。
必要だったのは死なない、いや死なないでいそうな男だったのだ。
ましてや、背格好も顔さえ隠していればわからない。最適な人選だったそうだ。
もちろん、未来さんはそのことを知る由もなく お互いに利用されたようである。
 
「勝手なテストですね、死んだらどうするつもりだったんですか!」
僕は怒りあらわに訴えた。
shengさん:「すいません。上からの指示だったんです。」
未来さんに吊り上げられながら、shengさんが言った。
aireさん:「良かったね、ぼうやが坊やで命拾いして」
「どういう意味ですか?」
arieさん:「この部屋で起こったことを事細かに説明したげようか?」
耳元で小さな声で言った。
かすかな記憶をさかのぼっても、人前で話せるようなことではない。
未来さんの怒りが、こちらに向かないとも限らない。
「すいませんでした」
とにかく謝った。
ようやく仕事の依頼である。
とある国の王子がさらわれた。
その要求は、王子の命より重く何としても聞くことはできない。
最後の望みを託して、替え玉を立てる計画に出た。というよりも、この件を認めても国の破滅。王子を見捨てても政権崩壊による国の破滅。
何が何でも、そう 王子の命よりも優先されるべき事態として王子の替え玉を立てる必要があった。
そして、国に帰った後であれば事故死すらもやむ終えないと・・・・
苦渋の決断の最大の障害が、替え玉が殺されないことだった。
そして選ばれたのが僕だった。
そのテストが、昨日の夜のお食事だったようだ。
長い、テストが終わり 僕と未来さんの間にいやな空気が流れた。
未来さん:「で、お引き受けくださいますか?」