伊藤探偵事務所の爆発 29

王子:「狭い部屋だな、監禁場所と変わらない どっちが良かったか」
arieさん:「お帰りになる? 火の中とは言いませんが 焼け跡にぐらいなら帰れますよ」
王子:「よい」
女性がいたのだ、これで日本の印象も変わろうというものだ。
みどりさん:「ここはどこですか?」
arieさん:「馬鹿な男に引っかかって気の毒ね」
みどりさん:「はい?」
arieさん:「無鉄砲、無軌道、まるでどっかの馬鹿にそっくり」
王子:「誰の事だ」
arieさん:「どっかの馬鹿 って言わなかった?」
王子:「それはいい、その前の馬鹿な男だ」
arieさん:「うちの所長は、間抜けだけど馬鹿じゃないわ さて、誰の事かしら?」
王子:「五月蝿い! 解ってるから言ってるんだろう」
arieさん:「あらっ、思ったよりお利巧さんじゃない。」
王子は言葉を失ったのか、黙ってしまった。
王子:「で、お前達は何者なんだ」
arieさん:「正義の味方 ヒロインかしら?」
王子:「もういい、出て行く」
arieさん:「どうぞ、表には怖いオオカミさんが沢山いるわよ〜」
両手の手のひらを下に向け、顔の上あたりでお母さんが赤ちゃんにするようにフリフリと振った。
王子の怒りは顔に出ていた、耳まで真っ赤になっていた。
しかし、すぐにその色は消えて大きく深呼吸をして言った。
王子:「で、余にどうしろというんだ?」
所長:「流石に、王子様、いいお育ちで」
王子:「人を試すのであれば、これぐらいで良いだろう。それよりも、お前達は誰に雇われている?」
arieさん:「うちの馬鹿よりは、頭が切れるみたいね」
王子:「それは誉めているのか?」
arieさん:「そうね、無茶をしたこと以外はね ちょっと騒ぎを大きくしすぎね」
王子:「それは、写真を撮られた事か?」
所長:「それが、最も悪い事ですね」
arieさん:「おまけに、もう数時間待っていれば 助け出せたんだけどね」
王子:「わが国の手のものか?」
arieさん:「はずれ、貴方のお父さんの手のものよ」
王子:「という事は、何故助けに来た? それは役目ではないはずだが」
arieさん:「どこかの馬鹿王子の代役を依頼されていて、その俳優を探していてね。」
王子:「それが、余という訳か?」
arieさん:「そうね、自分の事を“余”なんていう人に知り合いがいないもんですから」
王子:「なるほど、面白い理由だ」
arieさん:「幾つかの計画変更を除けばね」
所長:「お嬢さん、今日は大変な目に会いましたね。私が来ましたからもう安心です。私は伊藤。そう、この伊藤探偵事務所の所長です。」
みどりさんの手の甲にキスをしながら言った。
みどりさん:「はい、あの、私はどうすれば?」
所長:「我々がお守りします。どうぞ大船に乗ったつもりでご安心下さい」
みどりさん:「え〜っと、家に帰って駄目ですか?」
所長:「王子を狙う悪者が待ち構えていますので危険かと」
みどりさん:「あの〜、じゃあお着替えとかは・・」
所長:「だいじょうぶ、私が厳選した下着をご用意いたします。」
みどりさんは、顔を真っ赤にする。
arieさんの肘が、所長の頭にとんだ。
そのまま、スローモーションのように所長は飛んでいった。
arieさん:「着替えは私が用意するわ、勿論新品で安心してね。あと、あの親父には近づかないほうが安全よ」
近づこうにも、床に突っ伏して動いていなかった。
みどりさん:「あの、大丈夫ですか?」
所長:「勿論、私は貴方を守らねば成りません。」
一瞬のうちに起き上がり、みどりさんの横に立っていた。
みどりさん:「は、はい」
確かにみどりさんの隣には立っていたが、肘で打たれた為に首が変な方向に曲がったままだった。
王子:「で、」
arieさん:「ああ、その辺に適当に座ってて」
王子:「そうじゃない!」
arieさん:「はいはい、王子様何をご用意いたしましょう?」
“ぐ〜”
王子のお腹の音が鳴った。
arieさん:「おしょくじでちゅね〜 王子様?」