伊藤探偵事務所の爆発 34

未来さん:「王子!!」
未来さんは慌てて、簀巻きにされた王子の縄を解いた。
未来さん:「大丈夫ですか?」
王子:「大丈夫かどうかは、2〜3時間 簀巻きにされてソファーの上に転がされていて 命に別状がないかどうかのことを言っているのか、それとも これ以上なく不快な気分のことを言っているのかどっちかな?」
arieさん:「それだけの悪態をつけるなら、どっちも大丈夫だね」
王子:「テロリストどもに捕まっていた時の方が待遇は良かったぞ!」
arieさん:「じゃあ、そっちに助けを求めるのね」
相変わらずである。
僕としては、arieさんに逆らうこの王子と呼ばれる不幸な男に同情した。
未来さん:「王子、申し訳ありませんでした」
所長:「さて、面子が揃ったところで 今後の話だが・・・」
所長が珍しく真面目な顔で話を始めた。
所長:「まず、当初の計画通りで こちらの予定と違って王子には代役を立てる。代役の人選は判っているね?」
「本人がいるのに、何故代役が必要なんですか?」
arieさん:「無計画な脱出をして、テレビに出て顔を日本中に晒した馬鹿な王子に説明を聞いて!」
「はい、もう良いです・・・」
所長:「そして、王子には彼の従者をやってもらいます。なんせ、王子初心者だから返答に困るでしょう」
王子:「俺は、やらん!」
所長:「ん、何でかね?」
王子:「待遇は気に入らん。仮にも一国の王子に対する待遇ではない」
arieさん:「そこの代役は、仮にも世界の元支配者だよ それよりは下でしょ 一国の王子は」
まあ、嘘ではない 確かに世界の支配者足りえたが今はそうではない・・と、思う。
しかし、僕はこの探偵事務所ではもっとも低い地位にあるから それ以下ということはその待遇も一番低いということであろう。
みどりさん:「王子様、わがままはいけませんわ」
突然、一人の女性が割り込んだ。
所長:「未来さん、彼女も今回の事件に巻き込まれた被害者だ、保護をお願いします。」
未来さん:「はい」
所長:「王子、よろしいね!」
王子:「嫌じゃ!」
所長:「あなたには、王子としての責務がございます。やって頂けないのなら我々は手を引くまでです。」
未来さん:「彼らしか、王子をお守りすることが出来ないかと、お願いいたします。」
王子:「・・・・・。判った、私の そばに"みどり"を置くこと。そして、私の世話は彼女にさせる事。それが条件だ」
所長:「みどりさん、よろしいですか? 勿論、あなたの事を守りますし、給料は十分に払います。」
みどりさん:「はい」
arieさん:「彼女を連れてゆくのですか?」
所長:「まあ、良いでしょう!」
arieさん:「あたしは通訳として同行します。」
所長:「そう、そして警備の指揮は表向き未来さんが取ってください。そういった事に関してはすでに本部に手配済みです」
未来さん:「はい、判りました。後ほど配置について相談ささせてください」
所長:「今日は、数人の官僚と会うだけだから 通訳さんに任しといてくれたら良いが、明日の視察中に事件がおきると思われる。明日は忙しくなるので、今日はこのまま飲みに行きますので・・・じゃあ!」
と、所長はそのまま出て行ってしまった。
未来さん:「とりあえず、何をすればよろしいですか?」
arieさん:「そうね、昨日の晩御飯より美味しいご飯を用意してくれる? もう、お昼だから」
未来さん:「昨日のより美味しいかどうかは判りませんが、手配させていただきます。」
未来さんも出て行った。
それにしても、似ているな王子と・・・
勿論人種は違うから、顔の造詣や肉付きはまったく違うが背格好は同じぐらいである。
民族衣装を着て、目を隠せばそうそう判るものではない。
王子:「おい、いつもあの女はあんな風か?」
王子が耳元でこっそり聞いた。
「今日は、王子相手だから遠慮してるんじゃないですか?」
王子:「お前はよく我慢してるな・・・・」
「世界の支配者としての、責務ですから・・・」
いやみを少し込めて言ってみた。
所詮、王子が来なければこんな事に巻き込まれることもなく 頭を殴られたり拉致されたりすることも無かったのだから・・・