Miss Lは、ローズバスが大好き 44

小柳刑事の膝が、男の一人の顔に蹴りいれられた。正確には男が小柳刑事の膝にぶつかって行ったと言うのが正しい表現のように 吸い込まれるようにきまった。
もう一人の男は、行動に意思を欠いた状態である。つまり、もがいている。
先に攻撃したはずの男は、届かないはずの拳を避けきった安心感と攻撃の成功を確信した。最悪攻撃に失敗したとしても、もう一人はすんでまで迫っている。
もう一人も、そう確信していたところに油断があった。
確かに小柳刑事の腕は空を切り、相手に攻撃をすることは出来なかった。しかし、その腕には図らずもがな背中で切り離されて 袖しか体に繋がる事のない上着が引っかかっていた。
安心感は混乱に変わり、小柳刑事の動きに合わせて動きを変化させる後ろの男は判断の遅れを顔に当たった 大柄の男の膝の感触で知る事になる。もっとも、知ったところで意識を失ってしまったので感じる暇は無かったであろう。
取り残されたもう一人は、何の意思も持たない布切れと格闘している。
鋭いはずの爪も、絡まる布地に対しては何の効果も無い。意識に余裕があればそれを切り裂く事もたやすかったであろうが もがいている状態ではそれもかなわなかった。
相棒の叫び声が、気持ちを余分に焦らしたからである。
布切れがいくつかに切り裂かれ、目が見える事には相棒は地面に倒れていた。
もちろん、相棒をいたわる気持ちがあるようには見えなかったが それによって自分の立場が悪くなった事は理解しているようだった。
うなり声がいっそう高くなった。
暗殺者のうなり声が高くなる事は、自分を見失っている事である。小柳刑事はその行為に安心し構え直した。
男は低い体制をとり攻撃の準備に入った。
しかし、すでに一手遅れており しゃがみこんだ瞬間に目の前に小柳刑事の体があった。
体を前に倒した瞬間に、小柳刑事の足は男の顔を右の耳の位置が左の耳の位置に瞬間移動を起すマジックを実行していた。
男の顔には赤い花が散って、そのマジックに花を添えた。
打撃力もさることながら、頭に大きな衝撃を受けて男は意識を失ったようである。
「ふう、伊達に暴走族と遊んでないぜ」
体の大きい小柳刑事は、よく交通課の手伝いをした。
相手に威圧感を与えるとの目的で借り出されてゆくのであるが、結果的には何故か実践を伴うので多対一の戦いに慣れていたことがいい結果を招いた。
最も、上着が武器になったのは偶然では有るが。
ゆっくりする間もなく、Miss.Lのほうに顔を向けた。
「仲間はいない もう逃げられない、観念しろ」
効果があるとは思わなかったが、一応警告を出した。
勿論、相手Miss.Lとの戦いに神経を集中していて、こちらの声を聞く様子も無かった。
「今助けに行きます!」
小柳刑事はMiss.Lの方に駆け寄ろうとした。
Miss.Lは叫んだ
「来ちゃ だめっ!」
言い終わるのを待たずに、長身の男が小柳刑事に飛び掛ってきた。
距離がまるで半分しかないかのような、旬かに銅のような速度で。
相手の攻撃にあわせて、肘で体をガードしたが 攻撃が当たる前に相手が体を引いた。
勢いで倒れた地面の首元にはMiss.Lの棒が地面にめり込んでいた。
「不用意に近づいたら危ないですよ」
Miss.Lはそういい残して、長身の男と小柳刑事の間に入り 構えを取る。
男の手には、何か武器が握られている。
そのまま肘で受けていれば、Miss.Lの棒の威力から想像できるように 腕の骨をおられたであろう。
助けるつもりが助けられたのは、男の面目が立たない。
長身の男:「ほう、瞬歩まで使うか」
思っていたより、Miss.Lの腕は良いようだ。私より・・・・とそれは考えないでおこう。
少なくとも、今手出しが出来ない事は確かである。
八の字に切って回転を始めたMiss.Lのてに握られている棒は、体を横に相手に構えの前で円を切って廻り始めた。
地面すれすれに廻る棒は、時折地面と接触し火花を散らす。
音がいっそう高く、鳴り始めた。
「そろそろ決着をつけましょうか?」
Miss.Lは相手に呼びかけた。
相手は答えないが、少なからず納得しているのであろう。
規則的な回転音が、途切れてMiss.Lの手がまるで伸びるように棒が相手に向かって着かれた。
長身の男は軽く避けたが、すぐに引かれた棒の2撃目とそれに続く連続攻撃がされたが難なく避けられている。
「Miss.L 攻撃が音で読まれています」
声をかけた途端、Miss.Lは男との距離をとった。
「ほう、詳しいじゃないか」
長身の男、にやけた笑いを私に向けた。