Miss.Lの幼馴染3(創作です)

「ごほんっ!」
わざとらしく咳をして話をさえぎったと言うか、私以外の人たちの間では話がおおよそ理解できているようで 会話が言葉に頼ってないので その視線をこちらに向けたのが正しい。
「説明いただけませんか? 調書も必要なので・・・」
極めて最もな事であるが、通りで大立ち回りをして何も無しと言うわけにはいかない。
もちろん、市民からの通報も既に署には来ているだろうから、僕の携帯がなるのも時間の問題。せめてそれまでに、映画の撮影と誤魔化すとしても事情ぐらいは知っておきたい。
警官としての責務であり、というより正直なところ好奇心が勝っていると言えるでしょう。
問題は命がけになるのが困ったことなのではあるが・・・・
三人は各人で難しい顔をした。
一人は謎の女性で、こちらはどちらかと言うと呆れ顔、もう一人はMr.Gなのだがこちらは単純に面倒くさそう。Miss.Lについては あまり話したくない困った顔。
といいつつも、ほっておくわけにも行かないのでMr.Gがしぶしぶ説明をしてくれた。
 
Miss.Lは学生時代にどこを踏み外したのか 暫くモンゴルで暮らしていた時期があり その時に拳法も学んだ。当然同門なので ルージュさんも(という呼び方が正しいのか難しいが)そこだといえるでしょう。
土地もあまり裕福ではないので、最も大きな産業は人の輸出で大よそは軍事関係のほうへ。
文化大革命のお陰で、中国四大武術以外の有力な武術があちこちに散ってしまい消滅してゆく中で 外界と隔離されていたお陰で思いのほか純度の高いまま残されることとなった。
「武は道に沿う」という言葉があるが、道が今の倫理ではなく 昔の倫理に沿っているのは当然のことなので 人を壊すと言うことに対する純度の高さだけが残り、ここの土地で取れる産品は質が良いのでその世界では有名になる。
今の倫理観と違う故に、残ったと言うのは皮肉な偶然である。
 
中にはやみに消える仕事も少なくなく、仕事は選ぶが断らない。
依頼側に理があればそちらに、逆であればそちらがお金を払ってくれるだけのことなので仕事には困らない。
ただ、問題は信用で仕事の失敗は勿論であるが それ以外でも信用を落とす行為は厳禁なのである。
計らずもがなというより、日本にいて合法的に人を殺す制度は法務大臣が逃げる程度の制度しかないので 実質的には存在しない。
故に、生き残りが出て 尚且つやる気が残っているような事があればこれも信用の失墜となる。
何故それが広がるかと言うと、闇の世界の情報網が優れていると言う理由ではなく 生き残りのやる気は多くの場合 金銭での解決を行うことが多くなります。
何らかの形でダメージを受けているし、相手の実力も知っているから正面対決する力が残っていないので ターゲットを一人に絞って専門の方にお任せするという事になる。
そして、Live or Dieと書かれた顔写真と一緒にブロマイドが量産されるわけです。
顔写真の下に、大きなお家が買う事が出来たり 一生ゆっくり出来る金額が書いてあって、変な趣味を持っている人たちには大人気で売れてゆくと言う仕組みになっている。
もちろん、事情を知らない人たちにとっては 何らかの形で作戦に失敗して逆に付けねらわれるようになった程度にしか映らないわけである。
 
先日の幼馴染の再会は、その対応策の最も簡単な手段の一つであり、そういうブロマイドが出た時点で その人を殺してしまうと言うのである。
一応、誰が殺すことも自由なので 同門の手で殺せば名前に傷が付くこともないどころかその恐ろしさを世に知らしめることが出来る。
その上、誰だかはともかく懸賞金もいただけると非常に理想的な解決策である。
ところが、それは実力不足でそうなった場合。
殺されるほうもおとなしくは殺されないので、抵抗する。
それが一流でお眼鏡に適うほどであれば、被害を出してまで第一の処理方法にこだわる必要は無い。
被害が大きい割りに得るものが少ないからである。
そこで、第二の選択として 依頼主を探し出して できれば懸賞金を頂いて物理的に取り消してもらう(身包みをはいでしまうともいう)という選択が出てくる。
できればおとなしく身包みはがれてくれるといいのですが、多くの場合大人しくないので悲しい選択にはなるようではある。
勿論、懸賞をかけられた人の協力も期待できるし、探し出した後回収できる額が懸賞金を上回ることが少なくないと言う これも効率の良い理想的な選択肢となる。
つまり、ルージュさんは第一の選択をしにやってきて 素早く第二の選択に切り替えたわけである。
結果的に、名誉は守られると言う任務を帯びてやってきたようだ。
後で Miss.Lに聞いたところによると あの武器は暗殺用で一撃目以上の攻撃が期待できないので その時点でどちらにせよ引き下がる予定だったようだ。
薄い刃物は着いたり払ったりに向いておらず、相手が武器を出してきたときに対応の仕様のない武器だと言うことらしい。
どう見てもそうは見えなかったが、彼女によるとそうなのだそうだ。
その上、ルージュさんの本気はあれじゃないと言うありがたい助言まで頂いた。
とにかく、握手するために出した手首が無くならなかったのはそのお陰だそうなので 一応自分の運にも感謝することとなった。