キャベツ焼き

私の会社の近くにも(車で2〜3分)「キャベツ焼き屋」さんがあります。
キャベツ焼きというのは実は結構正体不明な食べ物で、作り方は間違いなくお好み焼きと同じです。
どうもルーツとしては、縁日で登場した100円焼きあたりが始まりかと思います。
良くハンバーグなどに乗っている真円になった目玉焼きがありますが あれを作るときに丸い鉄でできた輪っかを鉄板の上に置きそこに卵を落として作るのですが、その型を使って作ったお好み焼きを100円焼きとして販売されていました。
お好み焼きを縁日で売るには少し実は問題があって、焼きそばでもそうですが座る場所が無いと食べにくいのです。
また、ソースなどがこぼれる心配をしなければならないので お客を絞りこんでしまうという欠点が従来よりありました。
その欠点をカバーするために、回転焼き(御座候とか言われる 円形の中に餡子とかクリームの入ったお菓子)のサイズぐらいにして厚みを作りハンバーガーのように手に持って食べられるようにしたものです。
理にかなった作り方で、輪っかになった鉄の枠を使っているので枠からの熱も伝わりお好み焼きではできない厚みにまですることができたわけです。
また、だれが作っても生焼けなどの失敗をしにくいというわけです。
そして、1個に一つずつ卵を割って入れることから 食べた際の満足感と豪華さを演出しているわけですが逆に言うと たとえばお好み焼きではある「豚玉」や「イカ玉」等のように中に入る具を下手をしたら無くしてしまうという荒技に出ることによりコスト的にも十分なメリットの出る商品として演出したわけです。
なかなか頭の良い方がいらっしゃるようです。
 
ところが、これが縁日レベルで止まってしまいました。
一部コンビニでは、たこ焼きと同様に出してはいるのですが思いのほか苦戦しているようです。
食べやすさなどの問題は解決したものの、解決しがたかった問題も残しました。
もっとも大きな問題点は匂いです。
構造上、小麦粉を溶いた粉を繋ぎとして使って具を固めたのがお好み焼きなのですが(実際にはもっといろいろなものが入っている)円形にそして崩れないことが必要な100円焼きには全体をこの粉で囲ってしまう必要があるわけです。
そして、お好み焼きで最も魅力的に感じられる キャベツの蒸し焼きにされた匂いと こぼれないように後付けされたソースが焼ける匂いが追加されないわけです。
もうひとつ、全体を囲われた関係で 特にコンビニのものなど内部がかなりの水分を含んで凝縮されたキャベツの甘みなどが出てこないと味にも悪影響を与えるわけです。
縁日で1個食べる分には満足感もあり良いのでしょうが2個食べてご飯にするには秋が来る味となってしまったわけです。
 
キャベツ焼きは私の想像ですが、その金枠を取り払った100円焼きというイメージです。
まったくお好み焼きの小型版として「キャベツ焼き本舗」なんて名乗る店もあるようにフランチャイズまでして日本中に店舗を広げている訳です。
通常のお好み焼き同様、周囲が空いているのでキャベツから出た水蒸気は外に出て 独特の香りと蒸しあげられたキャベツを作ります。
周囲は直接鉄板に当たり焦げたキャベツが香ばしいにおいを出す。
サイズに合わせて1cm程度が2枚ほどしか入っていなくても肉の匂いも追加される。
最もシンプルなお好み焼きであり、原点に近いものでもあります。
薄くすることで焼く時間も短くなったわけです。
 
勿論、本当のお好み焼きたちに比べると速成で作られた感があり キャベツなどの量も少なく時間も短いことから蒸される割合が少なく焼きキャベツの比率が高かったりと味わいに深みがない分 ソースの量やトウガラシ等の香味料を多めに入れてカバーするという手法はたこ焼きなどと同様ソース味のたこ焼きはどこを食べても味の品かを感じにくいという欠点と うまく作っても大して変って感じられないという 料理人に優しく向上心を奪いタイプの仕上がりとなります。
味噌ラーメン等も同様、味噌のように味の完成した調味料を使った場合 不味くはならないが驚くほどおいしくもならないというパターンに陥るものです。
ただ、表で寒いときに食べたり、小腹がすいたりという時の食べ物としては100円少々(私の会社の近くでは130円)の価格は魅力的です。
 
何故名前を変えなければいけなかったかというと、おそらく想像ですがマーケティング的なものでしょう。
チェーン店を作る上で お好み焼き〜では一般的すぎて駄目で 新しさも感じないという欠点があり「キャベツ焼き」というものを別のものと認識される必要があったのではと思います。
同じお好み焼きでも、「広島焼き」と呼ばれることはおそらく広島では「お好み焼き」と読んでらっしゃる方からは 非常に屈辱的な呼び名ではあるでしょう。
名前はどうあれと言いたいところですが、文化や歴史からは少し遠いところにいるような気はしますね。