ノスタルジックと言うなかれ

昔、山の上の山小屋だったり そういう風に見せかけた建物だったりで 裸電球の照明に子供心にすらノスタルジックさを感じたわけです。
ちらちらと揺れるような影が出るのですが 電球が揺れている訳でもなく 黄色く変色した景色は蛍光灯の白に慣れた目には新鮮でした。
 
昨日、東芝白熱電球の生産中止を発表しました。
すでに国の政策として 省エネを推し進めるために白熱球の生産を止めるとかいってますので そのラインに乗った話です。
電球型蛍光灯や電球型LEDが出てきて代替えもできるし 省エネも推し進められます。
結果的にコスト高になってもやむ負えないと猪突猛進進んでいる訳です。
ただでさえ弱った会社にそんな負担を押し付けるのはどうかと思いますが、国際的な協調の問題もあるからそれはさておき・・・
で、前述のようなノスタルジックな風景が無くなって 悲しいことだと嘆いているというわけばかりでは無いのです。白熱球には白熱球の良さがあったりとするわけです。
 
例えば、田舎のほうを電車で走っていて車窓に映る田んぼや畑を見ていると ぽつぽつと電気が付いているのを見ることが出来ると思います。
そして、その色から純然たる「電球」であることが判ると思います。
何故電球が多いかというようなことなのですが、これは農家の方がハイテクに弱いとか、新しい情報が入ってこないからという事情だけではないのです。
決して良いことではないのでしょうが、工場のような農業で無い限り 畑や田んぼに専用の電源を設けたりしないことが少なくない。
だとすると電球をつけるためにはどうするかとなるのですが、その為には家から100m近い延長コードを使って電気を持ってきていたりするのです。
勿論、やって良いことかというと問題があるのですが そうでなければ発電機を動かすしか方法がないこともあるわけです。
その際 実は困る事があります。
変電所から電柱までなど長い距離を送る電線では 6600Vの高圧で電気を送ってきています。
そして電柱の上にある 丸い円筒状のトランスで降圧をかけて100Vに落としている訳なのですが これは、電圧が低ければ低いほど抵抗で電圧が降下しやすくなるわけです。
というより 降下しても判らないぐらいあげているが正しい面もあります。
で、農家の配線なのですが 距離が長くなれば長くなるほど それが現れます。
酷い場合には90V以下に落ちることも。
で、その落ちた電圧の場合 電球型蛍光灯やLED電球は点灯しないのです。
 
電球の原理は 非常に抵抗値の大きい電線に電気を流すという単純なもので 抵抗値が大きいのでそこを通過する際に電気が消費されて熱に転化されます。
熱もある一定以上に上がるとその一部が光となり漏れだすことになりそれを明かりとして使っています。
故に、無駄に熱に転化しているぶん効率が下がるわけです。
そして、熱に転化されたものが光っているので 電圧が下がれば暗くなり電圧調整を行うと明るさが変化するわけです。
今の電球はそのガラスの中に不活性ガスが入っており 熱での燃焼や蒸散を防ぐようにできている訳です。
フィラメントが溶けるほどの熱がかかっていますので。
それに対して蛍光灯は 適度な高圧に持ち上げて二つのフィラメント間に電子を飛ばして それがガスにぶつかる際に発生する紫外線を蛍光素子にぶつけて光っています。
LEDはもっとダイレクトに半導体上で エネルギー転化で発色しているので効率的には良いわけですが いかんせん面積が狭いという欠点も持っている訳です。
まあ、その違いは良いのですが そので電圧の変化に対して 蛍光灯やLEDはどうしても弱くなってしまうのです。
正確に言うと 蛍光灯やLEDを使うために昇圧や降圧するときに使われる回路が耐えられない場合が多いのです。
耐えられるぐらいなら調光器具で使えませんとか書くわけはないのです(LEDでは一部対応 ただし、非常に高価になります)
勿論、発電機を使っていても 家庭用電気のように安定した電力は期待できず エンジンの息継ぎなどで電圧は変動するのです。
配線の古いヨーロッパなどでも、電球しか使えない建物は実際少なからずありますし アジアを旅行すると電球が瞬くような光り方をする姿を見ることも少なくないでしょう。
例えば屋台などで。
 
私の会社も40Wの蛍光灯の灯具をやっているのですが、85V〜242Vまでという広いレンジでそのまま使えるものをやっています。
そして、その売りの一つは前述の様な 発電機や電源から遠すぎてドロップした電圧でも点灯するという部分です。
これによって「電球しか使えなかった場所でも使えます」なのですが 所詮やっているのが作業等の世界 常設照明ではないわけです。
例えば発電機しかない山小屋や前述の農家の人たちの交換用電球として考えた場合
現行100円しない電球が 調光機能付きで1万円ぐらいの電球に変えろというのも乱暴な話。
もちろん、しばらく中国などから入ってくるのでしょうが・・・
絶対的な少数派は無視するのは資本主義の原理ですが、この場合は効率という資本主義の原理を無視して 政策という圧力で曲げたわけです。
曲げる際には 少数派のことも考えなければいけないのが政策かとおもいます。
例えば高速無料化で発生した フェリー会社の撤退等は 主要路線の採算性が悪くなったために 周囲の不採算ながら生活路線として成り立っていたフェリーの運航すら止めてしまう事になったわけです。
同じように それが故に成り立たない事が起きることに追い込まれる方々が生まれてくるということも・・・・
既に電球の買い占めに(将来の分も先に買っておくという意味で 投機目的ではない)予算をとった会社もあるわけですから
written by HatenaSync