キーボード考

インドの方が食事をされるときに 直接手で食べられたりしているのをテレビなどで見たことがある人もいると思います。
「野蛮」なんていわれる方もいらっしゃいますが 必ずしも道具を使うのが先進的ともいえないわけです。
勿論、手を使うという事が 他の所を触ったりする手ですから それを清潔にしてなければ 感染症の恐れがあることもあり注意する必要はありますが それはスプーンをちゃんと洗ってますかと言うのと同じで 綺麗に出来る環境なら良いわけです。
尤も、食べてる最中に髪の毛などをとかせばダメなわけですが 食べ物の付いた手で溶かすことは基本的にないからいいわけなのです。
じゃあ、利点はとなるわけですが ファーストフードなどは手で食べることもあるので その手軽さは言うまでもありません。
箸やスプーンでうまく拾えないものでも 手なら簡単に掴めるわけです。
例えば地面に髪の毛一本落ちても拾えるわけですから さもありなんなわけです。
そして、もう一つの利点が一味たされる事なのです。
 
自分の手の味がとかいうような話ではありません。
「触覚」という普段はルーズにしか感じられないものが 明確に感じることが出来るわけです。
さっきの例で出しましたが、指で髪の毛を使う無ことが出来るわけですが 同じように口の中に入った髪の毛ならどうでしょう?
ものすごい違和感は感じることが出来ると思いますが 口の中から取り出そうと思うと 意外にこの辺と思ったところになかったりしませんか?
そういう意味で指先というのは非常に敏感に出来ています。
顔のラインを指でなぞると 男なら髭のあるなしを簡単に感じる事が出来るかと思います。
目で見ても解らない程の出方でも 指先では明快に感じることが出来ますし、女性なら「肌のきめ」なんて言いますか そういったものを指先だけで感じているわけです。
他の所ではそれは難しいわけです。
まあ、それぐらい敏感な指先で感じているので、梅干しを見て酸っぱいと 口の中の唾液が集まるのと同様、指先の感触で味の想像や、記憶を辿るわけです。そういった事が 美味しさという 脳で感じる量的な区分のしにくい感覚を助けることになるわけです。
 
キーボードの話なのですが、少し速い人であれば1分間に100文字ぐらいは間違いなく入力できるわけで(これは一般的な速さで 競技レベルでは無い 物を考えながらだとこれぐらいという点です)入力しているので キーに触っている時間は1秒未満。
というかその時間の中で 指を上から下まで動かして下から上に離して 次のキーの上に持ってくるという動作をやっているので 当然ですが触っている時間は1/10にも満たない時間なわけです。
速い人の場合、キーを見ていないのですがその際に手を置いた時に 手の場所が解るのは一つはスペースキーという非常に長い最も下側についているキーを見つけることで これで大体の手の場所が解るわけです。
そして、微調整なのですが 両手の人差し指が「F」と「J」を触ったところで手の位置が決まるわけです。
何故これが解るかというと、この二つのキーには小さな突起があってそれだと解るように出来ているわけです。
入力中にも無意識なのですが 押したキーにでっぱりが無いと指がずれたと解るわけです。
そう、1/10にも満たない時間触れただけで1mmにも満たない出っ張りを認識して感覚として伝えることが出来るわけです。
指ってすごいなと思いませんか?
 
それだけの短い時間にそれだけのことを感じているので、キーボードの表面の滑りや キーのぐらつき、キーの押したときの重さ等も勿論感じていて キーボードを目隠しで渡して 交換するとそれだけで解ったりするものです。
私がキーボードを選ぶポイントの中では、入力中に完全に奥まで押し込んで止まるところまで常時押していると 毎日何百文字とこの日記だけでも入力しているわけですから 指は疲労してその力を失ってしまいます。
適度に底までついているような 着いていないような寸止め感で入力をしているわけです。
キーボードはそれを受けるように、底まで着くと「ドン」と指に感覚を返すわけでは無く 粘性のあるゴムのような素材だったりばねの組み合わせだったりで 奥へ行けば行くほど反発力が強くなるような設定がされています。
指も、人差し指や中指は力も強く 垂直にキーを上から押すことが出来るわけですが 小指などは例えば「Enter」キーを自分で押している時の事を考えてもらうと解る通り 人によっては指先の腹で押したりすることになったりするわけです。
押し切らない状態で返すのはいいのですが じゃあどこまで押せばスイッチが入って入力が成されて、どこまでだったら入力が成されないいのかというと これも指先の感覚にかかってくるわけです。
 
ハードヒットなんて言ったのですが、キーボードに対してまるで敵のように打つ人。
それに対して 音もせずに滑らかに打つ人、タイプによっていろいろあるわけですが 前述のハードヒットの人なら どこまでもなにも 押せるところまで入力しているので必ず入力は成されているはず・・・・な訳ですが 必ずしもこれも正しいとは限らないのです。
強い力でキーをたたくと キーに指が当たった瞬間に バットでボールを打つ時のように指が押す速度より弾かれたキーは速く進むことがあります。
そして その勢いでスイッチが入るというような力だった時に 底まで着いて帰ってきたキーがー 未だ勢いを持って下向きに動いている指に当たってもう一度キーが入力される状況。
いわゆるチャタリングと呼ばれる 同じキーが何度も押されるという状態になることもあるわけです。
逆にソフトタッチの人は入力したつもりでも 滑らかに押しているので 底まで届ききらずに入力が成されていないこともあるわけです。
それはある一定 デバイスの関係上しょうがないわけですが それを チューニングでどこまで詰めれるかが良いキーボードの条件となってくるわけです。
そして、その先にも大事なことがあって それでも打ち間違えたときにそれが解るような感触が指に帰ってくるのが良いキーなのです。
チャタリングに関しては 指を押し戻すような抵抗感があり、入力に関しては キーの入力が成された瞬間に少し力の抜けるような感覚が指に伝わって来るという事なのです。
 
フィードバックは大事なのですが、昔のようなメカキーを使っている訳ではないので指に感じる感触は別に作られたもので接点の接触が感触として返ってきている訳ではないのです。
スイッチとこの感触が まるで入力によって発生しているかと人に勘違いさせるようなチューニングが必要なのです。
じゃあメカニカルキーにすればよいじゃないと言われそうですが ストロークの長さ強さの調整に自由度が無い事や どうしても左右の揺れのクリアランスをある一定以上詰めることが出来ない等の問題点もあるわけです。
これらはチューニングの世界で、製品を作ったら最初からこうなっている訳では無く 作っては調整して修正してという工程なしには実現できないものなのです。
こういったチューニングが変更になるとキーそのもののでこぼこ感や高さもそれに合わせてチューニングして、それで変化した動きをまた・・・・と永久に結論の無いループに突入してしまうわけですが・・・・
その手間が無ければこの部分はなかなか叶えにくい部分なわけです。
 
高いキーボードだからと言って 素材が違うとかいう事はあまりありません。
やはりキーはプラスチックでというなら同じ言い方になります。
ただ、樹脂にもたくさん種類がありますし 厚みも形も細かいことを言えばいくつもあります。
それらの言かがどうだという以前に キーボードとしてどういう使い方が良いのかを考え、もちろんメーカーの方の独善的な思い込みも入っているでしょうが それに合わせてチューニングするという行為は 時間と労力のかかるものでそれがコストとなって跳ね返ってくるわけです。
例えば、HHKBを今回メーカーさんの抽選で当てていただいたわけですが これは恐らくそういう種類のキーボードでしょう。
何故そう思えるのかというと これほど著名なキーボードとなるなら キーボードを一つ買って それをもとに金型を起こせば全く同じ外観の物を作ることはそう難しくは無いはずです。
DIPスイッチなどの特殊な回路を組まなければ 汎用のICで回路そのものは組み立てる事は出来ます。
そして、スイッチのシートは言えば同じ形の物をいくらでも作ってくれる会社があります。
じゃあ、それでまっあく同じものが出来るのか?
そうはなりません、出来上がったものを 公差やひずみなどを考慮し 素材の質などで変化する部分をチューニングという形で作り上げたキーに対して これはチューニング前に近い品質のキーなのです。
故に、同じ形で同じ部品に近い物を使っていても似て非なるものなのです。
 
指先の感触は非常に敏感で 他で感じられないものでも感じ取ることが出来ます。
日本人はその感覚がどちらかというと敏感な方だと言われています。
それは 陶器の器だけでは無く 木で出来た器、漆器、ガラスなどありとあらゆる素材を食器に取り入れ感触すらも楽しみたい国民名だからなのです。
ある意味その点ではインド人に通じるものがあるのかもしれません。私もインド料理を直接手で食べるのは好きですから。
故に、キーボードまでもジャンクフードのように 使う人の事は科学的に考えたという エルゴノミックとかいうアプローチだけでなく 特別なものは使ってないが チューニングで人が毎日使って 指が喜ぶようなものを出してゆくのも日本人ならではの・・・・なんて思いたいわけです。
PFUのHHKBは本当に良い物です。価格的に他と比較するので 本当にその価格程の価値があるのかと言われれば 購入する人次第でその価値は絶対的な物ではありません。
ただ、そういう物があるのは日本だからだと思いたいですよね・・・

written by HatenaSync