薄型ノートPC(Galaxy Book S)の欠点

ノートPCというかUMPCマニアだった身としてはいくつかの時代の要求があった。

とにかく軽くしたいは、今も昔も変わらない欲望なのである。

ではどうすれば軽くなるというかと 小さくすればいいという結論に達したのがUMPCである。

で、よくあったのは7インチの画面に押し込んだPCだった。

今でもいくつか保管していますが 本体を小さくすることは重量に対しての要求をかなえるのには適していた。ただ、使う側の用途がマッチしていればの話なのです。

最近もゲーム目的などで UMPC相当のPCがいくつか登場していますが、これらは使われる層が限られるものです。

最も大きな問題点は画面が見にくいことです。

ゲームや動画となれば SmartPhoneでも行われるように画面の小ささは必ずしもの欠点にはならないのですが 文字入力やWEB閲覧となると 小さな画面を前提に作られたアプリケーション群を持つSmartPhoneに対して 小型画面のPCは普通のPCのアプリケーションを利用するためにどうしてもハンデキャップを持っているわけです。

また、そういったPCを使う層でなくてもSmartPhoneは持っているので そちらに比べての利点が出にくいとなってしまうわけです。

そして、キーボードが全体のサイズに影響を受け極小化してしまうわけです。

変則的に押しにくいキーは高度な熟練を要し 好みの分かれる点です。

 

では、と PCメーカーが取った新しい方向性が薄型化なのです。

例えば13インチの液晶画面を持つPCであればフルHDの画面でかろうじて30代ぐらいまでの裸眼視力に耐えますし(50代でも眼鏡をかければOKです!! ほんとですよ!!) キーボードもおおよそ80%以上のフルキーボードに対するサイズが確保されていて配列も変わらないので 何とかなるレベルなのです。

少し前なら 13インチだと普通に近いキーボードだったのですが 液晶のベゼル(周りの黒い部分)が極小化し全体が小さくなり A4の紙とほぼ同じサイズとなったので 少し小さめのキーボードとなっているわけです。

これらは 1kを切る程度の重量 軽ければ700g程とUMPCに迫る重量ながら きわめて実用的なPCとして使えるのです。

この考え方の拡大コピーとして 17インチでも1.2kgほどのLG Gramなどのオフィスでも使ってみたいと思えるようなPCも出ているわけです。

じゃあ、世界はこちらへと言いたいわけですが そう簡単な話ではないわけです。

 

薄いということはいくつかの問題を抱え込むこととなったわけです。

一つは本体強度の問題です。

同じ厚みの板があると考えてもらうとわかると思うのですが 両手で持って捩じったときにどちらが変形しやすいでしょう?いうまでもなく大きなほうが変形しやすいのです。

ま、当たり前の話なのですが設計者にとっては大問題です。

強度を上げるために リブといわれるでっぱりを内部に作って強度を上げたいのですが 薄くするために 部品を平たく配置している手前多くの面積が必要ですし小さな小部屋に分けるとその間を渡す配線が増えてしまうのです。

最も安易な解決策は 軽くて強い素材を採用することでアルミやチタン等の採用が為されるわけですがそれがそのまま価格に跳ね返ってゆくわけです。

つまり薄型ノートPCはそうでないものに比べてどうしても高くなる傾向となってしまうわけです。

安い15インチのノートPCなどは筐体がプラスティックなのを考えてもらうとわかると思います。

私のGlaxy Note Sはアルミの削り出し成型という非常に工程の多い構造を使用しているので SmartPhoneに比べても薄いボディーのA4サイズの筐体が開いた状態でもほとんど撓らないという強度を出しているわけです。

 

二つ目は キーボードの問題

これに関しては前にも書いていますが 物理的な部分での弱点が発生します。

キーボードとして疲れにくいものは 押したという事を感じることのできる 押し込み深さと押された瞬間に変化を感じられる入力感等が重要で 未だにメカニカルスイッチが重用されるのもそれらの影響が大きなポイントとしてあるわけです。

まあ、そのスイッチも押し込み深さも物理的にないので 妥協点となるわけですが 浅い押し込み深さを感じさせないよう奥に行けば行くほど強くなる感じのばねの調整やキー全体が平らにへこむような機構が必要になります。

特にばねは重要で 重いとキーの入力の衝撃が指にダイレクトに返り疲れやすいものとなります。なので スプリングばねとゴムの弾性の両方を利用するものが多いのですがいかんせん薄いので 押し込み反発してその反発の反動で ばねで釣った錘が上下に揺れるときのようにキーを押し込む反発で キーが二度入力されたようになってしまうわけです。

これが 前回も書いたチャタリングで この問題はどこにバランスをとるかと非常に厄介な問題として残るわけです。そして、制作側は経験と調整を繰り返す必要のあるコストのかかる問題となってしまうわけです。

使う人になるだけ垂直に跳ねるように入力してチャタリングを抑えてくださいという事ができればいいのですが この辺りも評価の分かれるところです。

Galaxy Book Sはお世辞にも良いと評価するのは難しいかもしれません。

チャタリングは私が使っている限り思った以上に発生します。私はこれをソフトウエアで抑え込んでいるのですが この辺りもいくつかの選択があるといいのですが・・・

 

三つ目にはタッチパッドの問題。

キーボードの話になったのでついでに

タッチパッドは Windows10でかなり拡張されて、1本指でのマウスのカーソルを動かすだけのものから、今では二本、三本、四本と指の数を増やして操作することでいくつもの機能をかなえることができるようになりました。

グローブのような手とは言いませんが成人男子の手で意識してぴったりくっつけてない状態で横幅はどれぐらいあるでしょう?おそらく7~9cmぐらいでしょうか

その横幅のものが上下左右に動作する余地を用意しなければいけません。ここはUMPCの欠点となった部分でもあります。

キーボードへの面積を最大にすると ここが圧迫され、タッチパッドを優先するとキーボードを縦につぶすような構成となります。これも各メーカーのポリシーは様々です。

GalaxyBookSはキーボード優先型で 縦の短い横ワイド型のタッチパッドとなりキーとの隙間が極めて狭い構造のため これも前に書いた通り日本語の漢字選択で良く使われるスペースキーの入力時に誤動作を起こしやすいものとなってしまっています。

これも タッチパッドの感度の調整やアプリケーションの追加で回避しているわけですが そのまま使うと不自由な点ではあります。

 

四つ目はサウンドです

薄い場所にスピーカーやマイクを仕込むわけですが 困ったことに大きな筐体であれば斜めの人に向けての設置が可能なのでしょうが 薄型ゆえに基板実装するしかなく 真上か真下向けにしか設置できない事が多いのです。

真上には置き場所がありません 手のかぶるところに置けば手を動かすたびに音が大きくなったり小さくなったりと。

大型のPCなら キーボードの両サイドや画面の下に置けたのでしょうが そこには場所がないのとマイクが近接するためにハウリングが起きるので 申し訳程度のモノラルスピーカーでお茶を濁すことが多くなっています。

薄型ノートPCではスピーカーは期待できないというのが一般的になってしまっています。

Galaxy Book Sではそこは最も大きく期待を裏切られたポイントでした。

GalaxyのTableやChromebook等に採用されている スピーカーブランドのAKGの文字がこのPCにはキーボードの下に書かれていません。

もっと言うと Intelのステッカー(Qualcomだから当たり前)やWindowsのステッカーもありませんでした(中古だからかもしれません)故におまけ程度のものという認識でしたが 裏面には本体同色の見えにくい文字でAKGのブランドロゴが入っていました。

余談ですが、Samsungのマークも写真に写らないレベルで本体同色 天板のSamsungぐらいしか本体からうかがい知れる文字がないのはなぜなのでしょう?日本で販売している携帯電話にも「Samsung」の文字が消されているようなのでそういう戦略なのかもしれません。

話はそれましたがスピーカーです。

どこにあるか実際は穴も開いていないのでわかりませんが おそらく手前の下側にあるステレオスピーカーは驚くべき大音量でクリアな音質での音楽の再生をしてくれます。

比較して悪いのですが Ideapadはしっかりとしたスピーカー穴が正面にあるのですが これほどの音質も音量も無いので 何らかの技術的なものを持っているようです。

マイクもキーボードの上の真ん中あたりに二つ用意してあり オンライン会議用としては十分すぎるというか そういうクオリティではない音で使えます。

 

五つ目はバッテリーです。

軽量にしたのは持ち運んで使うため、とこの意見にはおそらく反対する人はいないでしょう。

外出先で ガンガン使いたいからこその軽量薄型化なのです。

でも、軽量故にバッテリーの容量を減らすと 駆動時間が短くなってしまうのです。

無理な省電力設定で 画面を極端に暗くそしてCPUの速度を落とし ワイヤレスの出力を落としたり切ってみたりとしてカタログスペックを伸ばしたとしても実用的ではありません。

そうやって ユーザーからの悪評で消えていった機種も少なからずあります。

ここも重量とのバランスこそが大事なのです。

凡そ実働で五時間ぐらいが一般的なラインとなり(カタログスペックは一〇時間ぐらいですが)もう少し伸びるとスタミナも出ると評価されるような形となり 薄型でないモバイル ノートパソコンに比べると おおよそ三割ぐらいは短めなものが多くなっています。

Glaxy Note Sに関しては実働で一五時間超というところでしょうか?

Samsungのデータを信じるなら動画を流し続けると17時間程度とのことなのですが 実際には20%を割るとデフォルトでは省電力モードとなり 明るさが下がったり・・・のモードではとなるかもしれません。前述の15時間ぐらいはその設定を切っての動作です。

 

では、最後になのですが 熱の問題です。

パフォーマンスを上げると熱が出ます。

その熱を外に排出しようとするときに最も簡単な手段はファンを使うことなのですが 薄いので二階建てに部品を配置することができず ヒートパイプと呼ばれる熱伝達チューブでCPUなどから発生した熱を一旦横に動かしてそこにファンを付けて冷やすというのが一般的です。

大きなファンを付けることができないのと スピーカー度同様で 上に抜けないので下にとすると膝の上に生暖かい程度なら良いのですが 熱い空気が当てられます。

夏場は使えたものではありません。

じゃあと ファンレスのパフォーマンスより冷却性を重視したCPUを搭載してファンをとってしまいましょうとなると それでも発生する熱を逃がすために本体を大きなヒートシンクとして使う事となります。

CPUを頑張らせると その熱で本体がどんどん暖かくなってゆきます。

大体は底面のほうに・・・・冬なら暖かいとほくそ笑むところですが夏はいけません。

ノートパソコンの下に置く台やファンが売っているのには訳があるのです。

そして、それで済めばよいのですが 熱が高くなりすぎるとCPUのパワーを抑え込んでの対処となり夏は遅いノートパソコンとなるわけです。

Galaxy Book Sはどちらかというと後者のPCなのですが、IntelやAMDのCPUに比べると発熱量が極めて低くおおよそ熱の発生量が半分以下な為 今の冬の時期だとどちらかというと本体に手の熱を奪われてゆくような感覚で冷たい感じの本体です。

これは Qualcomの8CX搭載PCやAppleのM1チップ搭載PCも同様な傾向なのではないかと思われます。

 

「欠点」とうたって始めたものの 欠点なのかな?という結論で終わってしまいました。