個性の識別

デジタルなものと言うのはどれも全く同じと思われている節があります。

確かに、計算で1+1はとやれば 間違いなくどのPCでも2と返してくれますし、ハードウエアのスペックが満たされていれば同じプログラムが動くという点では全く同じなのですが それでも差はあるわけです。

 

昔、車を選ぶときに「あたり」とか「はずれ」なんて言葉を使ったのですが 車には個体差が少なからずありました。

多くの場合は、エンジンに起因するもので 様々な要因と組み合わせで調子の良いものや悪いものが出てくるわけです。

工作機械の性能や組付ける人によって僅かに変わる部分が完成品となると大きな違いとなることは体感的に理解できるレベルで 最高馬力などをテスターで計ったわけではないのですが 回転上限が違ったりとわかるものなのです。

チューニングと言う言葉は 単純に改造やパワーアップを示す言葉の様に思われていますが 正しくは「調律」なのです。

正しい形に直す作業で、部品の組み合わせによる誤差や 表面加工の粗さなどを菜緒強いてゆく過程において結果的にパワーやレスポンスが向上すると言う物で 過給機などの付帯装置を付けてパワーを上げるだけの工程ではないのですが まあ、それは個人の趣味の部分という事で 私はオリジナルを大事にチューニングするのが好きだったわけです。

丁寧に組み付けて ポートなどを削られたエンジンは見違えるほどに良くはなるのですが それも今は昔で 現在はコンピューターが制御するので良いものも悪いものもある程度のところでバランスさせるのでそこから修正する必要があったりするので難しい時代なのですが。

 

では、PCやSmartPhone等の機器の場合はどうでしょう?

例えばDELLのPCとHPのPCで同じCPUとグラフィックカード、メモリーSSDを搭載したPCを用意委した場合どうなるでしょう?

実は両者には性能の違いが出るわけです。

大きなポイントとしては、電源や冷却、マザーボードの回路設計などで差が出るわけです。

特に最高性能を競う場合などは 現在のPCの場合 最高性能の状態が続いた場合どんなPCでも熱による性能抑制の仕組みが働くので 冷却性能や発熱時にも安定して供給される電源が付いているものと付いていないものでは 時間がたてばたつほど大きく差が開いてしまいます。

 

では、同じ型番のPCを2台並べた場合はどうでしょう?

全く同じ条件で2台並べた場合にもやはり違いは出るのです。

もっと進めて、同じPCに同じロット同じ型番のCPUを2個用意して差し替えてテストしたらどうでしょう?やはり この2点にも違いが出るのです。

そんな筈は無いといわれそうですし、やってみたら違わなかったという事もあるでしょうが差が小さいだけで必ず差が出ます。

断言するのは言い過ぎと言われるかもしれませんが、この世界に存在するもので同じものは2個作れないという点で絶対あるのです。

デジタル回路で 1と0だけなのでどうやっても同じと言うのでは無い点があるわけです。

例えば 今でも適用されているのかどうかわかりませんが CPUを作る工程で 光でパターンをシリコンウエハの上に焼き付けます。

光の種類を波長の短いものにして どんどん細くしてゆく訳ですがそれで配線を書くわけです。

で、歩留まりと言う生産の成功率があって 良いものとダメなものができます。

一つは素材に凸凹や傷があったりという事と 焼き付け時に光源からの距離が異なる部分で歪みが出たりとか 色々です。

歩留まりと言う言葉がある通り デジタルでは1か0という良いものと悪いものができるわけですが もう少しで0になる1もあれば、理想的な性能でできた1もあります。

基準があってそれ以上なら1とかいう風に切り分けているだけで1と0の間には小数点が存在します。

なので、配線が微妙に細くなって動作には問題はないが どうしても少し細いので理想形に比べてそこに熱を持ちやすいという物などができると 発熱しやすいので最高性能が抑えられやすいものが出来てしまうわけです。

と言うわけで、性能が完璧に同じではないという物となってしまうわけです。

例外的に、CPUだけなら 実際の性能を落とす加工をされた(ラインナップの関係で同じものを作って性能を下げてあるものなど)物などは ほとんど同じ性能で安定したりするわけですが。

 

こうしてみると CPUも同じものは一つもないという事になってしまいます。

実は、1昨日の記事で興味深かったのが GPUの個体識別をする技術があるという点。

前述のとおり 半導体で構成されたチップにおいても個体識別ができるという話で WEBブラウザー上で幾つかのグラフィックベンチマークを動かすことで 個体識別ができてしまうという実験なのです。

そういうものをWEBページの広告に仕込んどくと この人3回目だとか判るというわけなのです。

怖い技術なので読み込み時に無駄な動作などをランダムに組み込むことでそれをさせない技術と言うのも公開されているわけですが 怖い話ではあるのです。

同様にCPUだったり USBに接続された機器などとか個体識別をうんあガス色々なものを作り出すことが可能なわけです。

 

写真1枚でも、今でも写っている人の目に移っている景色を拡大して場所を特定したりと未来の技術のような推理でアイドルの住んでいる家を特定したりと 技術の無駄遣いとしか思えないようなすごい技を見せる人がいたりするわけですが これもデジタルICの個体差技術が組み合わせられるともっと進むかもしれません。

CCD等の感光素子も、やはり素子毎のバラツキと言う物があるのでそれをソフトウエアなどで調整しているわけですが それでもやはり明るさが変化したりすると各素子微妙な光のとらえ方のカーブが違います。

それを分析すると 個体特定も可能なわけです。

勿論、画像は圧縮されていてそのままのデータではないのですが 可能な限り復元してゆくと不自然な変化をとらえることはできてそのパターンによって特定されるかもしれません。

だとすると、もう写真1枚SNSにアップして悪意のある書き込みをしたりすると 同一のパターンを持つ写真を探し出せればあっという間に捕まえられる時代が来るのでしょうかね?