作為的 表現の自由

以前も「ベストエフォート」という言葉を取り上げたことがありますが 理論的最大値を表記してそれに「ベストエフォート」という魔法の言葉を付けるだけで 1Gと書いた通信が20M(2%の速度)しかでなくてもOKというような事になっています。

意図的に この言葉すら隠して表記することで消費者に希望的価値を認識してもらうことが出来るようになるわけです。

それでも、ここでは言葉として表記しているだけましかなと思ったのですが

実は プロジェクターが壊れたので買い替えることとなったわけですが 表記に関しては販売数が少ない商品だからかプロでも惑わされそうな表記を多用しているわけです。

闇の多い表記に関してちょっと書いてみたくなったわけなのですが

 

まず 軽いジャブとしてプロジェクターの解像度です

これは、入力解像度とパネル解像度の表記差の問題です。

一般的に液晶ディスプレイの表記を見ればわかるのですが 例えばフルHDと書かれていれば1680x1080の解像度のある液晶パネルを使っているという認識でまず間違えてないのですが プロジェクターの表記の場合は必ずしもそうではないのです。

接続される機器 例えばPCやブルーレイレコーダーなどの出力に対する対応範囲と実際のパネルの解像度が異なる場合が普通に発生します。

液晶ディスプレイの場合も フルHDの液晶にHD画質の画像を表示できますので異なる場合はあるのですがほとんどの場合駅用パネルの解像度より入力解像度が低い場合に限られるわけです。

ところがプロジェクターの場合は 入力解像度よりパネル解像度のほうが低い設定が当たり前のように存在します。

パネル解像度はXGA(1024x768)にも関わらず8K(7680x4320)対応と書かれた商品もあり この商品の場合は 4:3のパネルで16:9を表示しますので 表示は1024x576という大体8ドット四方の点を1ドットに圧縮して表示します。

昔のような半角文字ネイティブ表示の1文字が一つの点となり識別できなくなるレベルです。実は縦解像度はHD画質(1270x720)にすら勝てないレベルの表示なのです。

それでも、箱にはでかでかと 8K対応とかって書けるわけです。

すこし、まじめな商品なら小さな字で「ネイティブ解像度」と表記されているのですが それでもごまかす気満々です。

 

次は もう何でもありの世界なのですが 明るさについて

明るさを表現する単位としてはルーメン(lm)という単位が一般的に使われるわけですが 明るさの単位って実はいっぱいあって カンデラとかルックスとかある中でルーメンが使われるのには理由があって レーザー光のように強い光を点に集めた光の場合と蛍光灯のように部屋全体を照らす光を比べるときに数字だけでレーザーが強いと表現すると部屋の照明を表すときに困ってしまうからです。レーザーの光では部屋は明るくならないので・・・

プロジェクターも同様でスクリーン全体が明るくないとだめなので 全体を明るく照らすための単位としてルーメンを使うわけです。

透過式プロジェクターの場合 光源から出た光を液晶などのパネルを通して影絵としてスクリーンに映すのでそのパネルの耐えられる限界の光(と伴う熱)を絞る必要や パネルの透過率もあるので明るいものを作るのが大変なわけです。

さて、ここでプロジェクターを比べてみると 日本のメーカーの明るいもので6000ルーメンとかがあってこれだと普通のリビングぐらいの明るさの場合でも 十分に視認可能な表示ができます。

じゃあその数値で探すと 1万円ちょっとのプロジェクターでもそういった表記のものが沢山出てきます。「難しい」ってさっき言わなかった?って突っ込まれそうなのですがそこがカオスなところです。

まず、ルーメンをどうやって測りました?ってところに秘密があります。

レンズとかパネルとか光を減衰させる装置を通過するから暗くなるのですがもしそれがなければどうでしょう? この明るさをどうやって測ったって基準は無いだろうから あれこれ外して測ると明るくなるよねって 光源となるランプだけを取り出して測ってみると あら不思議なことに宣伝に書ける明るさがぐんと明るくなりましたって これが意外にもよくある話なのです。

もっと行くと 本来は面で測るために周囲を含め数か所で計測器で測定して算出するわけですが 真ん中の一番明るいところだけ測って それも凸レンズで光を集めてみるともっと明るくなりましたとか ちゃんと計測器を使えない(故意もありますし そもそも正しく測る方法も知らない)ということで数値が跳ね上がっている場合もあるわけです。

じゃあ何を?ってなるわけですが 日本のメーカーのものを見てもらうとわかるのですが 同じルーメンという単位なのですが ANSIルーメンという風に少し違った表記が足されています。

この単位で表記されたものは 間違えた測定方法で測られてないというのもそうなのですが 真ん中部分と端っこの方の明るさの差が少ない明かりで構成されているという事の証明なのです。ですが・・・・残念ながらその表記すらないというのが実情です。

明るさに関しては そういう意味で本当に参考程度にしかあてにならないというのが実際のところなのです。

 

で、最後はコントラスト比です

最大輝度と最低輝度の差なのですが これは液晶モニターでも同様に問題になる点です。

最大輝度は前述の明るさの最大なのですが まずその単位そのものがいい加減なので 大前提がダメなのでいい加減なことはわかってもらえると思うのですが 今回のはそれ以外の点です。

まず、黒が黒くないというのが最も大きな問題です。

裏側から光を照らして 漏れる光で表現するのですが 液晶ディスプレイで全体を黒にしても電源を入れると画面全体がうっすら光って見えると思うのですが より強い明かりで照らすプロジェクターではもっとそれが顕著に出ます。

勿論、仕組み上そういったものが出にくい仕組みを採用しているものもあるので一概には言えないのですがもっとも黒い明かりがない状態が0ではないのです。

勿論、液晶の漏れをなくすために その二の周りに黒い格子マスクをつけるのですが 付けただけ光の透過率が下がって 全体を暗くするのです。プロジェクターの場合 部屋自身が真っ黒でないという点もあるわけですが・・・・

なので、明るい方と暗い方の最大値がいい加減な時点で数値そのものがいい加減になるわけですが それに輪をかける問題があります。

おおよそなのですが 例えば夜のシーンだとすると画面全体が暗くてその中でうっすら光るものが映るというシーンだったとしましょう。その場合 ランプの明かりを暗くして そのあとで諧調表現をすれば 例えば明るいからくらいまでランプの明かりを5段階に設定して100諧調の明るさ表現ができるとするなら コントラスト比は一気に500まで跳ね上がります。

光源が一つのプロジェクターの場合 明るい光と暗い光が混在するような画面においては明るい方に合わせるしかないのでランプの明るさを全開にした状態では コントラスト比100の諧調表現しかできないのです。

本当にコントラスト比が高いのか ランプの明るさを変えることでコントラスト比を表現しているのかが数字だけではわからない点です。

最初に言いましたが 最大輝度と最低輝度との差という単位なので 明るさを下げた暗い表現と明るさを上げた明るい表現の差の単位なので こういった手法が使えるわけです。

ちなみに液晶ディスプレイでも同様の問題が発生しますが、光源が一つでないために場所毎にコントロールするために かなり低減されますが 同様の表現の手法が使われています

これに伴って 色表現も同じ影響を受けるわけです。

 

数字って定量的なものだと思い込んでいるのですが 実はそれには表現の仕方で全く異なるものとして映ってしまうわけです。よくニュースなどで話題になる 年収の平均値と中央値の違いなどもそれを利用して大げさに表現したものだったりします。

数字は間違えていないものの 数字が正しい比較軸ではない場合もあるので 気を付けないとだめなやつですね。

子供が「みんなが持っているから私も欲しい」とよく言いますが 自分の友達数人だけで 母数をクラス全体や同学年の児童全体とすれば少なくとも「みんな」と表現できるほどの割合ではないという事になるわけですが 子供の視点上は「みんな」で間違いないのですから困ったもんですね。