言葉の変遷

「実質」という言葉があるのだが この言葉が大きく変質したのを最近感じる。
まあ、それが悪いとも良いとも言わないのだが 時代の流れを感じるという事で・・・
 
「実質」という言葉は 物事の根幹の部分を捉える為の言葉でした。
例えば経済の成長などを指標で見たときに 実は色々な変動ファクターが存在します。
例えばインフレやデフレ等もそうです。
例えばインフレ率が200%とかであれば 今年の生産金額と来年の生産金額を単純に数字で比較しても 生産金額のみを比較しても200%増えていたとしても実はそれは販売価格が上がっただけで生産量が増えていないという事になってしまうわけです。
ではその分を差し引いた生産性の上昇などを見なければいけないとなると「実質」な数字が要求されます。
単純に生産金額が200%だと喜んではいけない 実際の本質では成長は0だったという事を表現したりすることに使われます。
 
また、長い話 特に人を煙に巻こうとするような語り口
技術用語を乱用し 聞いている方が解らないような語り口等々
数字を羅列して前述の経済の話題のように 変動するファクターを無視した議論などを行われるようなとき
それを指摘する一つの言い方としても「実質」はどうなんですか?などと強い口調で使われることの多い言葉で どちらかというとまやかしでは無く本来の本質をつく
つまり正義色の強い言葉だったわけです。
 
現在、もっとも「実質」という言葉を使っているのはおそらく携帯電話の業界で
「実質0円」という表記が飛び交っています。
この場合の「実質」は ちょっと意味が違っていて 携帯電話の代金を分割支払いにしてその分を毎月割り引くので契約期間を過ぎた場合には 支払わなかった事になるという意味の事です。
じゃあ、0円になったから良いではないか??と言われそうですが 「実質」は物事の本質を付く言葉で 表面的な事を示す言葉ではないのです。
まず、この場合のポイントは
分割支払いにしたことで 簡単に言うと借金が出来るのです。
借金は返済する必要があるもので 返済しない限りは人に借りている状態であるという事です。
この場合の借りているという事実は 返済不能時のリスクと借金をしたという記録を残すことで 「実質」という言葉を使えば0円では無くリスクをしょったわけです。
もう一つ、割引というのは支払ったお金に対して起きる事で 支払わない限り「実質0円」にはならないのです。
「実質」という言葉を使う限りこの用法はおかしくなってしまうのです。
 
もう一つ、上記の経済の話でインフレ・デフレの係数をかけたのと同じように 商品の価格もそのファクターに加える必要が出てきます。
一般的に家電量販店で商品を買う場合に 殆どの方が「定価」で買う事が無いと思いますが 「実質0円」の商品に関しては定価購入されている訳です。
勿論、割引などはありますが これは契約に伴うもので商品の値引きでは無い訳です。
その上商品の定価が 最近一般的な家電商品が「オープンプライス」になっているのに対して 明確な定価が決まっています。
なぜ定価を決めないのか? それは、商品には寿命が有りモデルチェンジ末期になると価格が下がってしまうからなのです。
割行率が跳ね上がると 新しい商品にもそれと同じ割引きを要求されることとなり都合が悪かったりするわけです。
で、その決めた定価なのですが 海外で販売されている同型機種に比べて高い事が少なくないのです。
 
結果的に割引があって、そして2年後には支払終えるから同じじゃないの?と言われそうですが
借金が10万円と、借金が100万円が同じだと思いますか?やはりそれは違うのです。
割引はあくまでも契約から起きて 支払わなければ引かないというスタンスを同じだというなら 家電販売店で10万円の商品を7万円で購入するのに10万円払って3万円返してもらってますか?
まあ、ポイント値引きというのはそれに近い物がある訳なのですが・・・・
 
まあ、愚痴はあるわけですが それは置いて置いて
「実質」という言葉が 上記のように「実質」ではなく 表面的な事のみを示す言葉に変っているのにお気づきになったでしょうか?
最近では他の業界でも真似て「実質」という言葉を使っているようですが それも同様のからくりが有ります。
例えばウオーターサーバーで 毎月2本以上水を買えば本体のレンタル料は無料で 毎月二本購入する契約をするようなものです。
契約は本体を買うための物の筈ですが いつの間にか月度の購入契約にすり替えられている訳です。
もう、「実質」で 何かを追求しても 隠しているリスク全てを出さなくても良い言葉に変ってしまったわけです。
つまり、投資詐欺の「絶対もうかる」と「実質」がなにか近い言葉のように使われるようになったわけです。
イメージ的に言うと正義の言葉が悪の言葉に変ってしまったような・・・・・
 
言葉の変遷というのは時代とともに起きる物なのですが 必ずしもその現場をリアルタイムに見ている事は気持ちの良い物ではありませんね。
「最近の若者の言葉は・・・」なんていう大人は、大人が捻じ曲げた言葉をつかまえて 「最近の大人の言葉は・・」と言われてもしょうがない事をやっている訳なのですが
これも誰も追及しない もしくはそれすらも解らなくなっているかのどちらかでしょう。

written by HatenaSync