伊藤探偵事務所の爆発13

arieさん:「13ってなんか不気味なナンバーね」
erieriさん:「何が?」
arieさん:「いや、いいんだけど・・」
erieriさん:「何を言ってるのよ、もうボケの始まる・・・」
arieさん:「黙りなさい、ところで、未来ちゃんの悪い癖、言ったかしら?」
erieriさん:「さ〜、言ったような言わないような・・・」
 
僕は、一口飲んだグラスを テーブルに置いた。
未来さんは、グラスを空けようとしていた。
こちらから見える、喉が可愛く動いていた。
白い喉元に日本女性独特の色気を感じた。
もちろん、ワインを飲んだことにより 首筋がほんのり赤く染まることがそれに拍車をかけていたことは言うまでも無い。
グラスを置いた未来さんの目元はピンクに染まり、瞳は潤いを帯びてきらきらして見える。
あわてて、ワインを持ち僕に注ごうとするボーイの手を止め、僕が自ら未来さんのグラスにワインを注いだ。
一流のホテルでは、そう言った事が許されないようで 幾度も断られたが強引に奪い取った。
正直この雰囲気を他人に邪魔されたくなかった。
その気持ちを汲んでくれたのか、ボーイたちは席をはずしてくれた。恭しく頭を下げながら。
本当に美味しいワインだ。
僕も未来さんに次いでグラスを開けた。
注ごうとする未来さん。
「ありがとう」
僕のグラスにもなみなみとワインを注いでくれた。
改めて、用意された食事はサラダから始まるコースだった。
シャンペンが抜かれ、もう一度乾杯をし直したが いくらドンペリだってこのワインの味には適わなかった。
改めて、お互いにワインを注ぎあって 三度目の乾杯をした。
メインディッシュが出てくることには、2本目のワインの栓があけられていた。
相変わらず、仕事の内容に関しては一切話してくれないが いくつか未来さんのプライベートな話が聞けた。
学生時代の話、仲のいい友達の話。どれも、客観的に見た未来さんの目から見たような話し方で、なんとなく他人行儀な感じはしたが それは、未来さんのキャラクターなのだと納得した。
話に出てくる友達たちは、未来さんからは面白い友達として紹介されたが 僕の個人的な感覚からは完全に普通の子かと思った。
そのこたちの悪巧みに参加してなかったからこそ、客観的に見られたんだろうと思った。
やはり、初心な子じゃないかと思った。もちろん年上だと思ったが それはそれだと。
 
erieriさん:「でも、悪癖があれば利用されそうなものなんだけどね」
arieさん:「結果的に利用されたことは無いみたいね」
erieriさん:「やっぱりいたんだ、そんなことを考えた組織が」
arieさん:「後で、大怪我をした仕掛け人が全部げろして未遂に終わったらしいけどね」
erieriさん:「そんなことがあったの?」
arieさん:「一度ではないけどね」
 
僕は二人っきりで、別の部屋とはいえ泊まることに緊張して、ワインをかなり飲んだ。
合わせてくれているのか、同じペースで飲んだ。
彼女も緊張してればいいのに・・・と思った。
外から見ても、彼女は首筋までピンクに染まり 時々苦しそうに首筋に手を当てうなじを撫でるような仕草をする。
首筋で支えられているドレスのうなじの辺りが少し開くたびに、胸がどきどきした。
どきどきを抑えるために、余計ワインが進んだ。
そのうち目線が安定しなくなった。
気がついたら、半ば眠ったような状態になっていたのだろう。未来さんは、少し眠そうな目で僕のほうを見ていた。
「あっ、すいません 少し眠っていたみたいで」
未来さん:「いいえ、ゆっくり飲んでくださいね」
テーブルの上には、過去にアイスクリームだったようなマーブル模様の液体が皿に絵を描いていた。
僕の手には、小さなスプーンが握られていたので 食べようとして眠ってしまったようだ。
マーブル模様には一筋の乱れも無かったので スプーンをつけたとも思えなかった。
 
erieriさん:「飲ませるとどうなるの?」
arieさん:「飲ませすぎるとの間違いよ」
erieriさん:「だから、飲みすぎるとどうなるの?」
arieさん:「愛の抱擁が有るらしいわよ。聞いた話では、椅子に座った男性を椅子ごと抱きつぶしたらしいわよ。複雑骨折するまで・・・」