伊藤探偵事務所の混乱 9

KAWAさんはいきなり服を脱ぎ始めて、別途の上に投げ出しだした。
arieさん:「あら、可愛いパンティ!!」
今日、恥ずかしい思いをしながら一緒に買った下着である。
KAWAさん:「今日は、見ないで!!」
「はいっ」
僕は視線がKAWAさんに釘付けになっていたので 僕に向かって言ったのだと思って つい声が出てしまった。
下着を脱いだかどうかは解らないが、KAWAさんは今日最初に会ったときの格好をしていた。
erieriさん:「男の子としては 除くのが礼儀って物よ」
KAWAさん:「茶化さないで きょうは帰るね」
「えっ、KAWAさん」
arieさん:「スカーフはとりあえず置いてってくれない?」
KAWAさん:「あらっ、あたしが頂いたものですわ さようなら」
いつものKAWAさんの口調では勿論無い。多分怒っているんだろう。
「じゃあ、また」
どうしていいか解らない僕は、KAWAさんが出て行くのにあわせて 入り口のドアを開いた。
出て行く途中でKAWAさんは僕にしか聞こえない声で
KAWAさん:「服は、ホテルに預けといてね また取りに来るわ 今日はありがとう。また、すぐに会えそうね んふふ」
erieriさん:「あっ、独り占めするつもりね 待ちなさい!!」
KAWAさんを追いかけて出て行こうとする女性をarieさんが後ろか肩を掴んで止めた。
erieriさん:「痛いじゃない!!」
arieさん:「どこへ行くつもりよ 逃げようったって駄目よ!」
erieriさん:「だってあの子が・・・」
arieさん:「力技なら あんたが10人かかっても無理ね」
erieriさん:「ここはどうするのよ」
arieさん:「さ〜?」
視線が僕に集中した。
「ぼくですか? 誰が来るんですか?」
erieriさん:「赤い服来たおじさんが数人」
「時期遅れのサンタさんじゃないですよね」
erieriさん:「プレゼントをくれるって事では同じかもよ おもちゃと鉛玉とは少し違うけど」
「arieさ〜ん」
この人たちの冗談が本気だって事はこの間のことで十分身にしみている。
arieさん:「あたしは、そのおじさん方に同情するわ」
「えっ? どうしてですか?」
arieさん:「この馬鹿女が 怒らしたからよ。」
 
KAWAさんは大きな手袋を持っている。
明らかに大きなぬいぐるみの猫の手である。
猫の耳のカチューシャとセットになったもので 黄色い服とあわせて 三毛猫のイメージなんだろうか。
小さな体とあわせて可愛いイメージなんだが 道を歩いていてこの格好の人と会うためには 休みの日の遊園地か ゲームショーでも行かないと会えない格好だったので人の視線は彼女に集中した。
トップスイートからエレベーターで降りてきたが 顧客のプライバシーを守るために人が来ない場所にある。
erieriさんの言うところの 赤い服の人たちが黒い服でエレベーターから降りてくる人たちを監視していた。
エレベーターから降りてきた 最高に気分の悪いKAWAさんの前に立ちふさがった。
大きな手袋の中でKAWAさんは内側から肉球の部分を力いっぱい握った。
男達の目の前に猫の手の手のひらが見せられた。
5本の指のところには大きな金属製の爪が見えていた。
もちろん、男達の目には映ってなかっただろう。
映ったと思われる瞬間には振り下ろされた手が見えたか見えてないかで意識があるのはその瞬間まで出会ったであろうから。
2人の血まみれの男が廊下に転がった。
陰に隠れていた4人の男が拳銃を抜いて飛び掛ってきたが 八つ当たりの対象となった男達には引き金を引く機械すら与えず 飛び出した爪と 大きく遠心力をつけて振り回した足の一撃で他の二人の仲間に入れられた。
合計6人の男達が 廊下の似合わないオブジェと化した。
そのまま何事も無かったかのようにKAWAさんは出て行った。
駐車場に降り、2台の車を廃車になるまでに破壊して帰っていった。
勿論、その2台の車がその男達の車であった事は言うまでも無い。
中には約2名の男達が待機していた。
丸ごと破壊したKAWAさんには 中の人数を確認する方法がなかった。