伊藤探偵事務所の混乱 52

予想通りというか、抜け穴を発見した部隊は大急ぎで追い始めた。
ヘリの着地で安全を確認した(つもりになっている)部隊も改めて攻撃を始めた。
大人数の部隊、そして、近代兵器を装備した部隊が混戦に入った。
arieさん:「いまよ!」
2台の車が、煙の中をそのまま脱出した。
恐らく気がついた兵士もいたろうが、それ所ではなかった。
お陰さまで、上官の教育が行き届いていて命じられた事以外の動きは見せられなかった。
「これで一安心ですね」
erieriさん:「頭大丈夫?」
シェンさん:「こんな手に引っかかるのは、あの2カ国ぐらいね」
KAWAさん:「本当に怖い部隊は、まだまだ来るわよ」
西下さん:「とりあえず、戦闘圏内から脱出しました。 本当の怖いお兄さん方はこちらが二つに分かれたことで手を出し損ねているようです」
「2台って事ですか?」
シェンさん:「我々が知る前から見てらっしゃいましたから、“老”さんたちの事ね」
erieriさん:「本当に後継者に選ばれたの? でも、あたしは馬鹿だからって差別しないわよ 一緒に世界を支配しましょ」
KAWAさん:「ところで地図は?」
西下さん:「そう、誰が持ってるんですか?」
arieさん:「あたし達は持ってないわよ 本当の所有者さんじゃないの?」
「僕は預けたままですよ?」
arieさん:「じゃあどこ行くの?」
所長:「取り合えずは、erieriさんに案内してもらいましょう?」
erieriさん:「何であたしが?」
所長:「取りあえずの目処は立ってるんでしょ。写真は西下君の解析を待つって事で」
arieさん:「ただの、親父じゃ無いのよ 観念したほうが良いわ」
erieriさん:「食えない親父ね、分け前期待しているわよ」
ポケットから取り出した、PDAからメモリーカードを抜き出してカーナビに入れた。
カーナビの画面が、切り替わりポイントが画面に出た。
「砂漠の真中なので、何にも出ませんね」
シェンさん:「だから見つけるの大変よ」
arieさん:「どれぐらいの確率?」
erieriさん:「私達が生き残るぐらいの確率」
arieさん:「十分掛けてみる価値はありそうね」
所長:「ぼちぼちと、行きますか?」
西下さん:「ぼちぼちでは間に合わなさそうですよ?」
所長:「もしかしてarie君の運転か?」
西下さん:「他に選択肢は無さそうですね」
所長:「もう一台はどうする?」
arieさん:「誰かの腕が鈍ってなければ付いてぐらい来れるんじゃない?」
erieriさん:「誰の事を言ってるのよ、あたしが一度でもあんたに負けた事があるとでも言うの?」
arieさん:「あたしも負けた覚えは無いんだけど?」
erieriさん:「良く言うわね!! あたしが貴方に負けるとでも考えてるわけ?」
西下さん:「では、お願いしましょう」
arieさん:「いつもみたいになまっちょろい運転者無いから覚悟なさい!」
erieriさん:「望むところよ! どきなさい!」
シェンさんを投げ飛ばすように後ろの座席に追いやってerieriさんは運転席に付いた。
シェンさんは頭から後ろの座席に突っ込んだ。
シェンさん:「失礼 お二人を邪魔するつもりはありませんから。
あまりに慌てて追いやられたので、頭を下に前の座席の背もたれに足を掛けた状態でシェンさんは言った。
arieさんの運転する車が発進し、それを追うようにこちらの車も発進した。
4厘駆動の車なので、4輪全てがホイルスピンを起こし廻り中に砂を巻き上げて発進した。
ジェット戦闘機が飛び出すときにはきっとこんな加速だろうと思うほどの速度で発進した。
その証拠に、シェンさんは前の座席に掛けていたはずの足を引き剥がされ後ろの荷台まで持っていかれた。
シェンさんは、丁度上下逆で後ろの座席に座るような状態になった。
シェンさん:「改めて失礼」
erieriさん:「二つ!」
ギアを発信のギアから2速に移した。
もう一段、背中にかかる重量が強くなり けたたましく土煙を上げながら車は走る。
シェンさんは、今度は体ごと荷台に投げ出されてしまった。
シェンさん:「これで、お二人の邪魔をせずに済みそうです」
シェンさんが喋っているが、僕には一切返事をする余裕は無かった。
両方の手を、座席にふんばってからだが座席に沈み込もうとするのを辛うじて押し留めた。
KAWAさん:「あら? 追いつかないわね!」
erieriさん:「ぁんだって?」
KAWAさん、お願いだから挑発しないで・・・