伊藤探偵事務所の混乱 60

KAWAさんはベッドに座って笑っている。
特別下心があったわけでもなく、部屋の中は小さなビジネスホテルのような造りなのでそこしか座ってもらうところが無かったのだ。
KAWAさんは、ベッドにおとなしく座っていなくて、じたばた はじけ廻るように転げまわっている。
勘違いしたのはKAWAさんの筈なのに、何故だか馬鹿にされているようだった。
上体を仰向けにベッドに倒して、足をじたばたさせるKAWAさん。
足を大きくばたばたするとスカートの中が見えるじゃないか・・・
う〜ん
大人しくしないと押し倒すぞ!!
と少し腹が立って思ったんだけど、口に出す度胸は無かった。
「KAWAさん、ちゃんと座っていてください」
目線を逸らして言った。
KAWAさん:「あ〜 目を逸らした!!」
座っているKAWAさんはしたから覗き込むように意地悪そうな目線で言った。
「逸らしていませんよ〜」
KAWAさん:「い〜え、逸らしました」
「もう、逸らしていませんよ」
KAWAさん:「ほら逸らした」
大きな目を見開いて、ぼくの方を見るKAWAさん。逸らさない訳にはいかなかった。
KAWAさん:「どこ見ていたの? 白状なさい」
「いえっ、どこも見ていませんよ」
目線は、意識すれば意識するほどKAWAさんのスカートの方に集中してしまう。
KAWAさん:「あ〜 あ〜 あ〜」
KAWAさんが僕を指差しながら言った。
「何ですか、もう!」
意識すればするほど顔が赤くなった。
KAWAさん:「どこ見ていたか解っちゃった!」
「KAWAさん、駄目ですって!」
KAWAさんがスカートを捲り上げた。
まくった手を直ぐに下げて隠した。
KAWAさん:「ほら! やっぱり」
「何をしてるんですか〜!」
KAWAさん:「もばっちゃんたったっら〜い〜やらしい〜〜」
「もう、いい加減にしないと怒りますよ」
KAWAさん:「どう怒るか見せてくれる?」
KAWAさんは、僕の手を引き僕を隣に座らせた。
両手を僕の肩に掛け、僕の目をまじまじと見ながら言った。
KAWAさん:「で、どう怒ってくれるの?」
KAWAさんの顔が近づいてきて、僕の上体がそのまま押し倒された・
西下さん:「もばっちゃんたったっら〜い〜やらしい〜〜」
「ごほっ、西下さん!!」
西下さん:「おれは、忙しくって人の事にかまっている暇は無いんだけどな」
なら聞かなきゃいいのに。
KAWAさん:「西下さんの のぞき〜」
西下さん:「もばちゃんが聞かせようとしたんだよ!」
KAWAさん:「じゃあ、これは何?」
KAWAさんが、僕のカバンから、髭剃りやファーストエイドキットの形をしたマイクやカメラをいくつも出してきた。
西下さん:「じゃあ、俺は忙しいから又後でな」
KAWAさん:「逃げるな〜」
どうやったのか、インカムの電源が自動的に切れた。
きっと入れるのも実は遠隔操作で出来るんだろう。
「ふぅ、」
KAWAさん:「疲れちゃった?」
「いいえ、疲れていた事を忘れてしまいました」
KAWAさん:「へへへ、じゃあもう大丈夫?」
KAWAさんは鼻の下を指でこすりながら言った。
「まだ、うつ病だと思ってるんですか?」
KAWAさん:「あれ〜?せっかくこんなにかわいい女の子がひとつ部屋の中にいるのに手を出せないのはうつ病って言わないの?」
「手を出す度に邪魔が入っているだけです」
KAWAさん:「じゃあ今は?」
「心配な事が一つだけ」
KAWAさん:「なに? お姉さんが聞いてあげるわ!」
きっとarieさんの物まねをしながら言ったんだと思う。
「KAWAさんが邪魔をしないかが心配なんです」
今度は僕がKAWAさんの肩に手を掛けながら言った。
KAWAさん:「さ〜? どうかしら? 試してみたら?」
KAWAさんの顔が僕の目の前にアップに成って近すぎて焦点が合わなくなった。