伊藤探偵事務所の混乱 77

arieさんはしきりにぶつぶつ言っている。
erieriさんは周りの壁を念入りに調べながら進む。
ぬりかべさんは、何時もと同じように 一番後ろを進む。
周りを見回しても、4人しか居ない以上 僕が先頭に立った。
先に進めば進むほど、段々道が良くなってきた。
下り坂には、階段すらある。
どうやっているのか解らないが、僕たちのライトよりも周りの壁の明かりが明るくなってきた。
良く見ると壁の中には、色んな生き物が琥珀の中の虫のように埋まっていた。
そして、広間に出た。
そこには、見慣れない人たちが立っていた。
「ようこそ、楽園に」
そこに立っていたのは、小さな子供だった。
年のころなら7〜8歳の子供である。
幾重にも重ねられて見える綿のような白い布に 多くの刺繍が施されている。
シアンや黄色の原色系の色で縁取られた刺繍は目を引くものであった。
どこかの民族衣装のようにも見えるが、いまのファッションショーで出てくる衣装のようにも見えて古臭さは感じられない。
勿論、そんなに背の高いはずも無いので 上を向いているので顔しか見えない。
笑顔は、はちきれそうに嬉しそうだった。
少女:「随分まったんだから!」
少し、膨れた顔をしながら少女は言う。
「あの〜」
こんなところに少女が居て、待っていたといわれて どう返事をすればいいのだろう?
少女:「あたしの名前は、しそ。みんなはしーちゃんって呼ぶの」
「しーちゃん?」
少女:「そう、しーちゃん」
arieさんのほうを振り返ったが、手を前に出してこちらを向くなとばかりに手を振った。
「お譲ちゃんは、こんなところで何をしているの?」
少女:「あたしの言った事聞いてなかったの? 貴方を待っていたのよ」
生意気なガキだ!!
「そう、待ってたんだね。で、何で待っていたの?」
少女:「ほんとに馬鹿じゃない? 貴方があたしを選んだんじゃない」
「僕が選んだ?」
少女:「そう、貴方が選んだ」
「arieさん!!」
arieさん:「しょうがない坊やね、どっちが子供かわからない」
erieriさん:「明らかに、子供はこの坊やね」
少女:「ふふふ、あたしから見れば どちらも子供よ」
arieさん:「それはどうも、お嬢様。ところでどこに連れて行ってくれるのかしら?」
少女:「あたしに聞いても駄目よ そこの坊やさんに聞いてみてください」
arieさん:「ぼうやさんだって、あはは で、ぼうやさんはどうするの?」
「ぼうやさんて呼ばないで下さい! だいたい僕はここに始めてきたんだから・・・・」
言葉が途中で止まった。
少女:「どこに行くか思い出したのね くすっ」
「arieさん、地図は? 地図はどこに?」
arieさん:「決まってるじゃない、あんたの背中」
「ぼくの?」
急いで服を脱いだ。
まず、外に羽織ったダウンジャケット、そして、上着・・・・
少女:「レディーの前ではしたない」
「失礼、大事なものが入れてあるので」
上着を脱いでいて、気が付いた。
後ろの背中半分が、無かった。
「地図が〜」
半分以上の服が無くなっていた。
arieさん:「何を言っているのよ、普通、ハンカチはポケットの中!」
ごそごそと、ポケットを探ると出てきた。小さく丸めてあったがスカーフだった。
「何て入れ方するんですか! それに無くなった反対側に入ってたらどうするつもりだったんですか?」
arieさん:「その時はその時、運よ運!」
笑いながらarieさん。
少女:「そうね、わたしにめぐり合ったのも運だから」
「そうだよ、この地図の絵だ!!」
少女:「そう、貴方が私を選んだ」
「じゃあ、このまま真っ直ぐだ」
導かれるように歩き出した。
少女は、嬉しそうに付いて来る。
arieさんたちも続いた。