伊藤探偵事務所の混乱 81

老:「arie、そんな事を教えた覚えは無いよ」
arieさんは黙ってしまった
「つまり、僕にはそれを望んだわけですね」
少女:「望んだんじゃないわ、貴方が選んだのよ」
erieriさん:「取り合えず、世界の支配者にでもなったら?」
「似合わないでしょう、それに取り合えずで成る物でもなさそうですし」
erieriさん:「似合う、似合わないじゃないみたいよ」
老:「少なくとも、選ぶ権利はある様じゃなあ」
arieさん:「選ぶ権利がある? それは違うんじゃない。じゃあ、断らせてあげてみれば?」
「断る事も出来るんですか?」
少女:「勿論、出来るわよ」
老:「断るつもりか!!」
arieさん:「断れば、ここで世界が終るけどね」
「世界が終るって?」
arieさん:「その説明が無いのはフェアじゃあないわよ」
少女:「世界の維持を望まなければ、世界が無くなるのは当然じゃない?」
erieriさん:「やっぱり、世界征服が良いんじゃない?」
「だから、柄じゃないって」
arieさん:「世界中の人が、その支配に逆らわないのならそれも良いかもね」
「逆らったらどうなるんですか?」
arieさん:「世界征服を望めば、逆らう人はいなくなるに決まってるじゃない」
「いなくなるって?」
arieさん:「不幸な事故が起きたり、不幸な死が訪れたりするのよ」
「じゃあ、世界の人たちがみんな幸福になることを望めば良いじゃないですか」
arieさん:「世界中の人たちが、みんな悟りを開いてくれていたら良いんだけどね、人を誰かが羨ましく思わなきゃね」
erieriさん:「少なくとも、人よりいい暮らしをしてなきゃ我慢できない人がいたら?」
arieさん:「例えば貴方のような人がいると、多分消えてしまうんじゃない? みんな幸福になるんだから」
少女:「消えたりしないわよ、その人が幸福と思えるところに行ってもらうだけよ」
「僕は、どうしたら良いんですか?」
老:「少なくともわしには答えが無かった・・・」
erieriさん:「自分さえ幸福だったら良いんじゃない?」
「それじゃあ、自分しかいなくなるとか・・」
少女:「冴えてきたわね!」
arieさん:「で、どうするの?」
「今までの人はどうしてきたんですかね?」
arieさん:「中国の奥地で、放歌的に暮らすってのが一般的ね」
老:「中国を支配して、皇帝に成った者もおるがのう」
arieさん:「ここ以外で、不老不死になる事を望んで失敗したようだけどね」
少女:「その後、代を譲ってここで暮らしているわよ」
「どうやって代を譲っているのですか?」
老:「後を次ぐ者が、選ばれる。そして役目を終える」
少女:「選ばれるんじゃなくて、自ら選ぶのよ」
arieさん:「全能の神が、選ばれるのを待つの?」
少女:「そうよ、私は傍観者なの」
erieriさん:「創造主が、傍観者? おかしいんじゃない」
arieさん:「その通り、でも、傍観者にしかなれないの」
老:「なんじゃと?」
erieriさん:「ばあさんでも知らない事があるのね」
老:「ふざけとる場合か、それよりどういう意味だ」
arieさん:「人類を作ったものは、彼女かもしれないけど ここを作ったのは彼女じゃないって事」
少女:「私は創造者、そして初めの者」
arieさん:「その通り、そして創造主を作った創造主もいるって事」
erieriさん:「その娘も、神じゃあないって訳ね」
老:「そんな・・・・」
arieさん:「いいえ、神よ 私たちを作ったのは少なくとも彼女なんだから」
少女:「そう、私は神・・・・」
erieriさん:「その神様は、私たちに何をさせようって言うの?」
少女:「私は、望みを叶えるもの。さあ、望みを・・・」
arieさん:「で、望みは決まった?」
arieさんが、僕の方を向き直して言った。
「いえ、余計に決まらなくなりました 神様を作った神が何を望んでいるか解らなくなりましたから」
arieさん:「ノアは何も望まなかった、故に彼女は傍観者にしかなれなかったのよ」
少女:「ノア? 私のマスター・・・」
少女の表情は変わっていなかったが、目には涙が浮かんでいた。