捨て猫を拾った

勿論、比喩的表現で家族にアレルギーがいるので拾うはずもないのですが・・・・
 
以前、RaonDigitalという会社が韓国にあり、EverunというPCを発売していました。
「以前」と書いているのは単純に昔の話と言っている訳ではなく、既に無い会社だからそう言っている訳です。
私の知っている範囲では 3機種のラインナップのみだったかと思います。
Vegaと言われるキーボードなしのタブレット
Everunと言われる 私がハマった工業用の制御系に良くつかわれる 低パフォーマンスながら消費電力をぐっと抑え 当時としては画期的に小さく克つバッテリーの持ちの良い端末をリリースしたのです。
500gを切るボディでEverunという言葉通りに 5時間を超える駆動時間を誇ったのは サイズで比する機種があったが 両方を合わせるとこれだけとなったわけです。
利用する側にも割り切りが必要だったのですが、そういう使い方のできる 私のように複数台のPCを持っている人なら使えたでしょうPCとなっていました。
そして、最後がEverun Noteという機種で AMDデュアルコアCPUを搭載したハイパフォーマンスモデル。
CPUのクロックを落として搭載するという おおよそ誰もやった事のない手法を持って、メーカーにカスタムCPUを依頼する力のない弱小メーカーが自分仕様のCPUを作り上げるという 面白い手法を用いたものです。
それでも、1.2GのデュアルコアCPUは現在でも超低電力版CPUのクロックとほぼ同等で どうしても安く上げるためにAMDのCPUを購入するユーザーが多いことからも廉価版でありながらIntelのものよりパフォーマンスが高いという政策をとっていることからも現行に近い Direct-X9世代ではそこそこの性能を持ったチップセットと組み合わせて今でも十分現役でいられるだけのパフォーマンスとなったわけです。
伝統的に小型のPCにこだわったので、クラムシェルで700g程の機種となりました。台湾の展示会ではAMDのブースに置かれる等 変わり種という事では十分に異彩を放っていたメーカーなのです。
ところが、バッテリーの持ちの問題から 必ずしもEverun NoteはEverunの代替えとなりえず 時同じくして一気にPCの価格を引き下げるNetBookに比して高い価格、そしてネットブックに比べても低いクオリティなど(実際、ケースなどはプラモデルのよう)でもあり リリースも遅れ おそらくプロモーションに置いても難しかったのでしょう。成果を出すことが出来ずにそのまま歴史に埋もれることとなったのでしょう。
私が思うには、急激なウオン安で当時他のメーカーもそうでしたが 海外からの部品の購入コストが上がりすぎて 受けた注文が全て赤字になるという製造業を襲ったショックが引き金だったと考えます。
いまでも 幾分在庫を持っている商社さん入るようですが メーカーが潰れてしまうとそれっきりとなることもありますし 2年で倍になるといわれているPCのパフォーマンスが ここのところバッテリーの駆動時間に割かれているようで パフォーマンスは負けていないのですが モバイルと言うには寂しすぎるバッテリー駆動時間が 残された僅かな在庫を捌くこともままならなくしているようです。
実際、オークションでもほとんど見ることがなくなったのがこの3機種です。
 
発売当時、そのために韓国までゆき販売している可能性の有ると言われる店を数件回って玉砕したことを覚えています。
その後、いくつかの面白くない案件があって購買意欲をなくすこととなったわけです。
注文までしていたのにもかかわらずと言う訳です。
もし買っていたら・・という仮定はありますが、まあそれはよしましょう。
ただ、今でも印象に残っているのは「Sigmarion3と同じサイズのPC」という所でものすごく後ろ髪を引かれていたわけです。
 
一作日、秋葉原で中古売り場を流していると ネットブックが3万円弱で 棚に溢れんばかり並んでいました。
0円で通信回線と抱合せで販売された物たちの亡き骸でしょうが 本当に溢れんばかりの状態。
2万円第半ばから3万円代前半での販売で並んでいるものの、時代によって液晶の大きさなどが違うものの、CPUもメモリーの量もHDDも横並んでいて 個性もないので価格も横並び。
見かけの格好だけ違う 服飾店でT-シャツを選ぶようなもので 選択肢が見いだせないわけです。
もっとも、詳しい人ならともかく 店頭での質問を聞いている限り 「性能はどう?」とか「DVD見れる?」という話なので 服で襟付きや無しだったり 裏地に飾りがついているとか 気になる人は気になってもそうでない人達が見るところでも無いのが当たり前なのかもしれません。
そして、その中に 一つみすぼらしいPCが可哀想にも液晶を閉じた状態でおいて有った。
元気のあるPC達が「にゃー にゃー」と飼い主になってくれないかと力の限り訴えているのにも関わらず、この子は一番下の 棚なのか地面なのか判らないところに 値札はついているが説明もなしにおかれている。
プラスチックも白というよりアイボリーに近い色で、殆ど新品なのにすこし見栄えのしない子でした。
勿論、私が見惑うことも無く あの子だと気がついたわけです。
 
青い目をしていて・・・といっても外人さんと言うわけでもなく WEBカメラが新品そのままで青い保護シールが貼っただけのこと。
開いてもみすぼらしく見えたのは おそらくカーナビ用と思われるアンチグレイの 黙っていても白く濁るはさみで不細工に形を合わせただけの保護シート。
指紋は数カ所、ゴミが入って浮いているところも少なくないという状態。
勿論、OSも無く確認はBIOSまでというところ。
勿論、確認させていただきました。あまり好まれる客でないことは判っていました。
過去の春をこの一角だけで謳歌しているネットブック達に比べても 価格的には安い ジャンク扱いのこの子など誰にも目を止めてもらえない子なのだから。
一応、BIOS関連のキーも動作するし、ヒンジを前から後ろまで一杯に動かしても 画面が乱れないこと。
電動FANも快調に回っている。ホコリに引っかかるような嫌なお供していない。
どころかヒンジの内側には真新しいちぎれ跡のビニール。
正直、お金は厳しかったのですが(同時に M-Bookをオークションで追ってました) 可哀想すぎて この子に罪はないのに会社に運がなかっただけで・・・
 
とにかく話をしないことには始まらないので 店員さんと話をする。
「クロック1Gまでしか上がりませんよ これ!」
違うんだ、この子は1.2Gで抑えて温度管理しているんだ 弱小メーカーの苦肉の策だよ!!と 言ってあげたかったんですが・・・
「中身も分かりませんし」
ASCIIにも特集組まれたぐらいで 周知の子なんだよ。
「まあ、見ての通りの状態ですし」
見ての通りだよ、新品クオリティだよこれで!! WEBカムのシールも剥がしてないから解るだろう!!
勿論、ニコニコ笑顔の店員さんだったんだけど どうも色眼鏡で見えてしまいます。
おそらくこんな言い方はしていなかったとは思うんだけど。
唯一できた抵抗は お財布のこともあったので 「安くしてよ!!(大阪弁で この商品に興味があって迷っているの意 勘違いしてくれたらラッキー)」と言えた程度。
結果は・・・・・
(そのせいで、待ち合わせに15分ほど遅れましたけど 始まったのは着いてから約一時間後だった)
 
でも、紙袋の中に入れて連れて歩いていると なんだか足が軽くなった。
歩きながら時々覗き込んだりして。
勿論、箱付きで 前のEverunの時にも書きましたが まっ黒でおそらくOQOを意識したのではないかと思われるダンボールも分厚い箱。
勿論、ジャンク扱いだからどこまで動くかも不明。
ドライバーも配布するサイトどころか会社がないのだから ダウンロードするところも無い。
どこまで再現出来るのか、少なくともキーボードショートカットやWifiのON・OFFなんかは出来ないかもしれないと思いつつ。
 
本当に隅っこに、普通のネットブックより2割型小さく まるで追いやられて縮こまって小さく見せている猫の子供のようなEverun Noteをそっと拾い上げて連れて帰ったような。
すこし ほくほくした気分で・・・・


written by HatenaSync