発想の一つ先

先日、香港の展示会に行ってきたわけだが・・・・
仕事の面での話は書きはしないのですが ちょっと あっ、と思ったものがありました。
それは、さほどでかでかと宣伝するでもないような 小さなブースに置かれたiPhone5のパカンとはめるタイプのハードケースの会社でした。
 
中国ではハーウェイ等の大きなメーカーが登場しているわけですが 実際にはやはり世界の工場という意味合いが強く 中国のメーカーとなると部品メーカーが多いわけです。
製品だったとしても 樹脂の成型や金属の加工で出来上がっているものなどが多く たとえばiPhoneに新型が出れば 即材に対応したケースが登場するあたりはさすがに素晴らしいと思わせてくれるものです。
ただ、その素晴らしいと思われるケースたちですが 実は「独創性」という面からいうと 全くと言ってないものが多いわけです。
スリムだったり 柔らかいシリコン製だったり 今までの機種用として提供されていたものの新しい機種用に作り替えたようなものです。
日本で登場した 木で削り出して作るタイプの端末ケースなども 今年の展示会ではあちこちでぽつぽつと登場していて それでも他との違いを打ち出しているのは オーク材で作ったとかそういう点での違いによるものなわけです。
人のアイデアをしっかり頂いてというものが多いわけですが その元が中国なのかそれとも海外のものなのかはわからないというか おおよそ海外のものではないかと思ったりするわけです。
 
で、なのですがその小さなブースなのですがじつはiPhoneなんて全くと言って関係ないような会社なのです。
部品の会社で シリコン組成の樹脂の成型をやっている会社かと思うのですが前述のケースなどを作るような会社ではなく特殊な樹脂シートを作っていて そのシートを間に挟むと金属と金属の間で効率的に熱を伝達する仕組みになっているものです。
なんに使っているかというと 身近なもので言うと コンピューターの中に入っていて CPUは非常に熱の高い物なので そのICの上面は金属のケースで囲われていて そこかっらヒートシンクといわれる放熱板に向けて熱を逃がすようにするわけです。
その金属製のケースとヒートシンクの間に隙間などがあると熱の伝わりが悪いので シリコン組成の熱伝達率の高いグリスを入れるわけです。
最近ではグリスの場合厚みや塗り方に技術が必要なので その代わりに熱伝導率の高い樹脂で作られたシートを挟むわけですがこのシートを作っている会社なのです。
展示会場では 薄い小さいサンプルが小さな箱に入れられていて ご自由にお取りください状態で展示しているのが普通です。
壁には 熱伝導の性能の良さをいうために グラフが印刷されたポスターが張られている程度の表示です。
ところが 書いている通りに今回はiPhoneのケースを展示していたわけです。
 
ここで「なーんだ ほかの会社のまねをして 手離れのよさそうな単価の安い市場に手を出したか!」と思う処なのですが なんか小さなA4ぐらいのPOPに効能書きが くどくど書いてあるわけです。
カラーがどうだとか、下手したら匂いがあるとか(そういうのもあるのです)純度が高いとか色が透けているとかそういうことが書いてあるのかと思ったら実はそうではなかったのです。
現在のiPhoneは背面パネルが金属製になっています。
先代のガラス製からこうなったのは コストダウンとも言われていますがCPUのパフォーマンスが上がったことから放熱の意味もあるのではといわれています。
実際、ほかのAndroidなどに比べてずっと熱は出ていないのですが それでも前の方に比べて出るようになった気がします。
この気がするというのはガラスから金属になったおかげで熱が伝わりやすくなったからかな??なんて思ったりもしているわけなのですが 結果的にそうやって熱が逃げているからいいのだという事なのかもしれません。
じゃあ、そういう放熱板の働きをしているとした背面の金属パネルを 樹脂製の囲いで囲ったらどうなるでしょう?
もちろん、熱の放熱が悪くなるに決まっているのです。
何をバカなことを言っていると言われそうですが 実際そうなのです。
現在は大丈夫ですが 必ずしも設計以上の熱がこもる形になったという状態は大丈夫ではないのです。
もし、交換が放熱が理由だとすると 設計した人からは何てことしてくれるんだ!!と怒鳴られること請け合いです。
 
この会社の技術は熱を逃がすシートを作ることなのですが
ケースの内側に金属板を入れて 本体とこの板の間をお得意の熱伝導シートで繋いだわけです。
それだけだと 外側を囲えば結局熱の逃げるところが無いじゃないかという事で 終わってしまうわけですが ちゃんとこの会社は先まで考えているのです。
どころかユーザーのことまで。
まず長辺である両端は電話を手に持った時に触る部分だからここは樹脂で囲って熱を逃がさないように作っています。
それに対して短編のところには一部金属がむき出しになって放熱部として機能するように設計されているのです。
思わず なるほどと思ったわけです。
 
おおよそ部品屋さんなので こういった自社の製品を生かしたアクセサリーを考えるなんてのは本業ではなく 従業員の誰かが もしくは思いついた誰かから聞いて作ったものだろうと思われます。
これから暑い夏になればその効果のほどはおそらく かなりの物だろうと思われます。
それに合わせて はるにこういう商品を出してくるというのは結構すごいなと思うわけです。
ちゃんと自社の商品の一つ先まで中国の人も考えているんだと。
 
ただ、それでもちゃんとした宣伝を出来るほどには力が入りきってない点が残念。
恐らく熱意のある誰かのワンマンプレーなのではと思うわけです。
ただ、その小さなブースのことを気が付いた人がいるだろうか?
そしてそれを日本の夏に向けた商品だと iPhoneをよりよく使うための機能部品であることを伝えきれる人がいたのだろうか?とそちらに私の心配は行ったわけです。
中国の方が頑張って考えたものを 感度の落ちた日本人は受け取ることができなかったなんて 笑い話にもならないわけです。
こういったものこそ よい商売のチャンスとなるのでしょうが そこまで至るには・・・・

written by HatenaSync