番外編 伊藤探偵所長の苦労

体を突き刺す冷たい風が唯一生きていることを感じさせる
それすらも、長くとどまっていると体に忘れさせようとする。
このままでは凍えてしまう。
そういえばヒマラヤに挑戦して凍死した豹の話を昔読んだ いやキリマンジェロだったか
どうでもいいことが気になるおかげで死なずにすんでいる。
長い人生の中には幾度か命の危険を実感する事があるとはいうが アラブの国で
こんな目にあうと 因果な商売はやめたくなる。
だいたい、いつも来てから後悔する。しがない探偵業の俺に 国を挙げたご招待があるといえば
有名な探偵小説の話では 殺人事件に巻き込まれたりして命からがら解決するのであるが
軍隊が出てきて 荒野を逃げ回るのは 探偵の仕事じゃなく ランボーかルパンに頼んでもらいたい
少なくとも純粋な日本育ちの俺には荷が重い。
自分ひとりの身をかばうだけでも手に余る。

国賓として国に到着したのは空港を降りてから約40時間の後
もう、寝るのにも変わらない景色にも飽きた頃に
じっとしてたら舌を噛むような道を走ってついたところはアラブの国とは思えない緑の国である
標高が高いために 背の高い木はないものの 一面に緑が生い茂り
白い建物 白い道とのコントラストが美しい国だた
国の治安が安定していることは、ちり一つない国の姿が物語ってる。

決して先進的なビルがある訳ではないが 決してみすぼらしくない姿をしている人たちを見れば 文化レベルの高さも伺える。
なに不住無い国に住んでいても 人の欲望にはきりが無い。
この国の王になろうとする男の野望に呼ばれてこんなところまで来るとは。