伊藤探偵事務所の憂鬱 15

担当者がいなくなったところで KAWAさんが口を開いた
「お金が目的なの?」

「いや この話は何かおかしい」
西下さんが答えた
「解決するだけなら 子猫には鈴がついているから簡単でしょ?」
KAWAさんの問い
「うちの 副所長は親猫より早く見つけちゃったから もう判ってる それに・・・」
またも、わからない会話が始まったが 話している最中に 女性社員が ケーキを持って現れた
「きゃー、あたし このケーキ大好きなの!!」
あっけに取られた顔の 女子社員が出て行くのと同時に これまでの捜査記録のコピーと失踪した社員のプロフィールのコピーが渡されたので KAWAさんが食べ終わるのを待って表に出た。
帰る前に 西下さんが
「報酬の件、お忘れなくと社長にお伝えください 後ほど契約書をお送りします」
とだけ言って 出て行った。

「どう思う?」
KAWAさんに向かって西下さんが聞いた
「副所長さんに比べて あざと過ぎるから来ないわ ましてや目立つ場所じゃこれないわよ それよりお買い物!! ねー、あたし新しい服買いたいなー」
じゃあ、ぬりかべさんには来なくて良いってメール打っておこう。
2時間が過ぎ 二人のもう疲れ切った荷物持ちの男と 元気な女の子は百貨店を後にした。

「なんで、僕たちが荷物持ちなんですか?」
前が見えない程の荷物を二人は持たされ 愚痴のひとつも言ってみた
「彼女の荷物を持つのは 当たり前よ それに、仕事が誰かのせいで忙しくって買い物も出来なかったんだから」
いたずら好きそうな目で 僕を見る彼女は楽しそうだった。

「どうしよう、今日は何にも無いと思ってわんちゃん連れてこなかったの お買い物するんじゃなかった」
KAWAさんが立ち止まって 化粧を直しながら言った
「まずいですね、うちもですね」
西下さんが答えると、背後に車が2台 急ブレーキをかけて止まった。

「銃が撃てないだろうから 走って逃げよう」
とにかく 前に走っていった 10人ぐらいの男たちが追っかけてくる
「300mも行くと 交番がある 恐らくそこまで行けば大丈夫だろう」
3人はうなずいて とりあえず全力で走った。
しかし、100mも行かないうちに 前にサングラスをかけた男たちが待っていた。
絶体絶命である。
さすがの二人も慌てている。足が止まった。

周りは、以前に話したとおり 無人に近いコインパーキングの集合体
新興勢力の暴力団が 地上げを行い繁華街でありながら人の少ない いや、悪どい手口で地上げするために係わり合いになることを恐れた人たちが避けて通っているために・・・
ここにも事務所が・・・・
暴力団さんと スパイさんとどっちが怖いと思う?」

「KAWAさんごめん 西下さん 後で迎えに来てね」
考えるより体が先に動いていた
手に持っていた荷物 中でももっとも重いもの 陶器の傘立てを隣のビルに投げ込んだ。
ビルからは 大きな声が聞こえてきた
KAWAさんが手から隠した拳銃らしきもの 西下さんが手から隠したわけの判らない機械 あるんだったらもっと早く出してくれたらよかったのに。
だが、狙い通りに騒ぎは起きた
「出入りだー」
このビルは、ここら辺では有名な暴力団の事務所だった そう、悪どい手口で有名な そして抗争の多いことでも有名な・・・・・
当然の事ながら辺りには 近づきたくない人達が集まり 追いかけていた男たちは霧のように消え去った。
勿論、二人も きっと逃げ延びたことだろう・・・
お願いだから早く迎えに来てね・・・・

この後起きることを考えると 自分の運命を呪わざるえなかった
誰か助けて !!