伊藤探偵事務所の憂鬱 17

「早く起きた子には CHUしちゃうよ!!」
KAWAさんの台詞に反応したわけではなく KAWAさんの声に正直反応した。
生きているって実感がある、明るく元気な声に体が飛び起きた。

「えー、やらしいんだ」
いや、そんなつもりじゃなくて・・・・
どう見ても言い訳にしかきこえない もちろん声も出ない
「でも、昨日のお礼 CHU!!」
えっ、目をぱちくり 体が固まってしまった。
抱きついてきた彼女に バランスを崩してソファーに倒れこんだ。

「ぼうや、今何時?」
arieさんが言った。
見渡した周りには 事務所の全員+KAWAさんの言うところのワンちゃんが6匹もいた。
狭い事務所では 座るところの無い状態だった。
押し倒されている自分の姿に気が付いて
「KAWAさん 離れてください」
「いやー、このままいるるぅ」 
とても本気と思えない 楽しそうな声でからかうようにKAWAさん
「本物の修羅場にしたげようか?」
arieさんのどすの利いた声が事務所の空気を凍らせた。
「はーい、帰ってからにしまーす!」
先生に指された子供のように 片手を上げて答えるKAWAさん
世界中でarieさんに怒鳴られて 平気なのはKAWAさんだけではないだろうか?

「取りあえず、私たちは宝石を取りに行きます。ここと外はお願いね」
arieさんが言って座っていたみんなが立ち上がって動き出した。
「なにしてんの? ぼうや!!」
やっぱり行くんだ・・・・
「かわいい 傘立て選んでね!」
KAWAさんの台詞に昨日のことが走馬灯のように蘇ってきた。

「俺は何でここにいるんだ?」
意識したわけでは無く無意識で声が出た。
「あー、」
arieさんが頭を抱えて天を仰いで言った

「ぼうやは “や”の付く 自由な自由業の人たちを手なずけて帰ってきたの」
arieさんが事も無げにいって みんなが頷いている。
捕まったころから記憶が無いので 何が起こったかは判らないけどどうもそういう事らしい。
「かっこ いかったよー」
KAWAさんが言ったので 照れ笑いをしながら頭を掻いた。

「で、今日も百貨店で かっこよく決めてね!!」
arieさんの皮肉たっぷりに言った
どうも、このまま百貨店にいくらしい・・・・・

“りりりりり・・・”
絶妙なタイミングで電話が鳴った
「はい、伊藤探偵事務所です!!」
ARIEさんが電話を取った。
「総務部長様には申し訳ございませんが 社長様よりお金に糸目は付けず宝石を発見するように 改めてご依頼いただいておりますのでキャンセルは社長様にご確認させていただきます。 いえ、依頼料は 1億でも結構とお伺いいたしておりますので その3倍返しと言われても 私どもでいただける額ではございませんし はい それでは 副所長に伝えまして今からお伺いします。
はい、よろしくお願いいたします。」

「良かったね、お金 準備しといてくれるって」
arieさん
「きゃー、又 ケーキが食べれる」
KAWAさん
「腕がなる」
不気味な笑いのぬりかべさん
震えて じっと立ってられない僕。
準備は完了した・・・らしい