伊藤探偵事務所の憂鬱 24

KAWAさん:「ねえ」
「はい?」
KAWAさん:「何で、探偵にならなきゃ駄目だったの ? もっと他の道もあったでしょ?」
「探偵にしかなれなかったんです」
正直なところ、初めから望んでいたわけではないがこれしかなかっただけであった。
KAWAさん:「じゃあ、何で続けているの ?」
良く、質問の意味が解らない
「他の仕事が無いからでしょう」
おかしな質問に どうしていいか解らなくって取りあえず笑顔で答えた。
KAWAさん:「いいなー 仕事が選べて 仕事が楽しくて・・・・」
「楽しいように見えますか?」
恐ろしいことを言う人だ、事務所に入って約2週間 わずかな間に3回も襲われてやくざに連れ込まれて 国際問題に首を突っ込んで 他の会社の抗争にまで巻き込まれて・・・
これが楽しいと思うのは arieさんぐらいでしょ
KAWAさん:「命がけって 何度もあると慣れちゃうでしょ」
・ ・・・なれない なれない
KAWAさん:「そのうち、麻痺しちゃうの で、他のことにも刺激が無くなっちゃう」
・ ・・そんなこと無い 無い
KAWAさん:「でも、小さいころから体が覚えているから 死なないし・・・」

KAWAさんって、いつも冗談ばっかり言っているけど・・・・いままで どんな生活をしてきた人なんだろう?
死ぬなんて、近いことは最近あったけど 一生に1回で十分なのに
「死んじゃったら、楽しいこと無いでしょ?」
KAWAさん:「え?」
「楽しく無かったですか? 昨日も、今日も?」
昨日、今日は KAWAさん楽しそうに見えたんだけど? あれも 演技だったのかな?
KAWAさん:「だって仕事でしょ?」
「仕事で楽しんじゃ駄目って事は無いでしょ ケーキも一杯食べれたし」
「あんなに食べたことは 今までで初めてじゃないですか?」
KAWAさん:「実は、前にもっと・・・・・」
「それも仕事でした?」
KAWAさん:「違うわよ、ちゃんと自分のお金で買ったわよ」
「店は つぶれませんでした?」
KAWAさん:「失礼ね! ちゃんと何軒も廻って・・・」
KAWAさんのはっとした表情 おしゃべりがそこで止まった。
KAWAさん:「何を、言わせるのよ そんなに食べません!!」
「じゃあ、帰ってもケーキは要りませんね、ぬりかべさんにでんわしよーっと」
KAWAさん:「だめー!! あたしが食べるんだから」
慌てて、電話しようとする振りをした僕の手にしがみ付いて止めた
「ほら、やっぱり食べる!」
KAWAさんのほっぺたが膨れて 怒った表情になった。
「明日もケーキ買いますから許してください」
KAWAさん:「いくつ・・・・」
怒った表情で 上目遣いにこちらを見た。
「5個で勘弁してください」
KAWAさん:「10個で無きゃだめ!」
「解りました、10個で手を打ちましょう」
KAWAさん:「じゃ、かえろー」
握った拳を天に向け 精一杯に伸ばして 叫びながら言った。

KAWAさん:「明日も来ていいのね」
まじめな顔で聞かれてドッキリした
「もちろん !」

KAWAさん:「ねえ、明日のパンツは何色がいい?」
意地悪そうな笑顔がKAWAさんに戻ってきた
「なっ、パンツですか?」
KAWAさん:「今日のは 何色だった?」
「きいろ・・・ いえっ 知りません」
KAWAさん:「やっぱり、膝枕したとき見てたでしょ・・・・・すけべ」
「見ていません!! 見ていません!!」
本当は見ていました けど、見ていましたとは言えない!!
KAWAさん:「じゃあ、許してあげるから 明日のパンツの色は何色がいい?」
答えられない質問にどぎまぎした
「勘弁してください」