伊藤探偵事務所の憂鬱 26

西下さん:「おい、お前は機械が好きか?」
突然聞かれて戸惑った
「あんまり好きじゃないですね、冷たくて・・・」
西下さん:「そんなことは無いぞ、今のcpuなんてほっとくと 下手な暖房器具より効率が良いぞ!」
「いや、そういう意味じゃなくて・・・・」
酔っているのか、こちらの話を聞いていない。
僕に話していると言うよりも、誰かいるかのようにぶつぶつ話し始めた
西下さん:
「いいか、インターネットはこんなにも早く普及できたのは何でだかわかるか?
わからんだろ。
不完全で、人間的だから抵抗感が少ないんだ
物を覚えるときには 何回も繰り返したり、紙に書いたりして同じ内容の事を違う刺激に変えて脳に記録している。それが人の記憶なんだ。
インターネットで検索するのもそう、何度も検索されたものは そのキーワードに向けて記憶が最適化されて 聞かれたことに関する回答が的確に発生する。
もちろん、いま一つの検索サイトがなくなっても困らないようにたくさんの検索サイトがある。 人の脳も毎日、何千と言う単位で細胞が死滅している。だから、記憶が途切れる だが、何度も何度も・・・
そう、何度も何度も覚えたことは決して消えない。
それが、記憶であり 人の思いなんだ。
俺には、今は見えないし そんな意思があるかどうかも解らない。だが、いつか世界を繋いだコンピューターの意思が見えるかもしれない。
全ての意思があれば、個の意思もある。
どの単位までが 意思をもっているのか。意思には強さがあり 弱さがあるのか?

何より、俺が失ったものと同じ意思を、思いを持った機械がもしくは人が見つかるかもしれない。
俺の今まで生きていた間に 出会った人たち。その中にも 思いを 命をかける思いを抱いた人がいた。
コンピューターは、世界中に何万台が繋がっている。
絶対的な数が違うんだ 数が。
意思があれば、そしてそれを見つけることが出来たら 今まで探しても見つからなかったものが見つかるかもしれない。
そう思うだろ。
見つかったら、人生が終わってもかまわない。
見つからなければ人生なんて意味が無い。

機械を好きになれとは言わない、ただ、可能性を否定するな」

どうも完全に酔っ払っているようで この後の話は段々言葉にならなくなってきている。
一人になって、機械の中にいるわけではなかったんだ
人一倍 人が好きで、何か僕の知らないものを追いつづけている人なんだ・・・
貪欲に情報を 欲して、世界中の機械をめぐっている人なんだ。
結構、ロマンチックなことをやってるんだ
なんとなく、人間的な部分が人一倍強い人だったので安心した。

西下さん:「おい、と言うわけで 理解するためにも初歩から行くぞ
まず、DNSというのがあって、ここでIpアドレスとネームが登録され・・・・」
いけない、酔っ払った頭にはヘビーな話が・・・・
whocaさん:「@@@@@ #$# @〜〜」
whocaさんが、いつの間にか宴会に加わっていた。
もちろん、お酒を飲んでいる風ではなかったが 言葉を超えた楽しさが伝わるようで 今までとは違う 癒されるような歌だった」
みんな酔っ払っているので、頭の中を掃除されているような爽快な気分だった

西下さん:「おい、一緒にみつけような・・・」
眠たくて力尽きそうに成った西下さん
「見つかったら 何かプレゼントさせてもらいます 花束かなんかを」
聞こえたのか 聞こえなかったのかソファーの上で力尽きて眠り始めた。

arieさん:「楽しき仲間って 歌だって」
だんだん、この事務所の人たちのことがわかってきた。
でも、なんで何の取り得も無い僕なんかがこの人たちの中に入れてもらえているんだろう?
今日の飲んだ頭には ヘビーな話題なので、また明日考えることにした・・・