伊藤探偵事務所の憂鬱 33

男の怒りは その禿げ上がった頭の赤くなる様子から伺えた。
「僕のせいじゃないですよ!」
とりあえず 言い訳をしてみたが 聞いてないようだった。
男:「この、ごきぶりどもめ」
静かに、そして落ち着いた調子で言ったが 頭を見ればまだ怒っているかどうかは一目瞭然だった。
男:「おい、その若いの二人に礼儀を年上のものに対する尊敬というものを教えとけ!! 年長さんなんだろ後ろの4人は」
arieさん:「誰に向かって言ってるんだ このドブネズミ!」
年の話題は禁句だ、arieさんの逆鱗にふれてしまった。
男:「大体、似合わないその宝石は何だ! スーパーでキムチ買ってるおばさんと一緒でガラスだ玉をぶらぶら見せびらかすんじゃない」
危うい雰囲気が回りに漂い みんなのフォーメーションに変化がおきた。
さっきまで固まっていた4人が、arieさんのそばから散っていった。
なにより気の毒だったのは、二人の間に挟まれているがカウンターの中にいるために逃げ場の無い受付嬢だった。
受付嬢:「助けてください」
蚊の鳴くような声で受付嬢の声。顔から血の気が引いて今にも倒れそうだった。
「arieさん、こんなところで騒ぐと 目立ちすぎます。 それに警察でも来たら面倒なことになります」
arieさん:「警察が怖くて 探偵家業が出来るか!!」
カウンターを力いっぱいたたいて 大きな音を立てた瞬間 受付嬢は夢の世界に誘われていった。
2mぐらい離れて聞いて 慣れていても怖いんだから 気の毒にとしか思えなかった。

ちょんちょんと肩をたたく西下さん
西下さん:「あれが 警察そのものなんだ 見えないけど」
「えーっ あれでも刑事?」
刑事:「何だと、この若造!」
つい口から出た言葉に敏感に反応した。やはり、自覚してるんだ・・・・
そういわれてみれば、ただの汚いコートと思っていたコートも草緑色の通称「青島コート」と呼ばれるコートだし、警視庁のネクタイピンもしている。
ただ、似合ってないだけで
KAWAさん:「ねえねえ、青島君とお友達? さいんが欲しいの もらってくれない」
刑事:「だれだ、こんな頭の弱いのをつれて来たのは」
警察官:「警部、こんなところに 本庁から電話が入っております」
制服を着た警官が駆け寄ってきた。
本物の刑事だったんだ・・・話を聞いても実は信じられなかった。
警部:「重要参考人取調べ中だって言っとけ」
警察官:「監査官のお呼びですので そ言うわけには・・・・」
KAWAさん:「きっと 眉間にしわを寄せて 青島君ってやるんだ」
なんだか遊んでいる暇も無いって言った割には良くテレビみてるじゃん
警部:「わかった、行く。 おまえ、替わりにこいつらを死刑台に送っといてくれ・・」
警部が奥に走っていった。
警察官:「取り合えず、任意同行していただきます!」
事情はわからないものの真面目な警官のようで職務を遂行しに来た。
arieさん:「あの馬鹿の冗談に付き合う前に、救急車を呼ぶのが先じゃない? あんまり臭くて 不潔だから受付の娘が倒れちゃったじゃない。」
警官が救急車を呼ぼうと電話に手をかけた。
arieさん:「行くわよ!」
警察官:「まっ、待て」
KAWAさん:「ばいばぁーぃ」
みんな気にも留めないで行ってしまった。
警官は叫びながら手を振っているが 一人ではどうにも出来ずあきらめてしまったようだ。
これって罪になんでしょうか?
「これからどうするんですか?」
西下さん:「アポを取ってあるから 中に入るんだよ。それとも何かあるの?」
「じゃあ、さっき受付に行ったのは?」
arieさん:「いやね、ジョークよジョーク 事務所に入るのに百貨店の売り場案内の女の子に受付が出来るわけ無いじゃない」
はた迷惑なジョークがあったものだ。
犠牲者は警察二人、受付嬢一人 その他関わりあった人数十人。
やはり、現在の法制度には問題がある。この人を取り締まる法律が無いというのは 法の欠陥だと思う。
あっ、もしかして僕以外の人には全部わかっていたんじゃないだろうか。KAWAさんもとどさんですら・・・・・
前言撤回、やはり付いていけない人たちです