番外編 伊藤探偵所長の苦労 3

後日知ったのだが、その日 国宝である伝説の宝石が日本へ旅立った。
神官はその宝石を管理する責任があるので日本へ旅立っていった。
翌日に事件が起こった。

遠くで銃声が聞こえた。
その銃声が次第に近くなり 耳元にまで迫ることになったとき事態の重大さに気がついた。
王宮に迫った軍隊が 王宮の近衛兵と争う銃声だった。
少なからず兵士はいたが、所詮警備の兵。
軍隊と名の付く規模の兵隊に歯が立つはずも無く むなしく倒れていった。
国王が部屋に駆け込んできて 二人の近衛を連れて逃亡劇が始まった。

王宮には どの王宮にもあるように秘密の抜け道があり王宮外に出ることが出来る。
この王宮も例に漏れず 秘密の抜け道があり そこから外には出た。
勿論、軍隊もそれを予測していないはずも無く また抜け道もそんなに遠くまであるはずもない。
抜け出したところも、相手の制圧している地点である。
覚悟を決めて4人は駆け出した。

勿論、町に抜けてゆくのが安全ではあるが 相手もそれを考える。あえて危険を犯し山側に向かって駆け出していった。
山は、まだ雪を冠していた。故に発見が困難であろう。しかし・・・・
雪山に何の装備も無く向かえばどうなるか、一種の賭けではあるがそれ以上に良い方法も向かっていった。
町のほうからは、時々 銃声と何かが爆発するような音が断続的に続いている。
夜の闇に 地平線が赤く光っているのは 市街地でも戦闘があるせいであろう。

国王:「犠牲は最小限に抑えた、しかし国王としての判断としては誤りであろう」
つぶやくようにしゃべった。
従者二人は泣き始めた。
国王は、われわれをおいて町のほうに帰り始めた。
「どうするつもりですか」
国王:「これしか選択が無かったが 責任は取らなければならない。」
「おい、止めろ」
従者二人に言ったが泣くばかりで止めには入らない。
国王:「あなたに一番つらい役目をお願いします とにかく 一週間だけ逃げ回ってください そうすれば全て解決します。」
事態を予測してあったのか、草むらの影から登山のための装備が一つ出てきた。
従者:「王、大変です装備が一つしか見つかりません。」
泣きながら少しうれしそうな顔で国王に訴える従者。
従者:「われわれが足手まといになるわけにはゆきません 王、共をお許しください」
何故か草むらから二人が出したのは 2丁のサブマシンガンと銃創だった。
国王:「私の罪がまた二つ増えてしまった」
ゆっくり歩くように 国王と従者は町に帰っていった
国王:「あなた一人に責任を押し付けてしまったが あなたが捕まればこの王国は世界から消えてしまう。 内戦が終わればあなたが王になってもいい たのみました」

事態を飲み込めたわけではないが とにかく逃げなければ殺されることは確かだ。
王は 全てを拒否して死地に向かった。
命がけの頼みを断ることも 本人がいないので出来ない。
肉体労働は専門外だが、山に向かうことになった。