伊藤探偵事務所の憂鬱 34

arieさん:「どう思う?」
西下さん:「いやな感じですね」
廊下を歩きながら二人。
arieさん:「あなたの担当よ 任せるわ」
KAWAさんの方に向かって言う
KAWAさん:「か弱い女の子には向いてない仕事ですぅ おねがい!!」
ぬりかべさんを後ろから前に押し出した。
一歩、二歩・・・
戸の影から 針のようなものが飛んできてぬりかべさんに当たった。
KAWAさん:「ばっかでぃ!」
人よりふた周りは背の高いぬりかべさん。当然急所を狙ったニードルは胸板に突き刺さる。ぬりかべのあだ名は伊達じゃない。
防弾チョッキというものはあるが ナイフや今飛んできたような針に弱い。針を発射する装置を暗殺に使うのはよくあることである。
だが、金属で出来た鎧では重過ぎる。普通の人なら
普通の人ではないのは言うまでも無いので 金属製の鎧を着てなお人並み以上の動きが出来 液体ならともかくあらゆるものを通さない鎧を着ている つまり 後ろに敵を通さない壁。
改めて、ぬりかべという名前は伊達じゃない!!

隠れている壁を殴りつける。
壁はくぼみに変わり 岩ともいえる塊が隠れている敵に飛んでいった。
“どん” 音とともに鈍い音で壁にぶつかる音がする。
KAWAさん:「あったりー」

KAWAさん:「昨日のお店でもらってきちゃった」
ケーキフォークを僕に見せてくれた瞬間
反対側から出てきた男に フォークが突き刺さった。
KAWAさん:「せっかく可愛いからもらって帰ったのに」
壁に張り付いて動けない男を ぬりかべさんの一撃が襲い フォークの突き刺さった壁の一部と一緒に飛んで行った。

arieさん:「野蛮ね!」
KAWAさん:「キャー怖い〜」
KAWAさんは僕に抱きついてきた。
顔はいつものように笑っていて 勿論、西下さんやarieさんの表情も変わっていない。
とどさんだけは少し驚いたようであるが
「やはり、親分の言うとおり 先生は助けてくださるつもりだったんですね」
と 又妙な感心をしている。
ぼくは、あまりにも衝撃的なそれでいて映画を見ているようなありえないアクションに現実感が無く ただ、映画館と同様口をあけて見ているだけだった。
arieさん:「口を開けっ放しにしてると 馬鹿がこぼれているわよ そんなことより ここを壊した費用を請求されないように 社長にちゃんと交渉するのよ」
「はい、努力します」
あっけに取られて答えてしまった・・・・

arieさん:「冗談は抜きにして、ここからはKAWAさんの担当よ」
KAWAさん:「は〜い 呼んでありまーす。でも、しばらく動けないからほっといていきましょ」
「大丈夫ですか?」
この人たち、生きてるんだろうか?
ぬりかべさん:「内臓破裂するぐらいは殴っといたから 一週間は動けないと思うよ」
いつものにこにこした表情が恐ろしく感じる。
そういう意味じゃない。