伊藤探偵事務所の憂鬱35

「今日はお日柄も良く お元気ですか?」
うまく下手に出る言葉が思いつかずに 落語の太鼓持ちのような言葉が出てきた。
社長:「お元気なわけ無いだろう 宝石を見つけるなんて 大きな事を言って見つけずに何のようだ?」
「それは・・・」
あえなく玉砕、壁を壊したことに対する言い訳をする暇も無い。
arieさん:「人のことをとやかく言う前に、自分ところの社員を教育しといてよ!」
社長:「なに!」
一瞬で瞬間湯沸かし器のような高温の蒸気が鼻から出てきた。
西下さん:「社長、実は昨日 副社長派の方の妨害を受けて奪回に失敗しておりまして・・・」
社長:「なに?」
いくら、人の言うことを聞いてない 自己中心が服を着て歩いているような社長でもその言葉には反応した。
西下さん:「幸いにも 我が副所長の機転により事なきを得て 未だこの百貨店の中にございますので 取りあえずはご安心ください」
社長:「どういうことか詳しく話したまえ」
さすがに社長と呼ばれる人物であると感心した。完全に私情を押さえ込み答えた。
西下さん:「実は・・・・」
話は続いたが 今まで起きた事件を少々都合よく解釈したので内容が変わっていた。

副社長が 暴力団(といったとたん とどさんが怒ったが 取り合えず我慢してもらった)に今までの関係から 協力を強要し調査に関する妨害を行った。
妨害に失敗した彼らは、懐柔工作に入ったが これはこちらの拒否により失敗に終わった。
これに関しては、2回のケーキ店での事件で証明された。
これはKAWAさんとぬりかべさんの大活躍で、臨時に行われた「ケーキの大食い大会」のお陰で全てに近い従業員の知ることとなっており 簡単に証明できた。
とどさんの怒りが収まるのを待って 協力を強要された事も証言してもらい(勿論、組の名前を言ったところで 社長の納得することになった(社長と組との関係は・・・・・またそのうち)
現在の事務所通路の破損は、組の協力を得られなかった副社長の雇った 命知らずのくいっぱぐれの仕事だが 百貨店の名誉を守るために拉致をした。又裏切りによるものなので 二度と世間に出てこないという約束で 組預かりとしたことにした(まさか 他国の諜報員が副社長の陰謀の片棒を担いでいるとは言えない・・・勿論、KAWAさんの事も 秘密!!)

社長:「副社長を呼べ 今すぐだ!」
机の上の電話を取り、秘書に怒鳴った
arieさん:「だめ!」
叫んだときには 電話は終わっていた
arieさん:「今すぐ 電話を取り消して 早く」
社長:「何だ、この女は さっきから・・・」
冷静になったようでも しっかり怒りは持続していたようだ
arieさん:「早く、副社長を殺したいの」
西下さん:「もう、遅かったみたい・・・」
言い合いをしている二人をよそに、電話を取って話した西下さんがあきらめたように言った。
電話を置いた瞬間、内線が入った。
取ろうとする社長を押しのけてarieさんが取った。
ただし、押しのけたというよりは、蹴り飛ばしたというのが正しい押しのけ方だった。
arieさんも根に持っていたようだ・・・
arieさん:「これはこれは、お逃げになるなら早いほうがいいわよ・・・」
しゃべったところで、西下さんがスピーカーのボタンを押したので、相手の声が聞こえるようになった。
謎の老人:「素直に逃がしてくれるのなら、そうしなくも無いが」
KAWAさんが電話を奪い取った
KAWAさん:「あたしが捕まえたげても いいわよ。先に来た二人が寂しがってるんだから」
謎の老人:「なるほど、道理で対応がいい訳だ。しかし、日本の対応がこんなにいいとは思わなかったよ」
KAWAさん:「役者が大根だから いい芝居を期待するのが無理ってものよ で、どうするの? 判ってるだろうけどもうそろそろ逃げられないわよ」
時間を稼いでいる間に KAWAさんの仲間が上がっていったのであろう。
謎の老人:「さてはて、表のお客さんにも聞いてみるか」
KAWAさん:「なに?」
相手から強制的に電話が切られた。
すぐにかけ直したが 電話線は切られたようだった。