銃撃戦

伊藤探偵事務所の憂鬱 38

もちろん、バンダナを巻く前に 30秒が立ってしまった。
“どん”
大きな音がして さっき書いた扉の絵にひびが入った。
最後に貼ったバンドエイドがわずかに遅れて爆発した。
ひびの入った扉が その取っ手の絵の部分に向かってひびが走った。
同時に、本当の入り口のドアも大きな音を立ててノックされた。
KAWAさん:「せーの!」
力の入っていない可愛い“せーの”だったが振り向きざまに肩の高さまで上がった左足が遠心力で円を描き斜めから落とされるように壁に炸裂した。
本当の入り口の扉がに 穴が直線に繋がるように開いた。
機関銃で撃たれたのであろう。
KAWAさん:「ちゃーんす」
蹴り飛ばされて 中に破れたコンクリートが飛んだ穴から飛び込んだ
「待ってください」
いやいやながら飛び込んだ。
中には事務所らしく 机が並んでいた。
KAWAさん:「伏せて」
反射的に机の影に飛び込んだ。
“だだだだ”
机の上に並んでいる小物に弾が当って 弾けていく。
跳ね返った弾が あちこちに飛んでゆく。
KAWAさん「まめでっぽーだよ よっぽどのところに当らないと死なないから安心して」
笑っているような、まじめなような 不思議な表情でKAWAさん 
安心させようとしてくれているのか この状況を楽しんでいるのか 隙をうかがっている。

ドアが開いて 奥から3人の男達が部屋に入ってきた。
当然、味方ではない。
横からも弾が飛んできた
急いで、又机の影に隠れた。
一緒に動いたKAWAさんの腕には 椅子の足が握られていて 気がついたときには 椅子は空を飛んでいた。
椅子は一直線に扉のほうに飛んでいった。
“だだだ”銃の音が響いた
KAWAさん:「ばっか でぃ」
“がしゃん”
男とドアを薙ぎ倒して椅子は落ちた。
真似をして 手近にあったテープカッターを最初に撃ってきた方に投げ込んだ。
KAWAさん:「かっこいー いまよ 銃を撃って」
そういえばそんなもの持っていた
机から顔を上げて、銃を撃った
“だだだだだ”
あきらかなオーバーアクションで 銃弾を避けていた。
おもちゃの銃だと知ったら怒るだろうな。

KAWAさん:「そろそろ、引くわよ」
「えっ」
KAWAさん:「もう、頼まれた用事は済んだわ。 耳をふさいで」
KAWAさんが何かを投げて、僕のほうに寄りかかってきた
押し倒されて目の前にはKAWAさんの胸が・・・・
“どん!!”
音が消えても 耳鳴りがするうような大きな音がした
押し倒されて解らなかったが 地面に白い線が走ったので閃光が走った。

KAWAさんが何か喋っているが 聞こえない。
しばらくして こちらの状況が解ったのか 腕を引いて 入ってきたかべの穴から脱出した。
それに付き従うように フラフラになりながら脱出した。

壁の穴の外には 男達が待機していた。
どうやら死なずに済んだようだ。
どこかでぶつけたのか 体のあちこちが痛い。
KAWAさんが さっきからこっちに向かって ニコニコしながら何か言ってる。
「耳が聞こえないんです」
ちゃんと喋れているのか自分でもわからないが言った。
KAWAさんが 紙に何か書き出した。
「私の下で 何考えていたの!! すっけべ〜」
きん きん きん 段々、耳が痛くなってきた きっと聴力が戻ってきたのだろう。
目は、かべの穴から離せなかった。