伊藤探偵事務所の憂鬱 37

「これってどうやって使うんですか?」
恐る恐る、KAWAさんに聞いた
KAWAさん:「うーんと、引き金指を入れて ばばばばーんって」
指で、ばばばばーんというアクションをしながら話した。
「違います どうすれば良いんですか これ持ってドアから飛び込めって訳じゃないでしょうね」
恐る恐る聞いてみた
KAWAさん:「やーねー、頼まれたのはモバちゃんでしょ あたしは見てるだけ」
かわいくお返事してくれた。

初めて持った 重い銃が手の中にある。弾が当たった人の人生を背負うと思うと必然的に気が重い。
まさか、探偵事務所に入って 銃撃戦なんかは もしかしてと思ったけど 機関銃持ってテロリストの待つビルに飛び込むなんて・・・・
クリスマスに毎年 不幸になる男じゃあるまし ありえない
重い気持ちを少しでも楽にするために
「思ったより、軽いんですね」
引きつった笑いを見せながら 少しは余裕を見せるようにKAWAさんに言った。
KAWAさん:「そりゃそうよ、おもちゃだもん」
「へ・・・?」
KAWAさん:「だって、当ったら痛いじゃない」
なんで、おもちゃの機関銃を持っていかなきゃならないの!!
「相手もおもちゃですかね?」
念のため聞いてみた?
KAWAさん:「モバちゃんって面白い!! おもちゃの銃を持ったテロリストがいたら 世界貿易センタービルは無くならないわよ」
おもちゃの銃を持った ヒーローもいないと思うんだけど。
“ぷるる”
「はい」
西下さんからの電話だ
「僕に おもちゃの銃でどうしろって言うんですか」
西下さん:「おもちゃの銃か、なるほど それはいい手段だ」
「相手が本物の銃を持ってるのに おもちゃの銃でどうしろって言うんですか」
KAWAさん:「えっ、本物が良かった?」
「そういう意味じゃないです」
話が完全にかみ合ってない。
西下さん:「本物で、間違えでも相手が死んだら ブルース・ウィリスがやってきて テロリストを倒したとでもいうのか? 相手もそれを狙ってこんな大騒ぎにしたんだ。 KAWAさんが手を出したならともかく お前が銃を持ってれば 当然 相手も本物かどうかの区別がつかないだろ」
「相手は 撃ってきますよね」
KAWAさん:「相手が撃ってこなかったら 世界貿易センタービルは・・・・」
もういいです。
西下さん:「大丈夫だ、こちらが侵入するまでの時間稼ぎだ 死なないように逃げてろ」
「どうやって逃げるんですか?」
銃のよけ方なんかやったことが無い。
西下さん:「そんなことより 30秒後に爆破する そちらの再確認を」
そんなことって・・・
「KAWAさん、再確認しろって」
KAWAさん:「大丈夫、さっきも言ったとおり 信号を入れたら15秒後に ぱんって」
「西下さん、“ぱん” っていっていますよ・・・」
どんどん話の現実味が無くなって来る。
西下さん:「じゃあ、ぼうや 弾に当るなよ」
電話が切られた。

KAWAさん:「スタンバイ」
男達が、ドアの前に立って 中に呼びかけ始めた。
KAWAさん:「モバ君は かわいい方のドアの前に立って 私と一緒に イリュージョンするわよ」
さっき書いた落書きの前に二人で立った。
kawaさん:「KAWA いっきま〜す」
イリュージョンですね・・・・なんとなくこの後がそぅぞうできるのが恐ろしい。
おもちゃの銃があるから、とりあえずバンダナで鉢巻きでもするか。