伊藤探偵事務所の憂鬱 42

arieさんとwhocaさんの話が続いた
arieさん:「お願いだから “闇の王冠”と呼ばれるものがあるのなら教えて」
whocaさん:「・・・・・・」
arieさん:「黙ってないで、あなたは嘘を付けないんでしょ。だから何も話せない それは解ります。でも、既に私たちの所長は危ない目にあっているの 知らないはずは無いわね」
whocaさん:「それは、存じています。全ては 運命の導くままに」
arieさん:「あなたの運命はわかったわ。でも、私たちは運命を信じない。自分で切り開けない人生なんて 生きてないのと一緒なの! 所長は生きているの だから話して。」
whocaさん:「あなたの悲しみは見えます。もう誰もいなくなって欲しくないのですね」
arieさん:「私のことはどうでもいいの」
whocaさん:「あなたが運命を信じなくても、運命はそこに存在します。運命を知ると言うことは 悲しみから目を背けられないと言うこと。だから 私は 限られた真実しかつむぎ出せない」
arieさん:「私の人生は 自分で作るの。運命があるんなら自分で舗装してあげますわ。そして 舗装するための努力は厭わないわよ」
whocaさん:「くっくっくっ、あなたは強い人。そして弱い人」
arieさん:「だからあたしはいいの! あなたも運命が読めるんならこのまま答えずにいれば どうなるかは解るでしょ」
話の内容は解らないけど 二人の言い合いが続く。
ただ、arieさんの目の光が怪しく輝きだした。口元には牙が生えているようだ。
西下さん:「あっ、やばい arie姉さん 止めるんだ」

whocaさん:「わかっておりますわ、あなたはその力を私に使わないことも。」
arieさん:「さあ、わからないわよ 知っているとは思うけど動き出したら 止まらないの」
whocaさん:「ふふ、いいわよ 教えます。元々そのつもりです」
arieさん:「勿体つけて、どういうつもり?」
whocaさん:「これも残念だけど運命なの もうすぐわかるわ」
arieさん:「わかりたくも無い 運命は信じないって言ったでしょ」
arieさんの怒りの表情。
西下さん:「かくれろ」
「駄目、arieさん」
言葉が解らないから内容は解らないが arieさんのイライラが積み重なって爆発寸前だ。whocaさんとarieさんじゃ勝負は見えている。思わず二人の間に飛び込んだ。
ただ、ソファーの上で喋っている二人の間に飛び込んだからソファーが後ろに倒れた。
二人の女性を 倒れたソファーに押し倒した形で 倒れこんだ。
arieさん「いい度胸ね ぼうや。あたしだけじゃなくてお客様にまで手を出そうって? 未だ話の途中なの」
すぐに起き上がってarieさんは叫んだ。whocaさんはなぜかそのまま起き上がろうともしない。
arieさんに言われてwhocaさんごとソファーを起こした。
arieさん:「ちょっと席を外していて。落ち着いて話も出来ないから」
部屋から追い出された。

whocaさん:「少なくとも運命はおわかりくださいました?」
arieさん:「運命なら何故さらわれたりするの?」
whocaさん:「それも 運命ですから あなた方にお会いするための 大事な過程です」
arieさん:「あなたの運命論はいいわ それよりも“闇の王冠”の事を喋って」

その後はarieさんの聞いたことに 細かい説明をつけて西下さんがみんなに話してくれた。

“暁の王冠”と呼ばれるものは 現在百貨店で展示されているものである。そして それと対になるもの それが“闇の王冠”と呼ばれるものということ。
英雄がその手に持った宝石 それが“暁の王冠”と呼ばれるものであるが 何の策も無く数十倍の敵に比して勝てたわけではない。
一人を殺して人殺しになるのに、その数千倍を殺した礎の上にたつ英雄である。決して奇麗事だけで成り立っているわけではない。
その、闇の部分を補うものが“闇の王冠”。
神官はその闇を鎮めるのが本来の役目である。
ただし、その双方がそろってのみ 王位の継承が行われる為に“闇の王冠”は隠されている。
そして、その宝石を持って逃げていると思われているのが 気の毒な日本人で 私たちの非常に良く知っている あの方だった・・・・
単独、山にこもって3日目・・・・