伊藤探偵事務所の憂鬱 66

arieさん:「また、いい加減な事を言う」
所長:「大丈夫、大丈夫 何とかなるって」
arieさん:「何とかならなかったら 責任とってくださいね」
arieさんはため息混じりにそういった。
あまり、こういう話を二人でするのを聞いたことが無かったが、arieさんも所長には弱いようだ。どちらかと言うといっても無駄だと思っているみたいだが それでも、一緒にいるという事はそれはそれでいいコンビなのかもしれない。
arieさん:「じゃあ、とりあえず行くわよ あんまり待たすと悪いし」
KAWAさんは荷物を片付け終わったようで、荷物の上に座って返事する。
KAWAさん:「はーい」
ぬりかべさんや所長は 口も聞かずに動き出した。
「あのー」
どうすればいいか判らない僕は arieさんに聞こうとした瞬間
arieさん:「いつまでそこでたそがれてるの! ストーブを持って早く乗る!」
arieさんに怒鳴られた。
よくよく考えてみると 誰かが怒らせて その度に怒鳴られているような気がする。
arieさん:「早くする!!」
「あちっ」
慌てて出たので、ストーブをそのまま素手で持った。もちろん、感覚は十分に戻っているので熱かった。
にらみ付けられて、慌てて筏に乗った。
「川を下って、どうやって王宮に向かうんですか? 所長」
所長:「どうしようね、arie君」
arieさん:「ほら、何時もこう。何にも考えてないのに勝手なことばかり。  取り合えず 車ぐらいは用意してくれていると思うわ ぼうや!!」
目一杯睨まれたのは僕だった。“誰が?”と聞きたい気持ちが一杯だったが その続きを続ける度胸は無かった。
勿論、所長はいつもと同じ涼しい顔だった。
川を数十分下った。
水量も雪解けの季節なのか多く 川幅が広くなり流れが緩やかになってゆき快適な川下が続いた。
しばらく行くと、川はのどかな農道と平行に流れて行くようになった。
この、メンバー(格好)で川を下っていて、人に見つからないだろうか?という疑問がむくむくと沸いてくるが のどかな風景で見渡す限り誰もいなかった。
KAWAさん:「あっ、あのおじいさんだ」
はるか先、1Kmは離れていようかという距離の小さな点を目指しKAWAさんが言った。
どんな目をしているんだろう・・・・・
「あの人は、KAWAさんのお知り合いですか?」
KAWAさん「やーねー、会うのは今日はじめてよ」
「と、言いますか お仲間の人ですか?」
KAWAさん:「どっちかって言うと 敵の方じゃないかな?」
「じゃあ、逃げなきゃ!!」
KAWAさん:「うーんでも、助けてくれますよね お姉さん!」
arieさん:「いい加減に覚えなさい。お姉さまって言うなって!!」
筏は川を緩やかに下り、僕にもおじいさんである事が確認できた。
arieさん:「岸に付けて」
ぬりかべさんが、長いさおを操って岸に付けた。
おじいさん:「やあ、どちらさんだい?」
好々爺とした 大人しそうなおじいさんの返事
arieさん:「白々しい!」
KAWAさん:「ちわー」
二人とも親しそうに近づいていく。
二人とも知っているようだ。
おじいさん:「はっはっはっ、元気なお嬢さん方だ さっきは一人は子供だと思ったんだが」
KAWAさん:「妹でーす」
arieさん:「勝手に妹になるな!」
KAWAさん:「だって〜〜お姉さまは駄目って言うから・・・」
arieさん:「やっぱり、来ていましたね」
おじいさん:「こちらこそ、やっぱりだ」
arieさん:「あら、あたしの投げキッスで来たんじゃなかったの?」
何故か、色気を振りまきながらのarieさんの台詞
KAWAさん:「あたしのキッスよね〜〜」
この人たちには本当についてゆけない・・・・
おじいさん:「まさか 死にかけている車の運転手が 投げキッスじゃ 死んだとは俺は信じちゃねえからな」
arieさん:「さすが、2次大戦中の勇者だって?」
おじいさん:「今日、引退を決めたよ 足の遅いキャタピラ車一台ほおむれ無かったんだから。老兵は消え去るのみってな」
arieさん:「あら、相手が悪かったのよ」
所長:「そうです、相手が魔女なんですから」
事も無げに言う所長。この後口を開いたほうが怒鳴られる。もしかして ぬりかべさんの無口はここから来てるのかも知れない。