伊藤探偵事務所の憂鬱69

arieさん:「いい、計画は 私たちが宮殿に向かって進入する 陽動で 爺さんが山を攻撃する でも、後を引くようなのは駄目よ混乱させるだけが目的だから」
arieさんは、やまさんの耳元に口を寄せて首筋にキスをした。
やまさん:「魔女の口付けは 死の印じゃなかったか?」
arieさん:「田舎魔女と一緒にしないでって言ったでしょ 私の口付けは悪魔の声が聞けるようになるのよ」
西下さん:「こんにちは、悪魔です」
やまさん:「おい!・・・・・ 成る程 だが俺には似合ってないような気がするがな」
arieさんは近づいた時に イヤリングをやまさんの耳に付けていた。
西下さん:「始めまして、実際の作戦指示は私のほうからさせていただきます。よろしくお願いします」
やまさん:「年寄りに無理させるんじゃないぜ」
西下さん:「ところで、実は秘蔵っ子を出していただきたいんですが」
やまさんの話を聞いてなかったように西下さんは切り出した。
やまさん:「何で知ってるんだ若造」
西下さん:「一番、混乱させるのは 恐らく電気を止めること だけども一般市民に迷惑をかけるのは本位じゃない でしょ」
やまさん:「もちろん」
西下さん:「世界で最も軽い戦闘機なら うまくやれば直ぐに復旧できるように破壊できるんじゃないかと思いましてね」
やまさん:「そこまで調べてあるんだったら何も言うまい」
西下さん:「ただ、通常兵器で攻撃できないんで 増槽を一つ潰しちゃうんですが そこだけは許可いただきたいと」
やまさん:「せっかくの俺のコレクションを・・・・ まあ、いいだろう墓場まで持っていけるとは限らないからな」
西下さん:「山と平地のつなぎ目を高空から急降下爆撃の要領で増槽を落とせば電線だけ切断できるんですが・・・・」
やまさん:「つまり出来るかってことだな?」
多くの飛行機には攻撃地点までの飛行距離を伸ばすために燃料タンクを外部に増設してつける。しかし、実際の戦闘時には邪魔になるので捨てる事になる いわゆるドラム缶である 勿論攻撃能力は0に近い。
問題は爆弾ではないので 切り離すことは出来るが狙いが付けられない。
正確に狙うためには 離すポイントを出来るだけ目標に近いところでしなければいけない。
やまさん:「しっぱいしたら?」
西下さん:「あなたが死ぬ可能性を除けば 成功したら三日以内に復旧できるけど 鉄塔を倒せば3ヶ月は電気無しで我慢してもらうしかありませんね」
やまさん:「若いの そこからは出来ないのか?」
西下さん:「出来ますよ、流れる電気をコントロールして一箇所に集めれば焼き切ることぐらい 出来ますが・・・・・どこで切れるかは保障できない。 この状況下で山の中で切れたら 誰も怖がって復旧できないでしょうね」
やまさん:「じゃあ、やるしかないじゃねえか」
話し振りとは違う うれしそうな顔であった。
西下さん:「出来ないことはお願いしてないつもりですが」
arieさん:「じゃあ、あたしたちは行くわね」
「どこへですか?」
arieさん:「聞いてなかった? 所長に聞いて」
所長:「とりあえずは、村はずれのお寺」
「お寺ですか?」
所長:「いやー、王家の専用の脱出口があったんだから きっと神官用のもあるかなって?」
arieさん:「そりゃーご立派な計画だこと」
所長:「そうでもないんじゃないかな? 西下君」
西下さん:「所長は何時も勘がさえていますね どうやらありそうですよ」
所長:「ほらね」
arieさん:「はいはい・・・・」
喋ってる最中にもKAWAさんとぬりかべさんは準備をしている。
KAWAさんは遊んでいるとしか思えないが、大きな袋に秘密道具を入れているし ぬりかべさんはランボーがお辞儀をして通るぐらいに武器をハリネズミのように抱えている。
arieさんは、動きやすい格好に直して 所長は・・・・
靴下を下ろしズボンを折り込んでその上から靴下を履き 探検隊もどきな格好をして悦に入っている。
「僕は何をすれば?」
arieさん:「その不恰好なズボンの真似でもしてれば?」
所長:「失礼な、これは由緒正しき探検家の様相で・・・」
arieさん:「いい、私たちは洞窟探検に行くんじゃないの。これから王宮を落としに行くの。そのふざけた格好がしたければ このままボートでアフリカにでも行って」
所長はarieさんの言葉を気にもせず、格好の説明をしている。
いいコンビだとは思うが、かみ合ってない。
KAWAさん:「もばちゃん、ちょっと手伝って」
KAWAさんに呼ばれて行った。
正直助けられた気分だった。
「ハイなんでしょう?」
大きな袋にKAWAさんが入れているのは、山さんの家の食料だった。
「KAWAさん、それはまずいでしょ」
KAWAさん:「でも、お腹一杯いいって言ったもん」
「・・・・」
取り合えずKAWAさんの作業を後ろめたい思いで手伝った。