arieさん大阪に行く(番外編 実在の人物とは一切関係ありません)

事件は解決した。
解決はした、しかし・・・
arieさん:「なめてんじゃないわよ、あんたが払わないって言ったらこっちから引き取りに行ってやる。判ってるわね あたしがそこまで行ったらただじゃ済まない事ぐらい判ってるるでしょ!」
頭の高さを超える高さから一気に電話機に向けて受話器をたたき付けた。
西下さん:「あっ!」
小さく声を上げて天を見上げた。
arieさんで聞こえない声で
西下さん:「あ〜めん・・・」
arieさん:「西下!!」
西下さん:「14:15発東京駅が一番早い電車です。車はいまぬりかべ君が取りに行ってます」
arieさん:「気が利きすぎるのも頭に来るものよ!」
“ばん!”
大きな音を立ててドアを閉めた。
西下さん:「一週間ぶりのお出かけか 秋葉原に電話を買出しに・・・」

渋滞、首都高、人の多さ 全てがarieさんの神経を逆撫でした。
握り締めた拳の色が、握りすぎて白く変わっていた。
東京駅まで車で送っていったぬりかべさんは疲れ果てていた。
ぬりかべさん:「いってらっしゃ〜い」
arieさんには絶対聞こえないように窓の下で小さく手を振りながら言った。

新幹線のarieさんの周りの席は西下さんによって買い占められていた。心臓の弱い人が間違えて座ったら、しゃれにならないことになるからである。
勿論、arieさんの握っている請求書には必要経費として記載されている。

arieさんが事務所を出た途端、いつもの様に相手先にarieさんの近況をFAXする。これを見て、相手が調べるには2時間半は十分な時間である。
“新幹線”は定刻どおりに新大阪についた。被害は少なく、間違えてarieさんの横を通った子供が泣き出したこと。車内販売の女の子が二人辞表を出して 車掌が心肺機能に自信を失っただけですんだ。

静かに新大阪に“のぞみ”は滑り込んだ。
ホームにいた人たちには、異様な光景を目にした。
ホームの約2両分の長さに土下座している黒服の男たちの姿が目に入った。
少し機嫌を直した、arieさんが斜め上に固定された視線を崩さずにホームに降り立った。
arieさん:「あたしは暫くこの町で遊んでいるから その間に用意しなさい」
足元に握りつぶされて くしゃくしゃになった請求書を落とした。
そのまま、足元に視線も移さず市内向けの電車のホームに向かった。

北と南だと、本能的に南に動くのは、素肌の露出が減るからか 南のほうが慣れているのかは知らないが 南に向いてしまう。そういう性格だった。
大阪で南というと、なんばの事である。
arieさん:「何よ、この街 香港じゃあるまいに」
大きく看板の張り出した商店街を歩いてつぶやく。
転がってきたボール・・・
子供:「おばちゃん、ボールとって!」
“カチン”
arieさんを知る人が傍にいれば 間違いなくスイッチの入る音が 耳の横でこだましただろう。
arieさん:「ぼうやたち、誰がおばちゃんだって?!」
辛うじて子供相手なので理性を保っているarieさん。
子供:「ひっ!」
引きつる子供。
男:「大人気ないなぁ、大阪では女の人は18でも20でもおばちゃんやがな!」
にこやかに話すおじさんがarieさんの顔を見た途端凍りつく
子供:「おばちゃんごめんなさい」
視線が反れた事で自分を取り戻した子供が arieさんに謝った。
arieさん:「いいのよ、坊やたち はいっ」
arieさんはボールを子供たちに投げて渡した。
子供:「おばちゃんありがとう」
arieさん:「じゃあね、またね!」
上を見上げると 馬鹿のように大きなかにが動いてる。
さっきは蹴りごろの人形が太鼓をたたいていた。
両手を挙げて、万歳しながら走ってる看板・・・・・
arieさん:「西下君聞こえる?」
西下さん:「はい」
arieさん:「そろそろ帰るわよ、新大阪に集めといて」
遊びにはともかく仕事に向いた町だとarieさんは思った。気の毒なのは全ての厄災を一心に受ける 駅で待つ未払いを抱えた黒服の人たちだった。