伊藤探偵事務所の憂鬱92

衛兵:「いくら王とて その暴言許せません!」
今までの態度の業を煮やした衛兵隊が声をあげた。
そして、銃に手をかけた。
arieさん:「王も守れなかった衛兵隊は引っ込んでなさい!」
言い放ったarieさんの言葉に気おされた衛兵隊の動きが止まったところを前王が抑えた。
前王:「全て、私の能力の問題です。私をお裁きください。この者たちに罪はありません。」
全ての人の前に前王は立ちはだかった。
そして、衛兵も王国の重鎮たちも口々に自らの責任を口にした。
ぬりかべさん:「いい家来を持ってるなあの王様」
僕に向かって聞こえるように言った。
ぬりかべさん:「勿論、王がいいからあの家来が出来るんだがな」
「そうですね」
“どん”
ドアが大きく開け広げられ、女性が入ってきた
whocaさん「皆さん!」
声は群集にかき消された。
arieさん:「静かに! 道を開けて!」
通る声で叫んだ。
伸びた手の先は、入り口のドアを指し示し、その手から何かが出ているかのように人垣が左右に分かれた。
女性は、whocaさんだった。背筋を伸ばし凛とした姿勢で 王を見ながらゆっくり歩いて舞台に向かった。
「おー!!」
人々から声が上がる。
勿論、王国中知らない人などいない有名人である。
いつもは手の届かない遠くにいるのだが、今日は目の前を通り過ぎてゆく。
勿論、神秘的な美しさは 手の触れられるような人ではない。
そのまま、前王の傍までやってきて大きく頭を下げた。
whocaさん:「我が王よ、私の力が足りないばかりに このような事に・・・」
まず、前王に謝った。
whocaさんが顔を所長に向けて 決意を決めた目で睨みつけた。
そして、口を開いた。
arieさん:「おだまり、貴方に発言の許可は与えていないわ」
whocaさんの小さな声を遮ってarieさんが叫んだ。
わざと、whocaさんの声を隠すようだった。
所長:「whocaさん、今“我が王”と言いましたね」
所長はwhocaさんに問いかけた
whocaさん:「はい。それは・・・」
arieさん:「お黙りなさい、貴方は聞かれたことにだけ答えなさい!」
whocaさん:「はい」
言葉をまたもや遮られ、又arieさんの強い口調にwhocaさんは黙ってしまった。
所長:「今の王は、私だ! そうだね諸君!」
前王:「そうでございます」
前王が代表したかのように即答した。
所長:「やはり、これは不敬罪になるんだろうな arie君」
arieさん:「そうですね、普通なら・・・」
度重なる屈辱に、またもや衛兵隊が食って掛かってきた。
衛兵:「神聖なる神官に何を言う」
arieさんはステージから降りて、いま叫んだ衛兵の首筋を掴んで言った。
arieさん:「いい、あたしの言葉を遮るんじゃない!」
その迫力に、衛兵は吊り上げられた体で頷くしか出来なかった。
arieさん:「最後まで、あたしの話を聞きなさい」
手を離したら衛兵はその場に崩れ落ちた。
そのまま、大股で歩いてステージまで戻った。
arieさん:「いい、普通は不敬罪だって言ったとこまでは良いわね。但し、問題が一つあるのよ」
前王:「何なりと、私の罪としてお受けします」
arieさん:「そんなこと言ってるんじゃ無いわよ。いまwhocaさんが言った “我が王よ”なんだけど つまり、whocaさんは 今の王を認めてないってことでしょ」
whocaさん:「はい」
覚悟を決めたwhocaさんが答えた。
arieさん:「じゃあ、駄目ね!」
前王:「何がで御座いますか?」
arieさん:「あなた、この国の王なのに 法律も知らないの?」
前王:「不勉強で、申し訳ありません」
arieさん:「貴方の国の法律では、神官が認めてないものは王になれないんだって」
arieさんが王にウインクした。
前王:「はっ、どういうことで?」
arieさん:「鈍いわね、貴方が未だ王だって言ってるのよ」
whocaさん:「arieさん・・・・」
arieさん:「大体、所長に王なんて務まるはずが無いじゃない。ねえ、whocaちゃん」
所長:「俺も向いてないと思うよ。王としての最後の命令だ 音楽を鳴らせ 酒も女も持って来い!!」
arieさんのパンチが又、所長を直撃した。