伊藤探偵事務所の憂鬱93

やまさん:「王よ、ちったー堪えたか?」
「あっやまさん、無事だったんですね」
忘れていたわけではないが、皆成功した話しかしなかったので心配はしてなかった。
僕も王の傍にいる やまさんに駆け寄った。
やまさん:「勲章貰ったとき以来か?」
王:「あなたは・・・・」
やまさん:「いいよ、思い出してくれなくても」
arieさん:「昔話は、後でね! それより皆にお言葉を」
うやうやしく頭を下げ、膝を折ったarieさん。
王:「私を許してくれるなら、皆 力を貸してくれ」
会場内は歓声で包まれた。
所長の呼びかけに応じて既に来ていた楽隊が演奏を始めた。
配られた飲み物にも皆が手を出した。
皆疲れきっているはずなのに、子供のように飲んで騒いでいた。
KAWAさんと食べ物の取り合いを始める人までが出ていた。
緊張の糸が切れた王がふら付いた
arieさん:「あっ!」
立ち上がって王を支え、椅子に座っている所長を退けて(気絶してます どけたと言うよりも・・・・)座らせた。
arieさん:「玉座です 座りなれてらっしゃるでしょ?」
所長:「いってーな もう少し労わってもらいたいものだね 元王だよ」
arieさん:「王は位で呼ばれるものではないわ その人の器で呼ばれるものよ」
kilikoさんがいつの間にか所長の後ろに来ていた。
kilikoさん:「所長にも資格はありそうでしたが?」
arieさん:「さーね、少なくともあたしにはそう見えないわね」
王:「よろしいのですか? これで」
所長に向かって王は聞いた
方膝を立てて、arieさんに殴られた頬を撫でながら所長は答えた。
所長:「何がですか?」
王:「王になることも出来ましたのに」
所長:「俺は、探偵だぜ 依頼を受けて解決しただけ 他のことはしてないぜ」
王:「では、報酬を・・・・」
所長:「報酬ですか? 仮にもさっきまで王だったのに国民のお金を私事に使えますか! 王としてあたりまえの事でしょう!」
強い口調で胸を張っていった。
少しだけ所長を尊敬した。
kilikoさん:「あはははは、それは謙虚なことで。でも、お土産は貰って帰るんですね」
「arieさん、お土産って何ですか?」
所長:「私は、約束を守ったよ 王として 王である間は彼らに特別の待遇を与えたんだから 嘘はついてない!!」
うろたえて所長が答える。
arieさん:「所長が貢物貰っていたの覚えている?」
「はい、すごく嫌な気分でした。でも、あれって」
arieさん:「所長は 王である間ってしつこく言っていたでしょ」
「はい・・・・。もしかして」
arieさん:「そう、頂いて帰るらしいわよ」
「そんな、詐欺じゃないですか」
kilikoさん:「所長は 嘘をついてない 謙虚で高潔な人らしいですよ」
王:「それは国民に迷惑をかけてはいませんな あはは」
所長:「一つだけ忠告、これで誰が国のことを良く考えていたか解ったでしょ」
王:「はい、忠信がよく」
所長:「まあ、あんなに露骨にやっちゃぁ大きな顔も出来ないでしょうけど」
kilikoさん:「気の毒な人たちだ、その上詐欺師にお金を取られたんだから」
所長:「おれが王の間は、罪にも問わなかったし 名前まで呼ばれて鼻高々だったじゃないか」
王:「私も お持ち帰りになることをお勧めします。法が お守りします」
所長:「王様公認だ!」
「あはははは」
僕は、可笑しくて涙が出た。どこまでが計算されていて、どこまでが偶然かは僕には解らないが トルコの空港を出てから約24時間。極度の緊張から解き放たれた。態度はともかくぎりぎりの状態で 尚遊んでいた 所長達に そして騙された人たちに 笑いが止まらなかった。
arieさん:「以外に笑い上戸なのね」
kilikoさん:「私は、生きているだけでも大したものだと思っているのですが」
ぬりかべさん:「同感です」
「もしかして、駄目かもしれないと思って連れて来てたんですか?」
kilikoさん:「お嬢が この子は所長に似ているって言うから・・・」
皆が目をそらした
怒ってるはずだったが、何故かやっぱり笑いがこみ上げてきた
arieさん:「ほらね」
whocaさんがやってきた
arieさん:「ところで、whocaちゃん あたしの王ってどういう意味かしら?」