伊藤探偵事務所の憂鬱94

whocaさん:「そんな、大意はありません。私の力不足のせいで・・・」
whocaさんの表情が曇った。
arieさん:「好きでも掟が許さないって?」
arieさんは王を指差して言った。
王:「私には何のことだか」
所長:「多分、arie君のほうが貴方より詳しいと思いますよ。おい そこの重鎮集まれ!」
所長は、国の政を決めているメンバーを呼び集めた。
所長:「これから、さっき言ったように王を裁くが、判決は君達が決めてくれたまえ」
whocaさん:「所長さん?」
ぬりかべさん:「大丈夫です、whocaさん あなた方の国の方が貴方の王に悪い裁定を下すわけは無いでしょ」
arieさん:「それはどうかしら?」
所長:「arieくんが喋りたがっているからお任せしましょう」
arieさん:「またー、まあいいわ 話しをしたいことがあるから」
arieさんの話は始まった。
英雄の話である。
かこにこの国は、国の存亡を掛けた危機が会った。
彗星のように神に選ばれた英雄が現れ国を救ったことになっている。
だが、本当に数千の兵で数万の敵を迎え撃てたのか?
いくら、相手にやる気が無かったとしても。

もともと、この地は不可侵の地である。
王国があろうと無かろうと、それが神の地であるからである。
勿論、いまのイスラエル、昔のテーベの都のように 複数の宗教の聖地であればこそ争いの種になるが、同じ宗教においてその神の住まうところに攻めてくる軍があろうはずはないと思っていたからである。
だが、時代は変わるのだ 世界は我が手の中にあるとまで言わしめた トルコの軍が迫ってきているのだ。
勿論、こちらの宗教すら知ったことじゃない。
逆に狙うんだったら、相手のやる気を失わさせる為に 狙いたいぐらいである。
だが、いつもそれを狙うことが出来なかったのは 自国から連れて来た兵隊では無いからで 現地徴兵ではいくら改宗しても宗教の総本山を攻め落とすまで行かなかったからである。
そのときの王は 稀代の英雄であった。
しかし、英雄も神ではない。
無限にその力を放出できるわけではない。
勿論、神の力はあった しかし。
神の力つまり神の声を・・・・、それも絶望的な。
神官もその言葉に信用が置けないほどの人であれば良かったのですが(もちろんそうであれば今この国は無いのだが) 稀代の神官であった。
幾度も幾度も、王の為にありとあらゆる策を試みたが、結果はどれも同じものだった。
神殿が滅びる未来しか見えなかった。
ただ、その未来の中に一つだけ 同じ滅びる結果の中に一つだけ 王の死なない結果のものが含まれていた。
普通だったら考えもしない方法だった。
まともな神経なら選択出来る内容ではなかったが、今までの神官の人たちと違ったことは この神官が女性であり そして、王を愛していた事だった。
そして、悪魔の勧めるまま最悪の方法を選択した。
王は、その方法を知らされず 神殿に向かう道に陣を引き 教えられたまま敗走劇を繰り返した。
流石に、神殿に一気に攻め込むことを拒んだ現地徴兵の兵達も 進めば引く王の兵の敗走劇に見せられ徐々に神殿に迫っていった。
神官の勧めのまま、神殿に陣を引き 数日の膠着が続いた。
神官に挟撃の準備が整ったと教えられ 生き残った僅かな兵と共に後背の本体と合流するために、抜け道を出て後輩に廻った。
おかれた武具と、信者達の叫び声が王の兵達の存在を敵に知らしめた。
謝った情報であったが。
敵軍の中には本国からやってきた人たちもいた。
攻め込まない現地徴兵に痺れを切らしていた。
僅かな兵士かいないと信じ、要塞でも何でもない門を破り侵入した。
もちろん、中には一人の兵もいない。神官達が武器を持つはずもない。
あっという間に神殿は制圧されてしまった。
それを見た現地兵を含む本体が全て神殿になだれ込んだ。

神殿を脱出した王は 本体を探して道を急いで下った。
現在の状況を予想できないわけではなかった。僅かの兵もおかない神殿では耐え切れるはずがない。
本体と合流した後の挟撃が間に合わなければ終わりである。
2時間近くも下ったであろうか、一人の兵を王は見つけた。
王:「本体はどこにある?」
聞かれた兵士はただの偵察兵であった。もちろん、兵の配備など知るはずもない。
捕まったときに知られないためであるし、知るほど高い位でもなかったからである。
王の質問にも答えられない。
しかし、彼にも一つだけ解ることが合った。
彼が命を与えられて出てきた場所は、王宮そのものであり 彼の部隊は少なくとも王宮の中にあるということだった。
雷のような地響きが足元から耳まで響いてきた。