伊藤探偵事務所の憂鬱99

王は既に食卓についていた。
勿論、その隣にwhocaさんも。
所長:「おはようございます。色々とお気遣いありがとうございます」
珍しくまじめな顔をして所長が言った。
どうも、後ろにarieさんが付き添っているから、きっと脅されているのだろう。所長の手と足が同時に出ている。
でも、きっと、忘れるんだろうとは思うが・・・・
arieさん:「おはようございます」
ほかの人も続いて挨拶をした 勿論 僕も。
あまりに、当たり前の朝と 確かに豪華ではあるが当たり前の食事の風景に驚いた。
べつに、この人たちが違うものを普段は食べているとは思わないのですが、この国の印象があまりにも特別なものだったので普通の風景に違和感を感じた。
whocaさん:「お気に召しませんか? arieさんが食べてらっしゃったのを参考に用意させていただいたんですか?」
arieさんは、いつもこんな良いものを食べてるんだ・・・
所長:「いえ決して」
KAWAさん:「早く、食べましょう!!」
KAWAさんは野獣の目をしていた。
王:「これは失礼いたしました、では 頂きましょう」
KAWAさんがすぐに食べ始めた。
whocaさんも王も黙って 祈りを上げている。
「KAWAさん・・・」
僕は、KAWAさんを止めた」
王:「いえ、どうぞお食べください」
王は、気にも留めていないかのようにKAWAさんの食べる様を笑顔で見ていた。
勿論、KAWAさんは 僕が止めたぐらいでは食べるのを止なかった。
KAWAさん:「ふあぃ、いたらいてます」
口の中に食べ物を溢れんばかりに詰め込んだ状態でしゃべった。
「KAWAさん行儀悪い」
しかし、見事に口いっぱいの食べ物にもかかわらず しゃべっても一つのパンくずも飛ばなかった。
“ぐ〜〜”
僕のおかなかも鳴った。
勿論、昨日の晩にも食事は食べたが 実に食べた気のしない食事だったのだ。何日ぶりかの食事に感じる。
whocaさん:「皆さんも、遠慮せずに食べてくださいね」
「はい、いただきます」
おなかの空いているのに勝てず 食べ始めた。
しかし、たった一日でwhocaさんの態度が変わっていた。
王の傍にいることがとても自然に写った。そして、その話し振りからもその事がうかがえた。
皆は、逆にその仕草に安心して ご飯を食べ始めた。

所長:「ところで、whocaさん 何か新しい予言でもありますか?」
whocaさん:「いえ、何も どうしてですか?」
所長:「私たちの将来でも占ってもらおうかと思って?」
何が言いたいかいつもわからない所長の発言である。
arieさん:「whocaさんの所には、昨日は神が来なかったわよ」
whocaさん:「どうしてですか?」
arieさん:「昨日は、あたしのところに来ていたからよ。予言は聞いたわよ」
whocaさん:「神は、なんとおっしゃっていました?」
所長:「そうそう、聞きたいな」
arieさん:「もうすぐ、王国に世継ぎが出来るって・・・」
whocaさん:「本当ですか?」
whocaさんは、王の方を向いて王の手をとった。
ぬりかべさんと所長は笑っている。
「あっ!」
僕も気がついた。
王は、既に気が付いていて、whocaさんの手を押し戻していた。
戸惑うwhocaさん。
arieさん:「まだ判ってないのね、私は神を信じないって言ったじゃない」
whocaさん:「えっ!?」
arieさん:「あてずっぽうよ!」
みんな、声を出して笑っている。
王は照れて顔を背けている。
所長:「仲の良すぎることだけは確かだな」
“ごん”
arieさん:「下品なの!!」
arieさんの拳が所長にとんだ。
西下さん:「所長いますか!!」
外し忘れていた通信機が耳元で大きな音を出した。
所長:「どうした?、西下君?」
チャンネルが変えられたのか 聞こえなくなった。
ほほを押さえながら聞いている所長の顔が険しくなった。
そして、所長はきょろきょろ周りを見回した。
所長:「その件は、また後で」
また、何かあったのか少し嫌な予感がした。
何事も無かったかのように、所長はいつもの笑顔で食事を再開した。