伊藤探偵事務所の憂鬱98

whocaさん:「困ります、こんなの」
KAWAさん:「駄目よ、あたしはベール持つのをやってみたかったんだもん」
「大丈夫ですか? 所長」
所長:「大丈夫じゃないの、whocaさん立てないみたいだから逃げられないし」
「そういう意味じゃなくて、whocaさんの気持ちはどうなるんですか?」
所長:「彼女の言うところの神は、我々を選んだんだ。我々のすることに間違いは無い!」
胸を張って所長は言った。
whocaさん:「下ろしてください!」
whocaさんは、両腕をふって暴れた。
しかし、未だ片手は王が握っていたので 自由には暴れられずそのまま抱きかかえられたままであった。
arieさん:「あきらめなさい、これが貴方の運命よ」

バルコニーに出た王と抱き上げられたwhocaさんの姿を見て、みんなは声を上げた。
kilikoさん:「サービスです」
大きな垂れ幕と、くす玉が落ちた。
パーティに呼ばれた人達には、状況が理解できていなかった。しかし、垂れ幕の文字を見て全てを理解して 歓声が部屋一杯に広がった。
その夜、疲れているはずのみんなは夜遅くまで騒いだ。

その夜は、どこからとも無くやってきた人達により、部屋が用意された。
良く考えたら、トルコの基地から出て、約24時間。良く頑張ったものである。
冷静に考えると何もしてないが、気を緩めると体の節々が悲鳴を上げている。
沢山殴られたり、銃を撃ったり 日本では考えられない事の連続だった。
所長の先の先まで読みきったような行動と信じられないような素行。
arieさんの不思議な能力・・・・と日本でも見てたはずだけど海外に出て強くなった腕っ節。
ぬりかべさんの重厚な動き、敵の前に入っただけで相手の動きを封じてしまうような力。
そして、KAWAさん。
普段、どういう生活をしているのかが垣間見えたが それにしても驚いた不思議道具の数とあの運動能力。
実際、僕を庇って胸に傷を負っているはずなんですがそれを感じさせない動き。
というよりも、同じ人とは思えないスピードと跳躍力。
不謹慎な話であるが、KAWAさんが王宮で敵を倒している時に、踊りを踊っているようで美しいとしか感じなかった。
あと、西下さん
日本にいるはずなのにこちらの動きが手に取るように判っている。
と、kilikoさんって何なんだろう?
今までのkilikoさんは大体、中年というより老年な姿であったが、今のkilikoさんは20代前半ぐらい?
aireさんはすぐにわかったみたいだが、僕には今でも同一人物だとは思えない。
それに、arieさんをお嬢様って呼ぶぐらいだから年上なのかも知れないが・・
何をしてる人かもわからない、けど、的確にarieさんの先を読んで動いている。
二人はどんな関係なんだろう?
何一つ謎が解けないまま、疲れのせいか睡魔に吸い込まれていった。

KAWAさん:「おっはよー おっきて!」
KAWAさんが布団の上で、僕にまたがって暴れている。
KAWAさん:「おっきろー」
「あっ、おはようございます KAWAさん」
KAWAさん:「おきたおきた、早く顔洗って着替えて!」
布団から飛び降りたKAWAさんは、僕の布団を跳ね除けた。
男の生理現象もあるので、慌ててトイレに飛び込んだ。
「何なんですか? 急に」
KAWAさん:「みんな揃わないとご飯食べれないって言うんだから〜」
「判りましたから、すぐ着替えますから出て行ってください」
KAWAさん:「ほんとかどうか覗いてるからね〜!」
「覗かないでください!! すぐでますから」
トイレのドアを細く開けて、隙間から覗いた。
KAWAさんはいない様だったので、表に出てすぐに着替えた。
いつ調べたのか、サイズの合った服が用意されていたので それに着替えた。
泥の中を這い回ってきた服で出るわけにはいかないので丁度よかった。
arieさん:「待て!」
KAWAさんの目の前に人差し指を突き出し、arieさんがKAWAさんに言っている。
「KAWAさんお待たせしました」
KAWAさん:「きゃー!!」
叫び声と共に駆け寄ってきて抱きついてきた。
まるで、餌を待っている犬のようだった。
そういえばarieさんは“待てっ”って・・・・
arieさん:「さあ、行きましょう」
廊下には全員が既に揃っていた。
きっと、王の待つ食卓へ向かった。