僕は何で卵なんだろう?
気が付いたら卵だった。
勿論、その前の事なんか覚えていない。
だから、何で卵なのかも解らない。
世の中に卵以外のものがあるかどうかも解らない。

耳は聞こえる
音がすると体が震える。
嬉しい話も、悲しい話も体が震える。

目は見える。
一面の白い殻には 光と影が映る
楽しいことも、悲しいことも殻に映る。

匂いは感じない。
いい匂いも、悪い匂いも硬い殻に遮られる。

じっと座っているだけ。
時々、暖かくなって
時々、ぐるぐるまわされる。

もう幾日経ったんだろう。
幾日と言うよりも 何回ぐるぐるしたんだろう。
ぐるぐる ぐるぐる ぐるぐる ぐるぐる

あんまりまわされて 目が廻るかと思った
だけど 僕には 目が無かった。

何日かすると、突然僕がいることに気が付いた。
僕の中に僕がいる。
僕は卵だ。
ただ、自分が暖かくなるのを感じた。
外から暖めてもらってるんじゃ無いことは解った。
ぐるぐる ぐるぐる ぐるぐる

なんだろう、体が痒いような変な気分
体が廻る。
誰も動かさないのに体が廻る。
今度は自分で
ぐるぐる ぐるぐる

動けば動くほど、卵がはちきれそうに成る。
僕は卵だけど、僕は僕だった。
誰が見ても、きっと僕は卵だったから僕は卵だった。
うっ、あっ うん
ぐるぐる

あるひ、卵に穴が開いた。
僕が開けた穴だ
ぼくは今まで卵だったが
今は僕は卵じゃない。

風が僕の周りにまとわりつく。
匂いにあふれている。
嬉しい匂い、嬉しい匂い、嬉しい匂い
卵でない僕は、匂いを手に入れた。

でも、それだけだった
卵の僕も、卵で無い僕も

卵から出て世界が一気に広がった
今度は広い場所を

ぐるぐる ぐるぐる