伊藤探偵事務所の混乱 25

万里の長城までの道は舗装されている。と、聞いていた。
実際は、半舗装状態で、振動と騒音は耳元で道路工事をするようだし、何よりも、話をしようもんなら 舌をかんでしまうほどのゆれがあった。
シェンさんの説明によると、このまま3時間走り続けるとの事だし、KAWAさんもerieriさんも眠り続けている。
やはり、少し違う世界の人たちだった。
努力はしたが、とても自分の体を支えることが出来ずに眠るどころではなかったからである。
なるほど、arieさんがこちらに来たがらないはずである。

arieさんは所長たちと合流し、砂漠に向かって進み始めた。
昔ながらの馬に乗って。
所長:「ぼくは体力に自信がないから車で行くよ」
と言ったにも関わらず、無理やり馬に同行させられた。
arieさん:「こんな、がたがた道を車で走って私の髪形を乱したいの?」
と言うのがarieさんの言う理由だったが、馬で走れば十分髪形は乱れていた。
そして、砂漠の海を進みだした。
数時間おきに村があり、水や食料の補給をしながらの行軍になった。
目的地は・・・・・
 
万里の長城は、人工衛星から目視で確認できる唯一の建造物と言うだあって 巨大な城の城壁のような佇まいである。
勿論、現在は使われていない。
過去には、その城壁の上は今の高速道路のように道路になっていて 敵が攻めてきたらその道路を使って 兵士が動いたと言われているが 今では、あちこちで途切れて道路としての役目は果たさなくなっている。
勿論、車が走れるような道路ではない。
KAWAさん:「ねえ、あなた これが万里の長城よ」
「そうだね、大きいね」
KAWAさんはまだ、ごっこを楽しんでいる。
ここは、世界でも有数の観光地 周りにも観光客が沢山いる。
下から見ると首がだるくなるほどの高さであり、上に上ると寒い季節なのに汗が吹き出してきた。
シェンさん:「は〜い、こっちですよ」
たった二人なのに、シェンさんは元気に旗を振りながら案内してくれる。
中国の歴史と、三国志をミックスして色々教えてくれた。
こういっちゃあ悪いが、いいガイドに当たった観光客の気分を十分に味わった。
KAWAさんは、演技なのか新婚の妻を演じている。
勿論、悪い気分ではない。ただ、どこまでが演技なのかが気になる。
段々、KAWAさんの挙動に目を奪われている時間が長くなっている。
KAWAさんにとってみれば、唯の仕事のパートナーかもしれないと思いながらも 密かな期待が高まる。
「この後は、どこに向かうんですか?」
KAWAさんと手を繋ぎながら歩いていると、間が持たない。
シェンさん:「お二人には、モンゴル人のパオで一泊していただきます」
二人っきりで・・・かな?
KAWAさん:「二人っきりになれる?」
腕に抱きつきながらKAWAさんが聞いた。
心の中を見透かされたようで、ドキッとした。
繋いだ手のひらに汗をかいているのがKAWAさんに伝わってないだろうか?
シェンさん:「勿論です、熱々が我がツアーの売りですから」
KAWAさん:「よかったねー あなた」
「は、はい」
今度は、腕からドキドキが伝わらないかが心配になった。
では、お昼ご飯に行きましょう。
万里の長城の傍には(といっても 観光にいった場所の傍にわですが)オープンエアーなレストランがあった。(ただ、屋外に椅子を置いただけって気もするが)
そこで、羊のヨーグルトのサラダから始まるコース料理が振舞われた。
オードブル、サラダ、メインデッシュと続くコース料理にはなっているのだが、その料理全てから羊の油の匂い(マトン)がして快適にという料理では無かった。
しかし、味は悪くなかった。
ありがたいことに、全て食べることが出来なかった僕には、KAWAさんの助けがありがたかった。
シェンさんも同じ料理を食べたが、erieriさんだけは見当たらなかった。
そういえばerieriさんの姿がここについてから見当たらなかった。
「erieriさんはどうしたんですか?」
KAWAさん:「悪巧み中」
シェンさん:「今後のスケジュールのために車を用意しに行っています」
「いよいよですか?」
シェンさん:「そのようです」