伊藤探偵事務所の混乱 46

壊された照明弾の灯かりが全て無くなるときには 結果は出ていた。
シェンさん:「年寄り働かすといけないよ」
どう見ても 30代 頑張っても40代にしか見えないシェンさんの言うこととしてはおかしかった。
KAWAさん:「早くここを離れましょう」
倒れた男達の無線機や一部の装備を取って、その場を離れた。
「まだ敵が来るんですか? あの人達誰なんですか?」
てきぱきと片付ける二人に手早く聞いた。
KAWAさん:「暗くなると お化けが出るの」
シェンさん:「前者は 新しい別の敵が来る。後者はこれからよ」
「新しい敵ですか? それはどんな?」
KAWAさん:「目が白く暗いところでも輝いて、牙が長く 何十匹も来るわよ!」
「匹?!」
シェンさん:「深夜に血の匂いをさせたら、一発ね。火もないから逃げない」
“ウッオー”
結構近くで遠吠えの声が聞こえる。
KAWAさん:「来た!行くわよ」
小さな懐中電灯のようなものを手に持って走り出した。
「あの人達は?」
シェンさん:「いくるべきものは生きる、いくるべきでないものは死ぬ。 それが自然の摂理ね」
「でも!」
KAWAさん:「あの人達を助けることは出来ないよ、せめて、何人かが気がついて運良く逃げられることを祈ってて」
そして車のあったところまで走っていった。
車は、無人だった。
運転手は帰ってこなかった。
彼も隠れていたはずだが、彼にも運が無かったのであろう。
車に乗って、シェンさんが運転して走り出した。
血の匂いで、頭がおかしくなっているのであろう狼達が何匹か車にぶつかった。
車はびくともしなかったが、ぶつかった狼たちの血で、狂気のテンションは上がっていった。
車の速度が上がり、狼達が追いつけなくなった。
そして、その地から離れた。
口の中を切っているからか、口の中に鉄の味がした。
そして、数時間車は進んだ。
来る時も、移動する時も同じ車に捕まっていなければ頭をぶつけるような振動だったが、僕はそのまま熟睡して気がついたら周りは明るくなり帰りついた様だった。
arieさん:「いい度胸してるわね」
眠ってる僕を起こしたarieさんが言った。
「ん?」
目覚めていきなり言われても何のことだか・・
少し赤い目をして話しているシェンさんとKAWAさんが立っていた。
老:「すまんのう、おとりは新鮮なほうが効果があるもんでな」
KAWAさんに対して話している。
老:「もう一人のほうも おっつけ帰ってくるじゃろうて 死ぬことはあるまいて」
シェンさん:「えさは大きいほうが当たりが大きいって事ね」
arieさん:「老、最近たがが緩んでるんじゃない?」
老:「そうじゃな、そんなもんが世に出てくるんじゃからな」
所長:「手の込んだ嫌がらせですね」
老:「どういうことじゃ」
所長:「いえね、誰かまで断定できてて 一緒に行かすって 回りくどいことをさせますね」
老:「それはじゃなぁ」
KAWAさん:「バックが誰だかわからないって事は無いですよね」
KAWAさんたちが、男たちから奪ってきた物を地面にぶちまけた。
周りを警護していた男どもがざわめきだったが 老が何時もと同じように制した。
老:「じゃあ、何故わしがそんな手の込んだことをせねばならん?」
erieriさん:「答え次第によっては、ただじゃ置かないわよ」
倒れこむようにerieriさんが部屋に入ってきた。
arieさん:「今日は結構アクティブな格好ね」
服着替えたが、髪の毛までは着替えられない。
水で洗って解かしつけはしたが、何時もの優雅なウエーブは見る影も無かった。
ストッキングを履き替えても、細かい傷からにじむ血が見えていた。
上着には、見るも無残な皺が寄っていて ブランド物というよりはバーゲンのワゴンの上に積まれた服のようだった。
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
erieriさん:「まともな人間は、一人だけなようね!」
通りがけに、erieriさんは 僕のほっぺたに“ちゅっと”キスをしながら通った。
erieriさん:「乗り換えてみない?」
耳元に小声でささやいた。